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 どことも知れぬ空間の中、いつぞやのように劇場のようなものが浮かび上がる。
 劇場の中はすでに観客でいっぱいになり、ガヤガヤと皆開演の時刻を待ちわびている。 ただ、一部の観客は前回のことで教訓を得たのか、やたら物々しい防具や武器で武装している。
 これにより、もし前回のように語部達が音速を超えて入場しようとしても、入り口に向けてピタリと照準を合わせている精霊石弾頭ミサイルを始めとした各種対空兵装の餌食になるだけだろう。
 ともかく、一部の観客席が異様な緊張に包まれる中、開演の時刻が刻一刻と近付き、全ての兵装を統括指揮を任された魔界軍の黒い翼を持つ女性指揮官は開演10秒前にになるとその手をゆっくりと上げ、入り口に緊張をはらんだ目線を向けた。


 ゴクリ



 異様に静まり返る空間の中、誰かが発したつばを飲み込む音が大きく響く。そして次の瞬間、劇場全体に開演のベルが響き渡った。


 ――10秒

 ――30秒


 ここは劇場なのに、何故かドイツ軍とソ連軍がにらみ合う東部戦線の最前線のような緊張をはらんだ沈黙が続く。
 数多の銃口や砲は劇場の入り口にピッタリと照準を合わせ、攻撃命令を今か今かと待ち構えている。しかし、開演のベルが鳴り響いてよりすでに3分、一向に攻撃目標たる語部の姿が現われる事は無かった。


「ジーク、これはどういうことだ?」


 いつまでたっても現われない語部達に当惑したのか、魔族の女性仕官は傍らに居た副官にそれおを問いただそうとする。しかし、その副官とて語部達が現われない理由を知るはずもなく、ただ当惑するのみであった。


「わかりません、現地の情報ですと目標は既に出発しているとのことですから……ん?」

「どうした?」


 この時、ジークと呼ばれた副官は砲撃陣地のど真ん中で空間が妙に歪んでいる事に気付いた。
 そしてそれと同時に、その歪んだ空間にいた兵達も異常に気づき、あわてて距離を取ろうとするがそれは既に遅く、やがてビシリという空間が割れる音とともにそこから凄まじいエネルギーが劇場に吹き荒れた。


「じょ、上下離脱ー!」

「だめです!」


 指揮をとる女性仕官は荒れ狂うエネルギー乱流に何とか耐え、兵達を逃がそうと指揮するが、傍らに居た副官はひたすら冷静に指揮官を諌め、その頭上を指差す。すると、それと同時に新たな空間のひび割れが彼らの頭上に現われ、そこからも凄まじいエネルギーが吹き荒れだした。
 もはや現場は大混乱となり、兵達は好き勝手に逃げ回り、もはやまともに指揮できる状態ではない。


「姉さん、いえ、隊長。もはや戦闘を続行するのは不可能です,降伏か撤退を選ぶしかありません」

「不名誉な二者択一だな……」


 女性仕官は決断を迫る副官を一瞥すると、ベレー帽を取り、荒れ狂うエネルギー体の発生源を睨みつける。そして唇を噛み、屈辱に耐えるかのように手を握り締めた。


「降伏は性に合わん、逃げるとしよう。総員負傷者を囲んで紡錘陣形を取れ、これより敵中を突破する!」 


 彼女は何とか残された兵達を纏め上げると、即座に指揮系統を整備し、負傷者を回収して陣形を整えていく。この点をして彼女が非凡なる指揮能力を持っている事が伺えるのだが、もはや今の彼女にできる事は一人でも多くの味方を安全圏へと逃がす事しか出来なかった。
 彼女は次々と味方がエネルギー乱流を突破していく中、最後まで前線にとどまり撤退を支援していく。そして半数の味方が脱出するのを確認すると、自らも撤退すべくジリジリと交代しようとしたその時、戦場に最後の変化が訪れた。

 戦場に訪れた変化、それは先ほどまで荒れ狂っていたエネルギー乱流が収まり、周囲は元の静けさを取り戻す。しかし、それは一瞬のことに過ぎず、次の瞬間、ひび割れた空間を中心にエネルギーの大爆発が彼女たちを襲ったのだ。そして、それを最後に今度こそ周囲は元の静けさを取り戻し、あたりには逃げ遅れた兵士達が死屍累々と転がっている。
 そして凄惨な戦場に似つかわしくないあっけらかんとした声が劇場に響き渡った。


<いやー、ずいぶんと遅刻してしまいましたね。皆さんお待たせしました、すぐに始めますからね……って、皆さんなんで寝てるんですか?>

<おおかた待ちくたびれたんやろ。ささ、時間も押してるんやし、前口上は抜きにしてとっとと始めるで>


 劇場に響き渡る声、それはこの劇場に無理矢理転移してきた語部、キーやんとサっちゃんであった。
 彼らは死屍累々と横たわる観客たちを特に気にする事もなく舞台の横の指定位置につくと、あらためて開演を宣言するのだった。


<さて、それでは皆様、大変長らくお待たせしました。まもなく開演でございます>

<語りは今回もワイとキーやんでいくで>

<今回の演目は『MOMO太郎』でございます>

<ほんじゃま、みんなあんじょう楽しんでいって……てなんでMOMO太郎や! そのMOMO太郎はどこぞの団体でマスク被ってプロレスでもやるって言うんかい>

<あ、失礼しました。昨夜読みふけってしまいましたものでつい……では改めて演目は『桃太郎』です>

<まったく、しっかりしいや。ほんじゃま It's show time!>


 二人の口上が終わると、開演のベルが改めて鳴り響き、それが合図であったかのようにボロボロ状態の兵士たちがゆっくりと立ち上がる。そして兵士たちはいつしか残された兵鬼をかき集め、その照準をピッタリと語部に合わせていく。
 ちなみに、その兵士達のど真ん中には北欧神話の雷神が『那由他』と書かれた巨大なハンマーを手にし、全身に力を込めて振り絞っている。
 劇場全体にすさまじい殺気が膨れ上がる中、さきほどの女性仕官が無言のまま立ち上がると、その手をゆっくりと上げ、裂帛の気合とともにその手を振り下ろした。


「ファイヤー!」



 そして舞台は神々の戦い、『神々の黄昏』へと移り変わるのだった。




二人?の異邦人 番外編 「世界迷作劇場3」




 劇場の中の全米を震撼させた神々の戦いが終わり、心身ともに疲れ果てた観客たちが椅子にへたり込んでいると、顔に少々の擦り傷をこさえた語部達が改めて今回の話を進めていく。
 しかし、あまねく神魔の攻撃に対して擦り傷程度で済んでしまう当たり、さすがに腐っても鯛、最高指導者の名を冠するだけの事はあると言えよう。


<むかしむかしある所に、お爺さんとお婆さんが暮らしていました>

<今回の説明はえらく簡単やな>

<桃太郎の時代は室町時代と特定されているようなんですが、場所については岡山や愛知、香川といった風に諸説がそれこそ本家と元祖が争うラーメン屋のごとく争ってますからね、ですから今回は『むかしむかしあるところに』と表現させてもらってます>

<ほなしょうがないわな、んでそのお爺とお婆がどないしたんや?>

<詳しい話ははしょりますが、ある時、お爺さんは日々の糧を得るために山へ芝刈りに、そしてお婆さんは川へと洗濯に向かったのです>

<ほなまずはお爺の場面からいってみよか>



 語部の口上が終わると、舞台の袖から鎌を持った影がフヨフヨと空を飛んで舞台の中央に立つ。そしてそれを見たサっちゃんはしばしの無言の後、ゆっくりと隣のキ−やんを睨みつけた。
 舞台の中央でスポットライトに浮かぶ黒い影、それは今回お爺さん役に大抜擢された死神であった。


<……キーやん>

<なんですか?>

<アレを見て何か言う事ないんか>

<……何もありませんが、なにか問題でも?>

<今のセリフ、もう一度ちゃんとワイの目を見て言うてくれへんか>


 サッっちゃんはキーやんの目の前に顔を出し、じっと睨みつける。すると、キーやんは諦めたかのように声を絞り出した。


<仕方ないじゃないですか! 今まで出てない人でちゃんと導入部をやってくれそうなキャラはもう死神君しか残ってないんですよ!>

<まあ、確かに鎌も標準装備しとるし、顔も老けとるしいいんかな?>

<少々老け過ぎててドクロと化してますけどね。さて死神君、アナタはその先の山へ芝刈りに行ってください>


 死神はキーやんの言葉にサッと敬礼すると、そばに置いてあった籠をヒョイと担ぎ、山へ向かってフヨフヨと飛んでいった。


<籠いっぱいになったら帰ってくるんやでー>


 死神は語部達の言いつけに従って山を登り続け、やがて芝の群生地に到着した。だが、その死神の前に突如ドスンという音と共に巨大な影が立ちふさがる。
 死神の前に立ちふさがった影、それは山ほどもある巨大な2体の化物であった。そしてその化物たちは悠然と腕を組み、死神を見下ろすと二人同時にポージングを決めながら名乗りを上げるのだった。


「我が名はシヴァ!」


「我が名はカーリー!」


「「この先に進みたくば、我ら二人を倒さぬ限り前には進めぬと心得よー!」」



 決まったとばかりにポージングの状態で固まる化物、それはシヴァとカーリーのお面をかぶった角の生えた巨人であった。










 そして10秒後。
 死神は何事もなかったかのようにフンフンと鼻歌を歌いながら手持ちの鎌で芝を刈っていた。その脇ではボロゾウキンのようになった角の生えた巨人、いや、右の鬼門と左の鬼門が呻いている。


「さ、最高指導者様、これではあまりにも我らの立場が!」

「左様、いくらなんでも戦闘描写もないのでは立つ瀬がありませぬ!」


 ボロボロの鬼門たちは立ち上がる事も出来ず、ただその手を語部達にのばしながら哀願するかのように声を絞り出す。しかし、それに対する語部の反応は冷ややかであった。


<せやかてシナリオでもう決まってるからな>

<むしろ出番が合っただけ感謝してもらいたいくらいですが……某虎の人なんかと比べればはるかにましじゃないですか>


「それは確かに……いや、しかしこれではあまりにも無体な! だいたい、いくら我らは脇役とはいえ日本では最強種たる鬼族の扱いがこれでは納得いたしかねまする!」

「そもそも今回我らが呼ばれたのは『桃太郎』の敵役の鬼になるのではなかったのですか!」


<鬼役は別の人がいますしね、ですからあなた方はここでのネタ役です。それにシナリオにもちゃんと書いてありますし、鬼門たちは一瞬で負けると>


「「ひど!!」」


<この空間ではシナリオは絶対やからな、極端な話ワイらがお前らに負けると書かれとったらそれは覆す事のできん絶対のルールになるんや>

<というわけで、貴方達の出番は終わりです、お疲れ様でしたー>



 語部の声と共に舞台の脇から黒子の集団が現れ、あっという間に鬼門達をを舞台の袖へと片付けていく。そしてそれが終わると幕が下り、その幕が再び上がると今度は川の前へと場面が移り変わっていた。



<それでは次はお婆さんのシーンと行きましょう>

<お婆が洗濯物をタライにいれて川へ洗濯に来たとこやな>


「ケッなんで俺がこんなことを……」


 舞台の袖から現われたお婆さん役の役者は、なにやら酷くやさぐれたような感じでポケットに手を入れ、なにやらブツブツよ呟きながら登場してくる。その彼の顔には、無数の傷跡が走り、とてもカタギの人間意は見えない。はっきり言ってミスキャストもはなはだしいキャラ選択といえよう。


<ほう、お婆役は陰念の小僧やないか、GS本編であっという間にフェードアウトしたキャラの割にはえらい大抜擢やないか>

<いえ、彼は代役です。本当のお婆さん役の人は急用で遅刻するとの事でしたので、急遽拾ってきたんですよ>


 サっちゃんが陰念の登場に戸惑っていると、やがて川の上流から大きな桃がドンブラコ、ドンブラコと流れてきた。すると、サっちゃんは先ほどの死神登場のシーン以上に冷たい眼光をキーやんに向ける。
 さらに、舞台の上の陰念は流れてきた桃を見ると、即座に硬直し、だらだらと油汗を流し始めていた。


<キーやん……>

<なんでしょう>

<あれ、キーやんの仕込みか?>

<違いますけど。おかしいなー、こんなことシナリオには無いんですけどねー>


 上流から流れてきた物は硬直する陰念の前に流れ着き、そして陰念がなにも出来ないうちに自主的に上陸すると、なにやら薔薇色のオーラを撒き散らしながらゆっくりと陰念へと迫っていく。



「あらん、陰念じゃないの♪ 久しぶりに会えて嬉しいわー」

「ちょ、まて! 堪九朗、なんでお前がここにー! く、来るな、 来るんじゃない! 誰か助けてくれぇえええ!」


 上流から流れ着いた桃は、問答無用で陰念を捕獲し、彼らは瞬く間に舞台の袖へと消えていく。そして劇場中に沈黙の天使が降りてより30秒後、なにやら陰念の断末魔の声か劇場中に響き渡るのだった。


<えっと……>

<……桃じゃなくてホモが流れて来よったな。つか誰や、堪九朗を呼んだのは?>


 キーやんはサッちゃんの質問を受けると、ツイっと目を逸らした。


<キーやんまさかおのれが……>

<ワタシハナニモシリマセンヨ>

<キーやん、ワイの目を見てもういっぺん言うてくれへんか>


 サっちゃんはなにやら油汗を噴出しながらカタコトで答えるキーやんをぬずいと睨みつける。すると、ようやく観念したのか、消え入りそうな声で答えた。


<……鬼役で駒がいなかったんで彼に頼んだんです。ほら、彼は魔族化したら角があってまんま鬼だったじゃないですか>

<で、この後どないすんねん。導入部が完全に破綻してもうたやないか。それともこのまま行くか? それやと桃から生まれた桃太郎やなくて、ホモから生まれたホモ太郎なんちゅー洒落にもならん事になるんやで! だいたい本来のお婆役は誰やねん>

<長瀬さんに頼んでいたんですがね、一体どうしたんでしょう>


 語部が途方にくれていると瀬流彦が引きずり込まれた袖とは反対の袖から楓がヒョイと顔を出した。


「おや、どうやら間に合ったよでござるな。なにやら代役を頼んだという連絡を受けていたでござるが、その御仁はどちらに?」


<おお、長瀬さんよく来てくれました! 代役の人はその……今現在おそらく薔薇の園へと旅立っているころかと……>

<今頃新たなる自分を見つけているかも知れへんな……ま、それはともかく。続きを頼まれてくれんか?>


「そうでござったか、ではこれでござるな」


 楓はそう言うと脇に落ちていたタライを拾い、川で洗濯を始める。
 するとまたもや川の上流からドンブラコ、ドンブラコと何かが流れてきた。


<キーやん、今度こそ大丈夫やろな>

<大丈夫みたいですね、ちゃんと大きな桃が流れてきてますよ>


「おお、これは美味しそうな桃でござる。もって帰ってお爺さんと食べるでござる」


<どうやら無事に進められそうやな、ほな次いこか>

<そうですね、では長瀬さん。場面変わりますので準備よろしくお願いします>


「あいわかったでござる」


 楓の言葉と共に再び幕が下り、そしてそれが上がると今度は家の中のセットが組まれていた。





<お婆さんが家に戻ると、ちょうど時を同じくして芝刈りを終えたお爺さんが帰ってきました>

<お約束のごとくシヴァも狩っとったけどな、オマケにカーリーまで>

<些細な事です。ではいよいよ桃太郎誕生のシーンです>


 家の中に運び込まれた桃を前にし、死神は鎌を振りかぶった。時は今、まさに桃太郎誕生の瞬間である。


<時にキーやん……>

<なんでしょう?>

<前から不思議に思ってたんやが、桃を真っ二つに切ったら普通中身も一緒に真っ二つにならへんか?>

<まあ確かに絵本とかの描写だと縦に真っ二つに切ってますね、大方左右どちらかに寄ってたということじゃないですか?>

<だとすると、あの死神の構え方だと袈裟懸けに桃を切る事にならんか?>

<なりますね……思いっきり斜めに構えてますし>

<それやと中身は逃げ場無いんとちゃうか?>






<<……>>


 語部達が沈黙する中、死神は桃の死点を見切ったのかおもむろに鎌を振り下ろした。


<<切るの待ったぁあああああ!!>>


 あわてて語部達が止めようとするが時既に遅く、鎌は十分なスピードで桃に食い込んでいく。語部達は次に聞こえてくるであろう断末魔の声と、凄惨な状況に目を閉じ、耳を塞ぐ。しかし、いつまで待っても柔らかい何かを切り裂いた音も、誰かの断末魔の悲鳴も聞こえる事は無かった。
 しばらくして語部達が目を開けると、そこには桃から手が生え、その手がギリギリの所で真剣白羽取りをしている光景が広がっていた。


「これは面妖でござるな、では拙者も手伝うでござるよ」


 楓は細い目を片方だけ見開き、懐からクナイを取り出すと桃に向かって投げつける。そして投げつけられたクナイは桃に突き刺さると同時に「ガチ!」という音と共に止まる。舞台に響き渡ったその音はまるでクナイを歯で受け止めたような音であった。


「ふむ、不思議でござるなー」


 楓が不可思議な現象に首をかしげていると、やがて桃はブルブルと小刻みに震えだし、ポンという音と共に両足が生えた。そして桃はいまだに桃を切ろうと力を込めている死神を楓に向かって放り投げ、その隙に玄関に向かって逃走する。


「む、逃がさんでござる!」


 楓と死神は逃走を図ろうとする桃を追い詰めるために二手に別れ、追いすがる。桃は必死に逃げようとするが、やがて楓に回りこまれ、足止めされてしまう。そして死神は足を止めた桃の背後から気取られぬよう気配を殺して近づき、一気に下から上へと手にした鎌で桃に切りつけ、同時に楓も正面からクナイを振り下ろした。


 ドサッ……ハラリ


 何かが落ちる音と共に、ついに桃の中身が白日の下にさらけ出された。
 手足が生えた謎の桃の正体、それは――



「お、お前ら俺を殺す気かぁぁー!」



 ――涙を目に浮かべて叫ぶ横島だった。


 横島はあまりの恐怖のためか、涙を流し楓に詰め寄るが、楓はそんな横島をどこ吹く風とばかりに飄々としている。そして横島の背後に浮かんでいる死神はというと、後ろ頭にでっかい汗を浮かべていた。

 死神は横島にとある重大な事を伝えるか否かで迷っていた。このまま放っておけば、おそらく数分後にはとんでもない事態を引き起こすであろう事は明白である。だが、今この場で横島にそれを伝える事は横島に大恥をかかせることにもなりかねない。
 死神はしばしの逡巡の後、黙っている事に決めた。ちなみにその理由はというと「面白そう」とういのが99%を占めていたりする。

 ともかく、死神は自らの鎌により服の後ろ半分を切り裂かれ、尻を丸出しにした横島を見ながら、これから起こるであろう惨劇を今か今かと待ち構えているのだった。そしてこれが日本に連綿と語り継がれる永遠のヒーロー、桃太郎誕生の瞬間であったのである。
 

<……死神君、いい感じに染まってますねー>

<まあ、アイツらと係わっとったら自然にこうなるわな>

<さすがに横島さんの尻を観客に見せるのはしのびませんし、次のシーン行きますか>

<せやな、男の尻見て喜ぶやつなんか「あら♪ あのお尻も引き締まっていいわねー」……ここにいたな、しかもなんか妙に血色よくなっとるし>

<これ以上は危険ですから元の世界に帰ってもらいますね、では黒子さん達そこのオカマをとっととかたしてください>

 
 舞台の袖から現れた黒子達はオカマをぐるぐる巻きにして縛りつけ、袖に帰っていく。そして黒子が引っ込むと舞台の幕が下りた。
 しばらく幕の後ろでゴソゴソと音がし、その音がやむと再び幕が上がっていく。そして同時に語部達の口上も始まった。


<桃から生まれた彼は、その出生にちなんで桃太郎と名づけられました>

<桃太郎はお爺とお婆に育てられ、すくすくと成長していったんや>

<そして桃太郎が生まれてより16年たちました>

<んで成長した桃太郎はとても優秀な青年となり……>


「キャぁぁあああああ! 覗きよおおお!」



<近隣の村でも評判の美青年として……>


「またあのアホ面の桃太郎のヤツか! 村の集、今日こそはあの煩悩の塊をとっ捕まえて寺の鐘付棒にしてやるぞー!」



<<誰もが認める英雄にふさわしい扱いを……>>


「「「山狩りだぁあああああ!!」」」





<<……>>

<この話、桃太郎やったよな……>

<確かそのはずなんですけど>

<普通桃太郎っちゅーたら立派に成長してお爺とお婆を助け、さらには弱気を助け強きを挫くヒーローやなかったんか?>

<一応そういうヒーロータイプと三年寝太郎みたいなタイプと両方あるんですけどね。ちなみに寝太郎タイプだと、体格は大きくて力持ちでしたけどあまりにも怠け者なんで村人と両親に放り出される格好で鬼退治に向かいます>

<いろいろバリエーションがあるんやなー>

<最近では桃太郎は鬼退治じゃなくて、鬼を説得して共存する平和主義者だったと書かれている古文書が発見されたそうですよ……ちなみに原文はなぜか現代の紙に書かれてましたが>

<となると、必殺技は平和主義者クラッシュ人畜無害キックなんやろな……>

<だったらまだいいんですけどね……>

<……>


 語部達の沈黙を他所に、舞台ではエキストラ達が集結し、壮絶な戦いの末に桃太郎を拘束するのに成功していた。そしてその夜、村人達の手により蓑虫のごとく縛り上げられ、村の広場に生えた木に逆さまに吊るされた横島に近付く影があった。


「フォッフォッフォ、横島君見事に捕まったのー」

「あ、学園長…じゃなくて長老! 降ろしてくれー」

「ふむ、しかしお主がやった痴漢行為や覗き、その他諸々の証拠がこうも上がってるとワシもかばいきれんでのー。村の者も刀子君とシスターシャークティーを筆頭にして殺気だっておるからの、下手したら明日の朝日が拝めんかもしれんのー」

「いやじゃぁあああ! なんでシナリオに従って動いたのにこんな目に!」


<キーやん、そないなもんシナリオに書いてあったか?>

<いえ、どこにも書いてませんけど>

<シナリオに無いことやってたんか、横っちは>

<まあ、シナリオに書いてある事は絶対ですけど、逆に言えば書いて無い部分についてはかなりの自由度がありますからねー>


 語部達のぼやきを他所に横島と学園長の話は続く。


「学園長! 何でもするから助けてくれー!」

「ふむ、そうじゃな。ワシの言う事を聞けばお主を助けてやらんでもないが」

「マジ!?」

「マジぢゃ、お主は京の都を騒がしている鬼のことは聞いたことあるかの?」

「まあ、噂程度なら……まさか私めにそれを退治しろと?」

「そうぢゃ、そうすれば殿様の覚え目出度くなり、ワシ等の村の年貢も安くなるであろう」

「俺のメリットっちゅーもんが無いように思えるんだが」

「鬼を倒せば英雄じゃ、すなわち女子にモテモテになるのは当然のこと。さらにその名声があれば村の者もお主を受け入れると思うが……どうぢゃ?」

「やります!!!」


 横島はそう言うと、いつの間にやら縄から抜け出し、学園長の手をがっしりと握り締める。


「どうやってあの縄から抜け出したんじゃ……まあよい、これは餞別じゃ、持っていくがよい」


 学園長は、背後に置いていた袋を取り出し横島に手渡す。横島はすぐにその袋を開き、絶句した。


「学園長……俺に死ねと?」


 横島が袋から取り出した物、それはヒノキの棒、布の服、木の盾、キビ団子であった。


「こんな物で鬼退治なんかできるかー!」

「これでもマシなほうじゃぞ、その昔竜王を倒すために旅立った勇者なんぞは王命の癖に何一つ装備なんぞ渡さなかったからの」 

「んな極端なもんと比較するんじゃねぇえええ!」

「というわけで頼んだぞ」

「あ、コラ待て! 何話を締めようとしてやがる、まだ終わってねえぞー!」


 横島の絶叫もむなしく、学園長は話はすんだとばかりに、決して振り返ることなくスタスタと舞台の袖へと消えて行く。舞台にただ一人取り残された横島は、目の前に広げられた貧弱な装備に頭を抱え、自らの末路に涙するのであった。


<……ともかく無事に鬼退治に向かうようですね>

<動機について突っ込みどころ満載なような気がするんやけどな>

<その辺については諦めましょう、所詮横島さんですし>

<せやな、じゃ次いくか>





<桃太郎は村人たちの暖かい声に見送られ、鬼胎児に向かいました>


「この変態! 盗んだ下着返してぇえええ!」

「てめえ俺の箪笥の中からへそくり盗みやがったな!」

「二度と戻ってくるんじゃねえぞー!」


<……暖かい声か?>

<気にしないでください、それに町から出るときは町中の家の中を、それこそベッドの下から箪笥の中まで漁るのは常識じゃありませんか>

<そりゃどこのRPGの話や!>

<まあ実際の話、竜探索やら最後の幻想などでやってることを実際にやるとこうなるでしょうね>


 語部達が少々やばげな話をしているころ、横島は都へ続く街道で運命の出会いに遭遇してた。


「横島、早くキビ団子を寄越しなさいよ、さっきから仲間になってあげるって言ってるじゃない」

「あ、あの……横島さん、不束者ですがよろしくお願いします」

「刹那さん、その挨拶違うわよ絶対に……つかなんで三つ指突いてるのよ」


 運命の出会い、それは桃太郎の話で欠かすことのできない三つのしもべであった。


<ほう、今回のお供役はこの三人かいな>

<ええ、犬はタマモさん、雉はセツナさん。そして猿は当然アスナさんですね>


「ちょっと待ちなさい! 当然って何よ当然ってー!」


<だってお猿といえばアスナさん、アスナさんと言えばお猿。これ常識じゃないですか>
 

「ぐぎぎぎぎぎ」


<おや、なにか文句がありますか?>

<まあまあキーやん中学生相手に大人げないで>


 アスナとキーやんが不毛な睨み合いをしているころ、当の横島は残りの二人に追い詰められていた。


「まて、このキビ団子は桃太郎のマークがついたやつで、どんな相手でもこれを渡せば仲間になってくれるという問答無用の不思議アイテムなんだぞ。だからどうせならしずな先生みたいなお姉さまを仲間に……」


 スパッ!

 ボゥッ!



 横島がセリフを言い終わらないうちに何かが横島の目の前を閃き、横島の前髪が数本ハラハラと落ちていく、そして同時にその髪の毛は横島の目の前で完全に焼け落ちる。


「なにかたわごとが聞こえたような気がしたけど、刹那も何か聞こえた?」

「いえ、ちょっと耳障りな音が聞こえただけですが、きっと空耳でしょう」

「そうよね、空耳よね……でしょ、横島?」

「は、はいもちろんです!」


 横島は顔を青ざめさせ、直立不動で答えた。


「じゃあ私たちにキビ団子をくれるわよね」

「よ、喜んで献上させていただきます! どうか存分にご賞味くださいませ」

「ありがとうございます、横島さん。これからもずっと、精一杯お供させてもらいます」


 横島は二人の放つプレッシャーに屈し、袋からおずおずとキビ団子を取り出すとそれを二人に分け与える。そして二人はキビ団子を受取ると、華の様な笑みを満面に浮かべ、嬉々として横島の両腕を取るのだった。
 横島は二人に腕をつかまれながらも、しばしの間野望が潰えた事を悔やんでいたが、幸せそうな二人を見るとまあいいかと気を取り直し、両手に華とばかりに二人とともに歩き出すのだった。


<……タマモの嬢ちゃんはあいかわらずやが、刹那の嬢ちゃんはずいぶんと積極的になったもんやなー。見てみいあの笑顔>

<まぶしいくらいのいい笑顔ですね、本当にうれしそうです。その前の居合いを見てなかったらの話ですけど……>

<女は変わるっちゅーことか>

<むしろああでもしないと横島さんをつなぎ止めるのは難しいですからね。必要に迫られたってとこでしょう>

<せやな……>

<アスナさん、せめてあなたは変わらないでくださいよ>


「努力するわ……」






<少々ゴタゴタがありましたが、桃太郎は犬、猿、雉を仲間にし。鬼の情報を集めるために都へと向かっていきました>

<その道中ではさらにゴタゴタがあってまさに珍道中って感じやったけどな>

<その辺は大人の都合で省くとして、都に着くと桃太郎一行は殿様に会うことになりました>

<しかし、考えてみれば田舎の後ろ盾もない小僧がなんで殿様に会えるんや?>

<その辺も突っ込まないでください。そんな事言ったら大概のRPGが引っかかりますよ>

<まあそれもそうか、ほな謁見のシーンいこか>


 横島は謁見の間に通され、横島たちの目の前には見事な服を着た殿様がたたずんでいた。


「良くぞきたネ、横島さん達」

「ちゃ、超さんが殿様役ですか……」

「何か不満でもあるカナ、刹那さん」

「いいえ、とんでもない」

「ならいいネ、早速だが横島さん達を見込んで頼みがある」

「なんスか?」

「うむ、実は西の果てにコショウという大変美味なものが……」

「ちょっと私たちは鬼退治に来たのよ、それなのになんなのよそれは!」

「おかしいカ? 普通は冒険者に情報を与える前にこうやってクエストをさせるのが定石と聞いたネ」

「それはどこのRPGよ!」

「落ち着きなさいアスナ、じゃあそのコショウというのを持ってくれば鬼ヶ島の情報を教えてくれるのね」

「そうネ」


 タマモはそれを聞くと、横島の襟首を引っつかみズルズルと引きづりながら謁見の間か出て行った。導入はともかく、このクエストを果たせば鬼ヶ島の情報が手に張るのだ、なればもはや目指すは西の果てのコショウなるものを早く持ってくるだけだ。
 それゆえ、タマモ達はしぶる横島をなだめすかしながら西へ、西へと旅を続けるのだった。


<桃太郎は達は殿様の願いをかなえるため、はるか西の天竺を目指して旅立ちました。そしてそこでは何故かお供が豚と河童と猿にクラスチェンジし……>

<違うから! それ物語違うから! だいいち西遊記はもうやったろが>


「私は河童じゃありませーん! ていうかそのネタもうやめてください!」

「いいけどね……どうせ猿だし」

「ちょっと待って、じゃあ私は豚なの!? この九尾の狐の私が!?」

「俺が三蔵なのか? 自分で言うのもなんだが似合わないなー」


<ゴホン、ともかく三蔵、もとい桃太郎達は西へとむかいます。その道のりは険しく、時に横島さんはひょうたんで溶かされ、火焔山では丸焼きにされ、さらにはとある泉の水を飲んで幼児になりながらも、コショウを得る事に成功しました>

<幼児になった時は、いいんちょが乱入して危うく禁断の三すくみに突入するところやったけどな……>

<ともかく! ようやく都に戻って再び殿様に謁見がかなうわけです>


「よく届けてくれたネ、では北の地にキャビアというとても美味なる……」

「「「「いいかげんにしろー!」」」」


 この瞬間、横島達の心は一つになった。







<……まあいろいろとありましたが、無事桃太郎達は鬼ヶ島の情報を得ることに成功しました>

<結局あの後シベリアに南米、さらに地下まで行くことなって、はてはいつのまにか四つのクリスタルと、かつての伝説の勇者が使ったという剣まで探す羽目になったがな>

<本当に某RPGみたいな展開ですねー>

<今回シナリオと配役手配したのはキーやんやろうが!>

<まあいいじゃないですか、ではいよいよ最後の決戦です>



 おどろおどろしい背景が浮かぶ玉座に、黒いマントを纏い髪で出来た角をつけた少女がワインを手にして傍らの少女に話しかける。彼女の視線の先には、ありとあらゆる豪華な装備を身につけたタマモ達三つのしもべと、呪われてでもいたのか、初期装備のままの横島がいた。


「ククククク、ようやく私にふさわしい役が回ってきたな」

「マスターは以前豚役でしたからね」

「豚言うなー!」


 
<なんや鬼役はエヴァンジェリンかいな>

<ええ、あれでも一応吸血"鬼"ですからね、あ! 始まるみたいですよ>


「まあいい、横島忠夫! この私を倒そうとはいい度胸だ」

「エヴァちゃんに茶々丸かー……戦いたくねー! つーか正面から戦ってこんなの相手に勝てるか! いや、それ以前にこの装備はなんやー!」

<いやー、ある意味村人の呪いが込められてますからねー。そういう意味では立派に呪われた装備でしょう>


 初期装備のままむせび泣く横島に、無情なる神の声が突き刺さる。そして圧倒的なラスボスを前に泣き叫ぶ横島とは別に、絢爛豪華な装備に身を包んだタマモがズイっと横島を押しのけエヴァの前に立ちはだかった。


「エヴァ、ここで引く気はないかしら?」

「どういう意味だ?」

「ここで素直に引いてくれるなら見逃してあげるわよ」


 エヴァはタマモの言葉にしばし呆然とするが、やがて肩を震わせこらえきれないように笑い出した。


「クククク、くはははは! この私に引けだと? 面白い、ますます持って面白い。貴様達の力存分に見せてもらおうじゃあないか」

「交渉決裂ね、残念だわ」

「さあ、かかってくるがいい!」


 タマモはため息を一つつくと、背後にいた刹那とアスナに合図をする。すると二人は持っていた袋から枡を取り出し、その枡に別の袋からザラザラと何かを入れていった。
 やがて四つの枡にいっぱいになると、一人づつに手渡していく。


「おい、それは何だ?」

「ねえ、エヴァと茶々丸は今日本の鬼役よね」

「そうだが、それがどうかしたか?」 

「じゃあ、エヴァはこの話を知ってるかしら、日本古来より鬼は豆をまくことによって祓われるということを」

「おい……まさかその枡の中は」

「そう、察しのとおり豆よ♪ というわけで鬼はー外ー!」

「「鬼はー外ー♪」」


 タマモに引き続き、刹那とアスナもエヴァと茶々丸に向かって豆を投げつけていく。


「ちょっと待て! イタタタ、痛い! ていうか何で真祖たるこの私がこんな豆でやられなきゃならんのだ!」

「それはおそらく私達がシナリオの進行上、鬼として存在を定義されているからだと思われます。現に私はこの豆のせいでこれ以上動けません」

「そんな馬鹿な理由で……イタッ! くううう駄目だ撤退するぞ!」


 エヴァは冷静に答えながらも、一向に動く事のできない茶々丸を引きずりながら舞台の袖へと消えていく。これによって実にあっけなく鬼ヶ島の鬼は退治されたのだった。


「なんか良心が痛むなー」

「まあいいじゃない、これでアンタは都で英雄、そしてあの蔵の中には金銀財宝がどっさり! ああ、これであの借金が返せるわ!」

「いや、それは本編の話だっつーに」


 横島達は歓声を上げて喜ぶ、特にタマモと刹那は両側から横島に抱きつき、横島を困惑させていた。



<これでハッピーエンドっちゅーわけやな>

<そうでもないんですよね、これが……>

<どういうことや?>

<いえ、さっき横島さんとエヴァンジェリンさんが戦っている隙にですね……>


 時間は少し遡る。


「なんや、せっかくネギにくっついて鬼退治に来たのに鬼なんかおらへんやんけ」

「ネギ先生……じゃなくて桃太郎さんこっちに扉があるです」

「ゆえー、勝手に入ったら怒られないかなー」

「まあ、ここに鬼退治に来たわけですから大丈夫と思いますよ、小太郎君開けるの手伝って」

「おう、まかせんかい」


 ネギ達が扉を開けると、そこには目もくらむような金銀財宝が所狭しと並んでいた。

 つまりこういうことである。
 横島と反対側から上陸していたもう一つの桃太郎一行、つまり真なる英雄たる桃太郎がネギ、犬が小太郎、雉がのどか、夕映が猿の一行が鬼ヶ島の財宝室を一発で探し当てていたのである。


<で、財宝室を引き当てたネギ君たちはそれを船に積み込み、都へ出発しているというわけです>

<じゃあひょっとして手柄はネギ坊主達に全部……>

<そういうことになりますね、シナリオには桃太郎が鬼を倒し、財宝を都に持ち帰り英雄となって人々に語り継がれると書かれていますから、これでも間違いではないんですよね>

<そもそもなんでネギ坊主が真・桃太郎なんかになっとんのや>

<最初ネギ君達のメンバーにオファー出してましたからね、その後キャスト変更を伝えるのを忘れてたみたいです>

<……どうすんのや、この後?>
<まあ一応すべてのシナリオは終わりましたから、これで幕ということになりますかね>

「ほほう……じゃあ俺達のやったことはとどのつまり骨折り損のくたびれ儲けってやつか」

<わかりやすく言うとそのとおりですね……って横島さん!>


 横島の声に振り向くと、そこには両手に『神殺』と入った文殊を手にした横島がいた。


「九尾たるこの私が……この私がエヴァと同じブタ役にされたことも全部無駄だったわけね……あのエヴァと同じ……」

「システム上宿屋は同じ部屋なんで正直嬉し……ごほん、また河童の屈辱を受けた事も全部無駄だったんですね……」

<タ、タマモさん! それに刹那さん!>


 さらに背中からかけられた声に振る向くと、今度は炎をメガトンハンマーにまとわせたタマモと、ちょびっと本音を漏らしながらも夕凪に雷をまとった刹那がいた。


「私、空中要塞で危うくタマモちゃんに置いていかれかけたのよね、某6の忍者みたいに。まあちゃんと待っててくれたからよかったけど……そうやってまで手に入れたクリスタルも全部無駄だったわけね」

<アスナさん、いや、これはその……>

 さらにトドメとしてハマノツルギ完全体を装備したアスナが鬼の形相で立ちはだかる。
 今やキーやんは横島達に完全に包囲されていた。 


<ちょっとサっちゃん、横島さん達を説得してください!>

<悪い、それ無理や>

<何笑顔でほざいてますかぁあああ!>


「「「「ダーイ!」」」

<うぎゃあああああああああああああああ!!!>


 幕が下りるとともに、神の悲鳴が劇場にこだましていく。そしてそれが演目終了の合図であるかのように観客席の客達は拍手の渦で神を天へと送っていくのだった。




番外編 「世界迷作劇場3」 end


<さて、これから話すんは後日談や。その後、ネギ達真・桃太郎一向は都へ戻ると一躍英雄として迎えられ、殿様の娘と結婚して幸せに暮らすんや>

<で、横島さんたちは?>

<そりゃあもう、鬼退治成功しても、実質ネギ坊主に漁夫の利を持っていかれたかからな。田舎に帰ることも出来ず、お供の三人と一緒に諸国漫遊の旅に出て幸せに暮らしたんや>

<ほほう……って諸国漫遊ってどこぞの水戸のご老公じゃあるまいし>

<ん、けど配役はピッタリやで。横っちがご老公で、刹那とタマモの嬢ちゃんがスケさんとカクさん>

<あれ? じゃあアスナさんは?>

<そないなもん、うっかりハチベエにきまっとるやないか>

<あ、それはナイスキャストですねー、次回はそれでいきますか。あははは>

<<あーっはっはっはっはっは!>>


 舞台が終わり、最高指導者達は次回のキャストを検討しながら高笑いを続けている。そんな彼らは知らない、彼らの背後に赤い髪のツインテールの魔王が生まれ出でた事を……


 おわっとけ





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