二人?の異邦人IN麻帆良 外伝


「タマモの日記」



3月31日

 今日から日記をつけることにした。
 とりあえず今日は私にとっても、横島にとっても色々と節目の日でもあることだし、記録を残す意味でも大切なことだろう。
 もっとも、三日坊主で終わる予感がしないでもないが、その辺は考えないでおこう。


 さて、そろそろ堅苦しい前置きはこれぐらいにして今日の出来事を書いていこう。

 まず、今日は朝からとてつもない出来事があった。
 どうもあの妖怪学園長の手続きのせいで、なんと私と横島が兄妹ということになったらしい。

 アイツと私が兄妹?

 正直今まで想像したことも無いような状況だ。
 しかも、それにあわせて私の名前も今日から横島タマモになる。

 『横島タマモ』この字面だけを見たら間違いなくシロは怒りそうだ。
 いや、ひょっとしたらおキヌちゃんも怒るかもしれない、下手したら晩御飯がタマネギづくしなる可能性もある。
 そういった意味では、ここが絶対に知られることの無い異世界ということに感謝するべきなのだろうか?


 その後、私は麻帆良学園女子中等部に通うことになり、ネギ先生という子供を紹介された。
 ネギ先生というのは私の担任になるということだけど、子供が先生?
 私も転生してからこのかた、横島達と色々な非常識を体験してきたけど、さすがに10歳の子供が先生をしているというのは初めての経験だった。
 そういえば、ネギ先生と別れる時、妙に脅えていたようなきがするけどどうしたんだろう?


 これだけ書けば日記として十分な気もするけど、まだ一日は終わっていない。本当に濃い一日だ。
 ともかく、その後私達は高畑と言う森で会った男に家に案内された。

 その家はもう使われなくなって久しい洋館らしいけど、その家は美神の事務所より大きい、正直二人で住むには大きすぎる。
 そして私は愚かにも、この段階でようやく横島と二人っきりでこの家に住むと言う事実に気付いた。

 その後、横島が笑顔で「俺はロリコンじゃないから大丈夫だぞ」っと言って来たからなんとなくムカついて燃やした。
 

 横島が復活した後、私達は晩御飯のカップうどんを食べた。その時急に横島は「今日からとりあえず家族になるわけだけどよろしくな」って言ってた。
 考えてみたらアイツと兄妹になるということは家族になると言うことだ。
 そして私には今まで仲間はいたけど家族はいない。
 シロやおキヌちゃんは仲間だ、美神も一緒に住んでるけどどちらかと言えば家主だし家族と言うにはちょっとアレだろう。
 
 横島と私が兄妹、そして家族。少なくとも退屈しないことは間違いない。

 だから……悪くない。



4月1日

 掃除と買い物で疲れた、あの役立たずはとりあえず明日の朝燃やす。
 というわけでおやすみなさい。


 
4月2日

 今日で三日目、これで明日も書けば三日坊主と言われずにすむ。
 まあ、それはともかく日記を書いていこう。

 昨日と今日の二日間でようやく掃除と買い物が終わった。
 買い物のお金は学園長から当座の資金として前借したものだけど、それもだいぶ少なくなったし、今後の生活を考えると学園長に借りを作りすぎるのもなんか気に入らない。
 やはり学園長とは別系統の収入が必要かもしれない。
 
 そういえば今日は横島と二人で夕食の買い物に出たお店でお揚げ論争をしていたら、お店の人やおばさんたちが妙に生暖かい目で私達を見ていた。
 あれはなんだったんだろう。

 それにその後ご近所への挨拶した時は、とある家で問答無用で警察を呼ばれてあやうく横島が少女誘拐の犯人として連れて行かれるところだった。
 横島が怪しいのは同意だけど、そこまで変かな?

 ちなみに晩御飯は私が作った。
 おキヌちゃんの手伝いをしていたのがこんな所で役に立つとは予想外だったけど、「うまいうまい」と言って食べる横島を見てると不思議と嬉しい……なんか悪くないわね、こういうのも。
 けどお揚げは私のだからあげないわよ。


4月3日

 今日の昼は特に何も無かった、横島はいない、どうせナンパに出かけているのだろう。

 ただ、横島はまだ帰ってきていない。もうすぐ明日になるのに。
 まさか成功したとは思えないし、それに警察にも横島を捕まえていないみたいだ。
 横島のことだから命の心配はしていないが、どうせろくでもないことに巻き込まれているのだろう。


 そういえば、今日はこの世界に来てから初めて一日を一人で過ごした気がする。
 なんだろう、この感じ。
 家にいてもつまらない、けど外に出ても何もすることが無い。横島がいればこんなことは考えなくてすむのにな。

 それにシロやおキヌちゃん、美神は今頃何をしているんだろう。
 私達のこと心配しているのかな?

 あー、もうやめやめ! なんか書いてて暗くなるからやめ!
 とりあえず、明日美神の事務所がある場所に行ってみよう。ひょっとしたら何か元の世界に返る手がかりがあるかもしれない。
 うん、決めた! 明日は事務所に行く、ついでに馴染みの豆腐屋でお揚げを買って帰ろう。













 もう0時を回った、横島はまだ帰ってこない。バカ……

 


4月4日

 朝起きたら横島はいなかった、どうも私が寝た後に帰ってきたらしいけど、今朝早くでかけたらしい。正直起こしてくれてもバチは当たらないと思うんだけどどうだろうか?

 
 今日は昨日思いついたとおり美神の事務所に行ってみた。

 結論から書くと事務所のあった場所には何もなかった。
 美神がいないだろうというのは予想していたけど、その場所には美神だけじゃなくて私が生活していた事務所もなにも無かった。やっぱりここは異世界なんだな。

 あの後町を歩いていたら、いつも声をかけてくれる豆腐屋のおじさんも私を見て何も言わない、八百屋さんもだ。
 結局私はかなりショックを受けてたんだろう、気がついたらシロと横島とでよく行った公園のベンチの前に立ってた。しかもなんか幻覚つき。

 九尾の狐の私が幻覚? 本当に悪い冗談だ……ううん、どうせ誰も見ない日記なんだ、飾ったってしょうがない。

 私は寂しかったのかな? こういうのもホームシックって言うのかな? 九尾の狐のこの私が寂しいなんてシロが知ったら大笑いするわね。

 けど、今は寂しくない。
 私の隣の部屋には横島が寝ている。

 ええ、自覚したわよ、私はアイツのことが好きだって。
 それも結構前からアイツを見ていたって。


 あの後、横島はいつまでたっても帰ってこない私を文珠を使って探しに来たの。

 正直嬉しかった、しかもその後不覚にも私はアイツに抱きついてしまった。
 それにアイツに抱きついたら懐かしい匂いがしたの、シロやおキヌちゃん、それに美神とすごしてた匂いがする。
 そして横島の匂い……なんかその匂いをかぐと安心する。

 私は一人じゃない、昨日感じた寂しさも結局一人だったからだろうけどさ、横島がいるだけで安心する。もう寂しくない。
 もしこの世界に私一人で来てたらどうなってたんだろう? 想像したくないわね。 

 ともかく、アイツといるのは楽しいし、一緒にいたい。だってそうでなきゃわざわざシロと一緒に散歩しようなんて思わないしね。
 今まで横島にやたらなついてるシロ見て馬鹿犬って言ってたけど、私も人の事言えないわね。もし帰ることができたら謝ろうかな。

 
 横島タマモ……か。
 アイツとの繋がり、兄妹、家族。そしていつか……なんか考えたら面白そう。
 私の気持ちをアイツが知ったらどんな顔をするかしらね?

 まあ、私がこうして自覚した以上、もう逃げられないんだけどね。ともかく焦りは禁物、ゆっくり確実に追い込めなきゃ。

 横島、狐の狩りは狙った獲物は逃がさないのよ。





 
 
 あ、書き忘れてた。
 以前住んでた町からの帰り、なんでも新宿とかいう街で受取るものがあるらしいんだけど詳しくは知らない。
 ともかく、その街で怪しいお店に入ろうとする横島に突っ込みを入れていたら、なんかショートカットの女の人と意気投合した。

 その時「次は貴女の番ね」って言いながら私に100tって書いてあるハンマーをくれたけど、妙にしっくり来る。重さも感じないし。
 これって本当に100tあるんだろうか?
 ともかく、使い勝手よさそうだから明日から横島の突っ込み用で使ってみよう、それともこっちのこんぺいとうシリーズにしようかしら?



4月5日

 明日からいよいよ学校へ通うことになる。
 周りはみんな人間だし、せいぜい私が妖怪だとばれないように気をつけよう。

 そういえば、今日になってようやく制服がとどいた。
 当然一番最初に見せるのは横島だ。

 「意外と似合うなー」と言われた時は正直恥かしかったけど、後になって考えたら『意外』ってどういうことよ。

 ともかく、明日から始業式。
 今までと違う毎日に正直ワクワクしている。




 私は横島タマモ、麻帆良学園3−Aの生徒、横島の妹で家族、そして未来の恋人候補で未来の妻!

 うん、こっちの世界も悪くない。









 昨日に続いて書き忘れ。
 昨日おとといと横島がいなかったのは開業するための手続きや偽造書類を用意するためらしい。
 昨日の新宿で受取ったのもその類の偽造書類だ。

 あの学園長のツテらしいけど、本気で侮れないわね。

 ともかく、私と同じで明日から横島は『横島よろず調査事務所』の所長という新しい肩書きが加わる。
 正直ネーミングセンスはアレだけど、明日からも面白い毎日が送れそうだ。





  Top
小説のメニューへ戻る