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学年末にある最後のテスト、それはちょっとしたトラブルは有ったけど学年一になって終わった。

地底にあった図書室で休憩中に見つけた本、それは【《忌歪》に関する考察】という題名。

なぜか気になり開いたその中には、忌歪と呼ばれる小さな、小さな組織に関する事が書かれていた。

今まで考えた事は無かったけど、イツリは一体どこから来たんだろう。

そしてイツリのギア・システム、イツリはギア・シフト・システムって呼んでいた。

そのシステムはどんな意味を持っているのか、ギア・シフト・システムの本来の力はどんなものなのか。

この時の僕は、イツリもギア・シフト・システムも知らなかったということを思い知る。

それは同時に、イツリと忌歪に関したことをほんの僅かに理解することでもある。

どちらにしろそれはもう少し先、暫らくという単語がつく未来の話。

――――――鈍色の閃光が、刃銀という風が、近しい未来に舞う。













Doppelt 〜The Another ネギま!〜          神鳴神薙


それぞれの心中、そして定まる運命
















テストが終わって数日、明日の終業式において新学期からネギが正式に教師として3−Aの担任になると発表される。

その発表に関しては生徒の一部がとるリアクションが楽しみでしかたがない、とはいえほんとに極一部なのだが。

そんな事を考えながら布団から這い出、身支度を整えて部屋を出る。

ここ最近は月の綺麗な晩が続いているのでほぼ毎日散歩をしている、その度にお嬢が突撃してくるが。

追いかけてくる桜咲も一緒なので巻き添えにして月見を敢行、一度龍宮が乱入してきたこともある。

始まり方は前述したお嬢の突撃、終わり方は全くの別口。

そろそろ戻るかと思うと必ずキティが乱入してくるのだ、お供の絡繰を連れて。

そして俺は乱入時の攻撃を避けて逃走、後ろで必ずキティは叫んで終わる。

とはいえ、図書館から帰ってからはじめて行った散歩でお嬢に噛み付かれたのは痛かった。

しかもなにを間違ったか桜咲がお嬢に協力するように動いたので、そのまま時間ギリギリまで逃げ回る羽目になった。

次の機会で嘘八百を並べて真実を一加えた説明をして煙に巻いたらキティが乱入してきた。

おかげでその次の機会まで月見が延期されてしまった、キティは俺に恨みでも有るのか?

更にいえばここ最近桜咲の行動が僅かだがギクシャクしている、何か悩みでもあるのだろうか。

まぁ、俺に限って言えば悩み関係は殆ど相談に乗ってやれる経験がないので無駄だろう。

無難に今までどうりに月見の相手をしていればいいか、相談に関してはお嬢に任せよう。

この相談を機会に近衛と近づけるという手もあるな、その内ネギと企むとしよう。

今日の月齢は20.3、だいぶ月光が弱っているから回りの星が多く見えるか。

東北独特の味覚、ずんだを使った団子を用意。すのこにポット、茶葉に急須に湯呑みっと、これで準備よし。

準備した物を持って窓を蹴る、目指すのはこの間見つけた小高い丘の上。

ところが木の上を駆ける俺に気付き反応した妖魔が複数、確認すると烏族のようだ。

だって羽はやしてるし空飛んでるし、手に剣もってくちばし付いてるし。

真正面から来る烏族数人?(数匹?)とすれ違うように動く、風すらも動かしてはいけない。

懐に手を入れて小さな鍵を握る、必要なのは祝詞たる一節と起点たる言葉。

「アレフ、ベート、ヘー。我が姿は風、古きも新きも見ること叶わず、『違える姿見』」

それは俺自身の姿を認識させない不可視の鏡、存在する物を存在しないと強制的に相手に理解させる術で『違える姿見』(ニトクリス)という。

魔法とは違う魔術であり、いまの世界では過去のものとなってしまったものなのだが・・・・・正直に言うと補助以外の術は現在使うことができない。

「最初に手に入れたときから思っていたが、囮や偵察として使いやすい・・・・『忌避睦』は使わないに越した事はないし」

今後を考えるとやはりこれをメインに使った方がいいのだろう、ぶっちゃけると理解している使い方は全体の二割ぐらいだが。

この鍵、名称は『Offnen:Schiussel』(エフネン:シュリュッセル)といい、俺は縮めて『O:S』(エシュ)と呼んでいる。

前者は『開ける』、後者は『鍵』という意味を持つらしいが詳しい事は知らない。

ネギがちょっとした経緯で手に入れたものだが、『忌避睦』と同じく嘗て俺が使っていた武器なのだ。

魔法使いの間では何の鍵なのかまったく分からず、誰が造ったのかもわからないために放置されていた。

それが倉庫の大掃除で出てきたらしく、かなり格安で売りに出されてしまっていたのである。

ネギを通して見つけた俺がそれを欲しがり、ネギが買ってくれたのだ。

魔法使いにとっての杖、魔法行使のための触媒とでも言うべき用途、俺にとってのそれがこの鍵だ。

本来の使い方はまったく違うのだが、それは此処で話すものではないので追々ということにしよう。

少々とはいえ喜色を滲ませながら予定していた丘に辿り着き、背後からの突撃が後頭部を打つ。

「・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・?!?・・・・・・・・・・・!!」

言葉にならない状態でゴロゴロと草の上を転がりまわり、頂上の木へ激突して止まった。

暫らく激突した状態で震え、収まってきた頃合を見計らって立ち上がりながら衝撃がきた方向をみる。

「お嬢、突撃かますのは止めろといった筈だ。ついでに止めろ刹那、俺の頭がへこむ」

「やー」

「捕まえられませんでしたので・・・・」

桜咲を振り切ってまで俺に突撃してきたらしい、もう少し慎みを持て小狐。

後頭部をさすりながら何時の間にか放り出していた荷物を回収、中身をセッティングする。

とりあえず突撃の罰としてお嬢の団子は抜きだ、桜咲が苦労していると辺りをつけてお嬢の分を上乗せする。

それを何時の間に乗ったのか俺の頭の上から眺める狐姿のお嬢、一応とはいえ俺は主なのだから労われ。








※・※・※・※









私の隣には少年が一人、小さな狐を頭に乗せてお団子を食べている。

名前はエルプズュンデ、仲間内ではエルという形に縮めて呼んでおり、かくいう私もエルさんと呼んでいる。

偽名であると本人が公言していたけれど、それ以外に呼び名がないと言うのが現状だ。

この人と初めて出会ったのは妖魔との戦闘中、殺されかけた私が彼に、エルさんに助けられた。

男性に抱き上げられたのは初めてで、一緒に戦っていた仲間も居たために恥ずかしかったのを覚えている。

その後名前を聞いて戦うというよりも逃げ出すといったほうがいい状態になったとき、また抱き上げられた。

そのあとはエヴァンジェリンさんが来てエルさんがエヴァンジェリンさんをからかって、エヴァンジェリンさんが魔法を使った。

その標的になったはずのエルさんは私を抱えたままでするりするりと魔法を避けて、丁度魔物のど真ん中へ。

其処にエヴァンジェリンさんの規模の大きな魔法が発動、魔物ごと攻撃されたにもかかわらず何時の間にか仲間の隣に居た。

その時気付いたのは、エルさんの頭の上に乗っている小さな狐。

思わず睨むようにしてそのことを注意すると人型に変化して背中におぶさってしまう。

何故かは分からないのだが、それを見ていると自分が不機嫌になるのがわかってしまった。

その時の言葉にも棘があったらしく、その時の状況を含めて後から龍宮と長瀬にからかわれた覚えがある。

その後小さな狐を妖怪だと知って尚使い魔にしたエルさんは、そのままなし崩し的に私に名前を決め私に預けてしまった。

九幻という名前を貰った彼女は狐に戻って私によじ登り、エルさんが居なくなってからも私たちは色々と話し合った。

彼女は私の仕事においてとても闘いやすいパートナーになったのだが、エルさんの匂いを見つけると一目散に駆け出してしまう。

そして何よりも、エルさんの隣にいると自然と自分の心が落ち着いていくのがわかってしまい、はじめは戸惑ってしまった。

それも回数が増えると気にならなくなったのだが、別れる時が寂しく感じてしまうのは何故だろう。

そんな私の心に気付いていないだろうエルさんは、何時も笑顔でお茶とお茶請けを渡してくれる。

それ故に私はこの心のことを考えるのを後回しにしてしまうのだが、お茶もお茶請けも美味しいので仕方がないと思っている。

今日も仕事の合間にゆっくりとしてしまった、今度は私がお茶請けを持ってこようと思う。

私の心、私の気持ち、この思いに気付くのはこの時から暫らくしてからとなった。








※・※・※・※









アスナさんのかけた目覚まし時計の音で目が覚めた、今日は学園の終業式当日だ。

結構話をする人たちが増えたんだけど、やっぱりまだまだ話していない人が多いと分かる。

最近気になっているのは長谷川千雨さん、ふと見るとイライラしているから不思議に思ってた。

期末テストの暫らく前、ネットを少し探しているとある大きなサイトに偶然アクセスしてしまった。

そのサイトの画像を見て首を捻ったのは記憶に新しい、どこかで見たようなといった感じだ。

暫らくして思い至ったのは気になっていた千雨さん、写真を見比べるとメガネと髪形ぐらいしか違わない気がした。

更に気になった僕はそのままそのサイトを見て回る、たくさんの写真が其処に表示されていく。

よく見ると着ている服の多さが目についた、自分で作っているのか市販品なのか、どっちにしてもお金がかかってると思う。

でもそれらの服がとても似合っていて、こういった積極性を普段でも出せれば友達とかが増えると思うんだけど。

『前々から思っていたんだが、こいつの着てる服って俺の知り合いと同じように手作りか?』

(手作りって、自分で作ってるってことだよね。こんなの作れるんだ)

『こういったゴシックドレスとか、所謂ゴスロリ服とかの凝った意匠のやつは専門店か手作りなんだそうだ。知り合いの一人が日常的に着ていて、尚且つ無駄なまでに似合う奴で、作ってる知り合いの手伝いをやらされて覚えがある。他の服も手作りする奴だったから、一から作りる技術を教え込まれた覚えもあるな』

(イツリ、一体どんな知り合いなの?)

『本気で知りたいのか、ネギ』

イツリが本当に疲れたような顔で溜息を吐きながら、ちょっと目を漂わせながら聞き返してくる。

雰囲気だけで分かる、聞きたくないという本能を押さえ込んで、イツリに返事を返す。

(も、勿論! 教えて!!)

暫らく、目を閉じてじっと何かを考えるようにしていたイツリが溜息を一つ吐いた。

『一人はこういった服を作ることや家事一般を趣味としてる、格闘技術全般を多種多様に使える文字通りの“最強”。それこそサウザンド・マスターですら霞む圧倒的な実力の持ち主なんだが、普段は面白い人という面が強い。他に常日頃からゴスロリ系の服を着て歩く奴と、暗殺関係の実力が高い黒尽くめが二人、理不尽な一般人が一人。それから(もういいよ!)・・・・そうか? 他にもまだまだいるんだが・・・・・』

どうやらイツリの知り合いは人間として何かがおかしいみたいだ、聞かないほうが良かったかもしれない。

(ところでイツリ、さっきこういった服を作れるって言ってたよね?)

『言ったな、それがどうかしたのか?』

千雨さんはいつも僕を見るとイライラしている、なにが気に入らないのか分からないけどもう少し仲良くなりたい。

(千雨さんとちゃんと話がしたいんだけど、こういった服を持っていけば話ぐらいは聞いてくれると思うんだ)

喜んでもらえると思うし、気に入ってもらえればもっといいと思うし。

『ネギ、お前が何を考えているのか分からないがまず一つ、サイズも知らないのに作れると思うな』

「あっ」

「ん? ネギ君、どないしたんや?」

「な、なんでもないですコノカさん」

イツリの言葉に思わず声が漏れてしまった、台所にいたコノカさんにまで聞こえてしまったらしい。

言いよどんだ言葉だったけど、コノカさんはあっさりと納得してしまった。

(イツリ、サイズがわかれば作ってくれるんだよね?)

『そうだな、材料も買ってこないといけないが、作れるぞ』

よし。イツリの言質は取ったから千雨さんのサイズを測ったら作ってもらおう、きっと大丈夫だ。

サイズに関しては勉強しているときに見つけた魔法があるから大丈夫だし、材料も買えるだろうし。

そうして数日後、イツリが言うとおりの材料を昼間に僕が買い集めて、夜にイツリが作り始めた。

どれぐらいかかるのかと思ったら三日で作り上げてしまったので驚く、これはこれで簡単なやつらしい。

そしてその服を紙袋に丁寧に入れて終了式の日に持ってきたが、渡すタイミングが掴めなくて挫折しそうなのは秘密だ。

結局ホームルームで鳴滝さんたちがいい始めたパーティーに、気分が悪いと早退していく千雨さん。

僕はそんな千雨さんの部屋を訪問することに決め、そこで話をすることにした。








※・※・※・※









ここ最近ネギが長谷川のことを気にしている、どうやら仲良くなりたいらしい。

俺からしてみればそれはかなり難しいといわざるを得ないだろう、だってネギ自身があいつのイライラの中心だし。

もっとも、長谷川のイライラの原因はネギだけではないのが当然といえば当然だ。

長谷川はネットアイドルという活動を行いながらも普通に暮らしている一般人、そう、ごく普通の一般人だ。

あいつは現実というものをしっかりと見据えて普段の日常を過ごしている、だからこそイラついているのだろう。

あいつにとって十歳に満たない子供は小学校に通い、親に甘えながら遊びまわるというのが念頭にある。

そして教師とは子供ではなく大人が、社会に出て行く過程におけるある種の情報を与える職業なのだろう。

そしてさらにいうのならば、この状況をあっさりと受け入れている周りという現状がイライラに拍車をかけているといっていい。

つまるところ長谷川は現在最も人として常識を備え、一般人として最も現実を見据えている少し大人びた少女である。

正直に言おう、俺は長谷川を魔法という超常現象のある世界に関わらせたくはないのだ。

これだけ現状に関して疑問を持ち、ネット上における書き込みなどを見る限りかなり頭の回るだろう少女を、

俺は魔法という異端の世界に関わらせていき、普通という社会から失いたくないのだ。

俺にとって長谷川はネギよりもずっと現実を見ており、2−Aにおいてトップクラスに入る現実を見る人間である。

話がずれた、閑話休題。

つまり、一般的な常識が支配する社会において見事なまでにはみ出しているネギと、受け入れているクラス。

この二つを自分の持つ一般常識に括っているがために要らない感情が生まれ、イライラが募っていく。

長谷川にとって現在の現状は受け容れ難いものであり、一般的に見れば異常なのだと考えているはずだ。

それが普通、それが現実を見る一般人の考え、それが本来必要な一般人の思考なのだと思う。

それを踏まえて考えると不思議なのは、なぜ長谷川がこの2−Aというごちゃ混ぜの空間に居るのか、ここだ。

いくら電子関係の知識や技術を持っているとしても、ほかと比べれば一般人に一番近いはずだ。

そのあたりを考えると切がないが、いったいどういった理由から彼女はこのクラスに居るのだろう。

そんなことをネギに知られないように考えているのは、麻帆良学園終了式の最中である。

ネギに頼まれて作った服はいま、職員室のネギの机の下に紙袋ごと置かれている、さすがに持ち歩かないようだ。

そして不思議頭の眠くなる演説が終了したとき、一つ咳をしながら重要な連絡があると伝えた。

「この度、教育実習生だったネギ・スプリングフィールド先生が正式な教師として採用されることが決定した」

この言葉に浮かれる生徒たち、対照的なのは幾人も居たが一際目に付いたのはやはり長谷川だった。

ほとんど呆然として不思議頭とネギへと交互に視線を向けている、茫然自失に近い心情だろうに。

そして考えるのは先ほどまで考えていたことの延長、長谷川の魔法への関与について。

俺としては関わらせたくない、おそらく長谷川も関わりたくないというのだろう。

現実、彼女にとっての現実には魔法は存在しない、もしあっても手品のようなものであればいい。

決して自分に関わらない、壁を隔てた向こう側の世界であるべき。

今まで見てきたものを含めて考えた場合、おそらくではあるがこういった形を持っているはずだ。

だとすると、ネギが長谷川への用事で二人っきりの状態になったら、どうにかしてネギを眠らせないといけない。

そんな風に考えているうちにホームルームが始まっており、成績表を渡されて一喜一憂している生徒たち。

長谷川はネギと関わりたくないようで、ほとんどひったくるようにして成績表を持っていってしまった。

ネギが落ち込んでいるようだが気にしない、あれも彼女なりの意思表示なのだろう。

おそらく、自分に対して不要に干渉してこないでくれ、とでもいった内容ではなかろうか。

しかしネギはまったく別の意思表示としてとったようだ、さすが箱入り息子に最も近い天才。

ネギが受け取ったのは単純で、まだ話したことがあまりないから恥ずかしい、という内容。

どこをどう見ればそう取れるのか、不機嫌なのは偶々だと思っているようでおめでたい。

(イツリ、今日の放課後は千雨さんの部屋に行ってお話して、パーティーに出てもらうから!)

そういったことをこちらに教えてきたのは、長谷川が気分が悪いと早退していった後だった。

社会経験の不足がこういった場所で足を引っ張る、もう少し考えて勉強させたほうがよかったのではないだろうか。

あとでメルディアナ魔法学校の校長を呪ってやろうと思ったのを誰が責められようか、むしろ責めるな。

とりあえず機会ができたことを素直に喜んでおくとしよう、もっとも――呪うのは当然だがね








そして女子寮、長谷川の部屋へと入っていくネギがここに居た。

何度かノックしても返答がなく、鍵も開いているという理由でそのまま中に入っていくネギ。

ネカネ、どうやらネギの教育はかなり変な方向に間違ってしまったようだ。

いくら鍵が開いているからといって、女性の部屋に無断で入っていくような子供に育ってしまったっ!!

そして長谷川の後ろからパソコンを覗き込み話しかけるネギ、長谷川が驚いて飛び退いていく。

どうやら見られたくなかったらしい、ネギが褒めても素直に受け取ることはなかった。

とりあえずネギの意識を刈り取るとしよう、長谷川と話しているうちに起きていられても困るし。

精神世界でネギをイメージ、その水月に一撃いれて顎先に一撃、脳を揺らして意識を刈り取る。

精神世界でのそれはネギの精神から肉体へとダメージをフィードパック、脳震盪の症状をそのまま再現する。

いきなり崩れ落ちるネギに呆然と立ち尽くす長谷川、倒れる前にネギと俺の意識を換える。

目の前には迫り来るフローリングの床、間一髪で顔面激突は免れた。

「ね、ネギ先生・・・・?」

「ああ、ネギは大丈夫だ。俺がお前と話したくて無理に意識を落としたから、あとで活入れとく」

口調とトーンが変化し、瞳と髪の色が変化した『俺』を凝視する長谷川。

「まずは初めまして、ネギ・スプリングフィールドの裏人格・・・とでも言うべきか、イツリという」

自己紹介してもなお立ち尽くしている長谷川、常識をぶち壊すには十分だったかもしれない。

「俺が出てきてお前と話すのになぜネギを落としたのか、その辺はちゃんと話すから自己紹介してくれ」

苦笑しながら言ったその言葉にしばらく迷った結果、簡素な自己紹介を長谷川がした。

「長谷川千雨だ、知っているんじゃないのかお前」

「知っているのは確かだが、やっぱ初対面なら自己紹介は必要だろう?」

さらに苦笑を深くしながら長谷川の質問に答える、俺にとっての常識の問題だ。

「さて、色々あるんだがまずはこのネギの土産からとしますか。呼び方は長谷川でいいか?」

「かまわない。で、土産って何だよ」

かなり砕けた物言い、ネギに対する言葉とはまったく違うが俺としてはこの口調のほうが好ましい。

「服、お前がネット上で着ているのを参考にして俺がデッサンした、オリジナルの衣装だ。ただし、ゴシックドレスとでも言えばいいのか、シンプルなデザインのやつだから後で見てみるといい」

そういって紙袋を長谷川に差し出すと、少々怪訝な顔をしながらも受け取ってくれた。

「要らなかったら売る、それでもいいな?」

「OK、ネギが長谷川と仲良くなりたいから作ってくれといってきたものなんだが、あまり気にするなよ?」

俺の言葉に顔をしかめる長谷川、やはりネギのその行動は余計なものだったらしい。

そして話し出すのは魔法のこと、すでに神楽坂にばれているわけで、これに関しては俺の考えがたぶんに入っている。

大まかにはネギが魔法使いであるということ、魔法使いの国が存在することを最初に話す。

最初は頭がおかしいんじゃないかと思われていたようだが、証拠としてネカネの手紙を見せたら信じたようだ。

そしてネギの性格とその立場、さらになぜ魔法が隠蔽されているのかという俺なりの考えを話す。

これに関してはかなり食いついてきて俺の持つ考えの指摘点と共感点を教えてくれた、結構嬉しい。

最後に長谷川に対しての魔法関係の注意点とこれから、この最後の部分のためにネギの意識を落としたのだ。

結果、やはり長谷川は魔法に関わりたくないとはっきりと言い放った。

「あたしは魔法に関わりたくない。そんなものに関わっていけば確実に命を懸けなきゃいけないんだろう?あたしは現実で、一般人の世界で生きていくので精一杯なんだ。巻き込まれたくなんてない!」

その言葉はかなり悲痛な響きを持っていた、おそらく過去に何かあったのだろう。

不思議頭はその過去を知っていて、その過去は魔法に関係しているだからあのクラスに居るのかもしれない。

そして実際に話して理解したことが一つ。

長谷川はその思考速度と理解速度、目をつける場所が突出しているということだ。

これはある意味魔法関係者にとって咽から手が出るほどほしいものであり、目の敵にするほど危険なものだ。

この学園に居れば大丈夫だといえるが、それでも万が一というものは存在すると俺が知っている。

俺という存在が、知り合いを含めた■■がすでにありえないはずなのにありえるという矛盾なのだから。

保険をかけておくべきなのかもしれなくて、長谷川をなるべく関わらせたくなくて、俺は一つの鈴を取り出した。

「長谷川、万が一、本当にないとは言い切れないからこその保険としてこの鈴を渡しておく。魔法関係者に襲われたり、本気で命がやばいと思ったのなら鳴らせ。俺が責任を持ってお前を助ける」

長谷川の目を見て、少々気恥ずかしいがまっすぐに言い切った。

そして、意外にも長谷川はあっさりとその鈴を受け取ってくれたのには俺が驚いた。

なんでも、「あんたの目は説得力がありすぎる、あんまりその目で見つめるな」とのことだ。

そっぽを向きながら、耳元を多少赤くしながらいわれた言葉はどう受け取ればいいのだろうか。

結局その後ネギに関してはなるべく関わらないことにするということで結論は出た。

このあとのパーティに関しては今来ているウサギのコスを着替えてから参加するらしい、しぶしぶなのには苦笑する。

そして、俺はある約束をほとんど強制的にさせられてしまったのだ。

俺が表に出る夜、偶にでいいから『ちぅのHP』のチャットに参加しろ、それがパーティの参加条件だと。

偶にでいいのならと約束したらネギを起こせという、確かに起こしたほうがよさそうだ。

そしてそのまま俺は引っ込んでいき、ネギを表に出して二人はパーティ会場へと走り出す。

長谷川は傍目からわかるほどの上機嫌で、ネギは自分が気絶した理由がわからなくて首を傾げながら。

その日から週に三度ほど、『ちぅのHP』のチャットに「蒼紅」というHNが確認されることになる。

これが長谷川の道を決定してしまったということを、長谷川から聞くことになるまでまったく気づくことはなかった。








※・※・※・※









あたしの目の前で見せられた魔法という現象、それは正直関わりたくないと思ったものだった。

それを教えてよこし、さらにあたしの言葉を聞いて「それが当然だ」といった本人は誰よりも綺麗な目をしていた。

そしてあたしにとって何よりも大きな楔を打ち込んだのは、その綺麗な目をした人。

ネギ・スプリングフィールドの裏人格だといった、サファイアとルビーの目をした人の言葉。

「長谷川、万が一、本当にないとは言い切れないからこその保険としてこの鈴を渡しておく。魔法関係者に襲われたり、本気で命がやばいと思ったのなら鳴らせ。俺が責任を持ってお前を助ける」

殺し文句だと思った、こんな言葉を馬鹿正直に吐くやつが居るとは思わなかった。

でも、そのサファイアとルビーの目が今まで見てきた中で、誰よりもまっすぐに私を見つめていた。

だからかもしれない、素直にその純白の鈴を受け取ったのは。

そして私にとっての転機は、このときだったということに気づくのはもう少し後のこと。

週に決まった曜日だけ、たった三度だけ私の『ちぅのHP』に現れる「蒼紅」というHN。

このHNが、ちぅの一番のお気に入りとして周りに知られるのはすぐのこと。

イツリという名前を持ったそいつがあたしの中の深い場所に居座ったことに気づくのは、これから暫く先の話だ。

当面の目的は学年一位になったことを祝うこのパーティで行われている、あたしへの追及をかわすこと。

どうやら知らず知らずのうちに機嫌がよくなっていたらしく、パーティに行った瞬間から早乙女の追及がすごい。

なんでも「ラブ臭がビンビンよ!! きりきり吐きなさい!!」だとか。

ラブ臭って何だよラブ臭って、というか何がビンビンなんだよ!!





『白き鈴は色を忘れた音を出す 願わくば使われないことを祈ろうか』












あとがき

どうも、少々遅くなりましたが本編です

十度ほど書いた内容が消えて千雨とのプロセスが変化しました、許してください

書いている途中で変換作業を行いフリーズ、その後に閉じるが出てきてそのまま終了

結局最初に書いた内容とかなり食い違う結果になりました、ゴメンナサイ

今回はちょっとシリアス風味、変な考察は私の真骨頂です

考察し始めると変なところにどっぷりと嵌ってしまうため、気をつけるようにいわれました

なんにせよ今回は「ちぅ」こと千雨のお話、気に入っていただければ嬉しいのですが・・・・・

次回から新学期へ突入、つまるところ闇の福音編ということです

なぜか伏線ができてしまったこの話、実を言うと原作との食い違いの一つです

とはいえ、今回出てきた道具に関して下で補足しておきます


彼方へ進むあなたのそばに 私が居たいと願うのは駄目ですか
ただその傍らに居たいと願う その想いとともに歩みましょう

次回はどちらになるのか、まだまだ未定ですと一つ


よくわかるのかわからないのか役に立たない解説―(教育委員会風)
・終焉の鍵『Offnen:Schiussel』(エフネン:シュリュッセル)

過去編で出てくる(はず)イツリの武器であり、この世界での杖と同じ役割を持つもの。
ネギは普段着けることをせずしまっており、イツリが身に着ける。
本来は別の姿で武器としての体裁を持つのだが、イツリがネックレスの状態に変えている。
武器としての姿が出てくるのはもう少し先の予定、過去編で先に登場するかもしれない・・・・
武器としての姿は結構解り易かったりするかもしれない、そんな武器。
通称というか略称は『O:S』(エシュ)という。

・????『忌避睦』(きひむつ)

イツリが本来振るう武器、これに関しては過去編で先に出ることだろう。
この世界ではネギが拾ったもの、イツリは一度もこれを使って見せていない。
過去編でもあまり使わない、なぜあるのかすら今は謎の武器。
これに関しては追々、たぶん過去編で説明するだろうことが予想される。
これと『O:S』に関しては質問されても答えません、ここ重要―。


・純白の鈴『呼び出しの鈴』(ゴスペル)

イツリを呼ぶことを目的として作られた鈴、一定条件下でないと鳴らない。
鳴った瞬間にイツリに音が届き、鈴のある場所まで空間を越える穴が開く。
次元が違っても、世界が違っても、どんな障害があってもそれを超越して音が届く。
製作者は過去編で御馴染みとなる碇シンジ、「あると便利でしょ?」が製作理由。




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