私はこれを書くにあたって、まずは彼らに感謝したい。

私たちが目的を履き違え、行っては為らないことをしてしまいそうだったのだから。

故に、私は彼らに何よりも大きな感謝の気持ちを持っている。

そして『忌歪』と知り合えたことは、私にとって何よりの宝とすべきことの一つであろう。

ここから先、私自身が覚えていることと、同僚たちに尋ねて回り集めた事実を書いている。

この書の中身が読むものにとってどんな意味を持つのか、それは私には分からない。

唯一ついえるのは、これが私の知るNERVの実態と使徒の殲滅状況であることだけだろう。

願わくば、これが何らかの意味を持つ書物として扱われて欲しい。

――――――― 日向マコト著 『NERVと使徒戦争』冒頭部より抜粋   













Doppelt 〜The Another ネギま!〜          神鳴神薙

《近く》て《遠い》場所、抱くは覚悟













ネギがエヴァンジェリンさんに襲われた次の日の朝、バイトから帰った私はいつも居るはずのネギがいないことに気づいた。

「このか、ネギはどうしたのよ?」

「なんや、まだ起きてへんよ? どしたんやろか?」

ため息を吐きつつネギの元へ、まったく世話が焼けるんだから。

「ほらネギ、起きなさい!」

寝ているネギの布団を引っぺがした私の目に、小刻みに振るえているネギが映った。

「ちょっ、ネギ!? いったいどうしたのよ!」

その言葉でようやく私を見つけたようだけど、目の下のくまがすごい。一睡もしてないように見える。

「あ、アスナさん・・・ですか。すみません、無理やりにでも学校に連れて行ってください、ちょっと体を動かし辛くて・・・」

笑おうとしているのだろうけど、いつもよりもずっと弱く見える笑顔だった。

こいつは何を考えている、何でこんなに弱く見える? いつものこいつはどこに・・・いる?

「あんた、大丈夫なの?」

「・・・・・なんとか、ですが」

やっぱり弱い笑顔だ、こいつはなぜこうなったのだろう・・・

「アスナー、ネギ君起きたんかー?」

このかの声だ、とりあえずこいつの言うとおりに無理にでも連れて行こう。

「ほら、行くわよ。まったく・・・・」

「すみません」

「謝らなくていいわよ、一応ルームメイトなんだから」

ネギの謝ったときの顔、弱くて、なんっていったっけ・・・・そう、儚い感じの笑顔だった。

間近で直視したその笑顔にほんのちょっとだけどドキッとした、こいつはこんな顔もするんだ・・・・

こうして私はネギを食卓に連れて行き、学校への登校も背負ってやることにしたのだ。

このあと、昇降口でエヴァンジェリンさんと出会い、ネギがなぜこんなに震えているのか、なぜ無理やりでもといったのか、それを知ることになる。

これが私の、「アスナ・■■■■■■■・■■■■■■・■■■■■■■」が神楽坂明日菜として、ネギの隣で魔法に関わる始まりになった。








※・※・※・※









アスナさんに迷惑をかけて無理やりに連れて来てもらった学校、昇降口ではエヴァンジェリンさんと会って昨日の夜がフラッシュバックしちゃった。

そんなことを考えていると視線を感じる、なにかあったんだろうか?

『ネギ、和泉が指定された部分を読み終わっている』

イツリが教えてくれたそれで、ようやく自分がやるべきことを理解した。

「和泉さん、ありがとうございました」

「あ、はい・・・」

そのまま授業を進めていき、チャイムとともに切り上げ職員室へ戻る、予定より進まなかった。








(イツリ、やっぱりエヴァンジェリンさんと戦うとしたら、パートナーが必要だよね?)

『必要だな。が、パートナーといっても相手がいない』

(そうなんだよね・・・・・学園長先生に相談したら絶対にコノカさんを薦められると思うんだ)

『確実だな。もしかすると3−Aの生徒から選べといわれるかもしれん、あの原始天尊の親類め』

3−Aの生徒から選ぶ、それは僕がやってはいけない線引きの一つ。

(それってさ、一般人を魔法の世界に引き込めってことだよね?)

『俺からしてみればその解釈であっているだろうな』

(駄目だよ。みんな"普通"の世界を生きているんだ、僕らにはない"普通"の世界を。それを壊すつもりなのかな、学園長先生は)

『さぁ? 他人の考えなんて結局は分からんものだ。が、あれの考えは他よりも分かりにくい』

イツリと話ながら放課後の校舎を歩く、目の前にはアスナさんとコノカさんが並んで歩いている。

二人とも楽しそうに笑って話していて、眩しいと感じるのは僕にとって慣れたもの。

僕の得られない"普通"を生きる人たちのごく一般的な"普通"が、僕にとって何よりも眩しい憧れの一つ。

こんなに楽しそうな人たちを、魔法という殺伐とした技術のある世界に引き込めと?

魔法を使い、気を使い、武器を使う。あの死の蔓延した最低の世界へ連れて行けと?

学園長先生にパートナーが欲しいといえばいつものバル○ン星人のような笑いをしながら笑顔で言うのだろう、「うちの木乃香なぞどうかね?」と。

学園長先生は知っていて、理解していて、その上で進めているんだと思うけど。

("僕"は"サウザンドマスターの息子"なんだから、普通の魔法使いよりもずっと危険なことになると分かっているはずなんだけどなぁ)

『たとえあのぬらりひょんもどきであっても、"サウザンドマスターの息子"というフィルターはかかるものだ』

お父さんを知っている人はみんな僕に"サウザンドマスターの息子"というレッテルを貼る。

特に、お父さんを直接知っている人は普通の人よりも厚いフィルターをかけている、タカミチですらそうなんだから。

僕を僕として、ネギ・スプリングフィールド個人として見てくれる人は、実を言うとほとんどいない。

数少ない例外はイツリやアスナさん、コノカさんといったお父さんを知らない、本当に近い人だけ。

アスナさんは最初に喧嘩したし、魔法も見られた。けど、僕を10歳の子供と理解してくれている。

コノカさんは最初から僕自身を見てくれているような、そんな感じがするだけだから確実とは言わないかもしれない。

最近はコノカさんに発音を直して欲しいといわれた、なんでも名前のイントネーションがどこか違って聞こえるらしい。

暫く練習すれば大丈夫かもしれないけど、今はエヴァンジェリンさんの件を優先させてもらいます。

そんなことを考えていると、突然視界が真っ暗になって身動きが取れなくなった。

(えっ?)

声を出す暇もなく誰かに担がれた感じがして運ばれていく、どこへ?

思考が纏まり始め、ようやく考え始めたときになって服が脱がされていく。

「ちょ、な、えぇぇぇぇぇぇぇぇーーー!!!」

ようやく視界が戻ったと思ったら大浴場の上に浮遊していて、腰にタオルを一枚巻いただけの姿だった。

(ちょっ、恥ずかしいぃぃぃぃっ!)

イツリはすでにお腹を抱えて痙攣しているイメージしか送ってよこさない、どうやらどこかがツボに嵌ったみたいだ。

一瞬だけ浮遊感を味わったあとにドボン、という音と一緒にお湯の中へ。どうやら誰かに投げ込まれたみたいだ。

「ぶはっ」

起き上がると同時に息を吸う、そうして目を開けるとすぐにそれが目に入ってきた。

それは横断幕のようなもので、ネギ先生を元気づける会と書かれている。

「「ネギせんせー」」

声がしたほうを振り向くと、水着を着た3−Aのみんながいた。一応僕が男であることは覚えていてくれたらしい。

どうやら僕はクラスの皆に心配をかけていたようだ、それもかなり分かりやすいぐらいに。

とはいえパートナー問題はまだ解消されてないんだけど、それでも皆の気持ちは無駄にできない。

そのまま楽しんでいたその最中、なぜか水着が脱がされていく生徒が出てきた。

あわてて出口側のほうへ、誰もいないほうへと顔を向けるとアスナさんとコノカさんが入ってきた。

そこに白い何かが向かい、アスナさんが持っていたプラスチックの桶に撃墜される。

それでもアスナさんのシャツのボタンが全部壊されてしまっていた、いったい何なんだろう。

「で、あんたたちはネギをここに連れてきていったい何をやってるのかしら?」

その額にシャープ記号のようなものを出しながら、アスナさんが皆に問いかける。

「「「あ、あはははははは・・・・・」」」

「笑ってごまかすなー!!」

引きつった笑いしかできないみなさんに、アスナさんが盛大に怒り出してしまった。

結局そのまま解散になってしまい、あの白いのが何なのか分からないままに終わってしまった。

(イツリ、あの白いのなんだったか見えた?)

『俺が表に出てるなら分かっただろうが、お前の目を通してだとわからん』

(そっか)

流石にイツリでも僕の目を通してでは分からないらしい、僕には白い何かにしか見えなかったから当然かな?

「まったく、あいつらは・・・」

「まぁまぁアスナ、みんなもネギ君が心配やってんから」

アスナさんは本気で怒っているわけじゃないんだと思う、たぶんだけど。

部屋に入ってロフトへ、僕のスペースに上ると・・・なぜか女性の下着が折り重なって置かれていた。

予想外すぎるそれに僕が固まっていると、アスナさんが上ってきた。

「ネギー、あたしの下着知らな・・・・い・・」

どうやらアスナさんも驚いたみたいだ、階段から上半身を出した状態で固まっている。

「アスナさん、これ、なんでしょう?」

「・・・・・・あんたが犯人、ってわけじゃなさそうね」

すると下着がもぞもぞと動き出して、白い何かがひょっこりとその頭を出した。

「兄貴、ネギの兄貴! オレっちですよオレっち、アルベール・カモミールです!」

「・・・・・・・・・カモ君!」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エロいたち』

カモ君に抱きつこうとしたとき、かなりの沈黙と一緒にイツリがぼそりとつぶやいた。

それが聞こえるのは僕だけで、聞こえたそのままに硬直、カモ君がそのまま地面に落下しちゃった。

「ひどいですぜ兄貴、いきなり止まるなんて」

「あ、あははは、あははははははは・・・・」

いま見ることができるイツリのイメージは、目を細めたうえでなによりも冷たいと感じるほどの視線をカモ君に向けるそれ。

『何しに来たんだ、この脳みその足りない小動物は。・・・・・非常食にでもなりに来たのか?』

イツリはカモ君が好きではないらしい、そんなに嫌わなくてもと思うんだけどなー。

「ところでカモ君、君は何でここに?」

僕も気になっていたから聞いてみることにした、僕としてはカモ君がいると変なことになりそうな予感がひしひししてる。

「オレっちは兄貴の使い魔になりに来たんです、ちゃんとパートナー候補も見つけてあるんですぜ?」

にやりと笑って僕に告げるカモ君、だったらその下着はなんなのかな?(#)

するとどこからか生徒名簿を取り出して開くカモ君、そして一人の生徒を指しながらあっさりといった。

「この人、この人がすげー能力持ってるってオレっちのレーダーがびんびんですぜ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・カモ君」(##)

「・・・・・・・・・本屋ちゃん?」

「あ、兄貴・・・・・?」

カモ君が指差したのは本が好きで、前髪で目を隠しているおとなしい女の子。

カモ君が音を立てて後退る、もちろんそっちは壁しかないからすぐに進退窮まった。

「一度だけ聞くよ。本当にこの子をパートナーにしろって言うのかな?」

なるべく笑顔で質問する、本当に笑っているかは僕自身には分からないけど。

「も、もももももももももも勿論ですぜ!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・そう」

どうやら僕の思い違いじゃなかったみたいだ。

「選べ、アルベール・カモミール」

「ひっ」

「今すぐここで鍋の具材になるか、お姉ちゃんの所に強制送還されるか、二つに一つだよ?」

やさしく微笑みながら、僕はカモ君へ選択を迫る。

「ちょっ、兄貴?! なんでなんすか!」

「僕は君の質問を許した覚えはないんだ、ペナルティーだよ」

懐からメモ帳を取り出し、Gの覧をめくる。

「いみじくもありたる書物 綴られた枷は星の力 ここに御身の枷を求めるものあり 付(ふ)せ与(くみ)せよ【星の戒め(ジオラス)】」

「ふおっ?!」

対象への重力を自由に決めることができる、イツリが図書館島から発掘してきた魔法の一つ。

ただし、僕は重力に大きな適性がないからこうしてメモを見ながら、そして普通より多くの魔力を込めないと使えない。

後ろではアスナさんが冷や汗をかきながら目を逸らしている、それは気にするほどのことじゃないからいっか。

「あ、あに・・・き・・・・なんで・・・・っすか・・・?」

「特別に答えてあげるよ、カモ君」

カモ君の傍にしゃがみこみ、しっかりと聞こえる声で叩き込む。ペットのしつけは最初が肝心だから、ね。

「僕は自分の生徒を、一般人を、魔法の世界に引き込むつもりはないんだ。なのに君は無理やり引き込もうとしている。分かる? 僕は自分の"失敗"であるなら引き込むか、記憶を消すかのどちらかを必ず行おう。引き込んだのなら、その責任もね。でもね、関わらなくていい人を無理やり引き込むなんて真似は正直、下衆の行いだと思ってるんだ。だから君には選択肢を出したんだよ? はっきり言うよアルベール・カモミール、僕の使い魔に一般人を無理矢理引き込むような塵芥のようなモノはいらない。いいね?」

なるべく冷たく、突き放すように心がけた視線をカモ君に向けながら話す。

小刻みに震えていたその体が最後の一言で大きく一度、ビクリと震えた。

「返事は?」

「へ、へい。承知・・・しやした」

「この約束を破ったら、お姉ちゃんの所に郵送するから、そのつもりでいてね?」

「へ、へい!」








※・※・※・※









エロいたち、俺がそう呼んでいるオコジョ妖精(こいつの存在自体が妖精の冒涜だが)であるアルベール・カモミールがネギを訪ねてきた。

ネギの使い魔になりたいといったが、その後がいただけない。

ネギには一般人と魔法使いの世界観の違いを教えてある、だからこそ一般人を巻き込むのを嫌っているのだから。

結果、名簿をみただけで3−A生徒をパートナーとして選べというエロいたちの言葉は、ネギの逆鱗に触れた。

ここ最近になってネギの奥の部分に、俺に近い形の冷徹な部分が作られてきた。

その冷徹な部分が思いっきり顔を出すことになったのだから、エロいたちにはいい薬だと思いたい。

さて、ここでちょっとだけ説明しよう。麻帆良にすむ魔法使いと、俺がネギに教えた魔法使いの価値観の違いを。

まず麻帆良にすむ魔法使い、その大半における価値観。

魔法がバレなければいい、バレてもこちらに引き込めば大丈夫、基本的に見られなければどうにでもなる。

こんなところだろうか、例外たるものを幾人か除いては。

この価値観の筆頭が学園長こと近衛近右衛門(ぬらりひょんもどき、ともいう)だろう。

これにおける例外としてはやはりキティ、エヴァンジェリン・アタナシア・キティ・マクダウェルその人を挙げる。

キティの価値観は"悪"としての形がメインであり、中世から持ち続けている矜持という信念でもあるのだろう。

魔法がバレようとも気にしない、バレたら基本は抹殺、何よりも敵に容赦するなといったところか。

さて、この麻帆良の価値観はいろんな意味を持つ。

対外からは温いとか言われるだろうが、人の精神に関与するのはいいものではないといったことからなのだろう。

更に言えば、この麻帆良に通う生徒の10分の1は魔法関係者の家族でもあるのだ。

そして残りの大半も魔力をそれなりに持っていたり、気や何らかの特徴的な力を持っていることが多い。

それ故に魔法がバレたとしてもあっさりと受け入れられ、秘密を守ることが可能になるのだから。

そういった事情があるからこそ、ある種の温い規則と価値観が麻帆良にはある。

対して俺の価値観、本来持つべき魔法使いの価値観とは何か。

単純で、明快で、あからさまだ。それこそ、simple is bestとでも叫びたくなるようなほど、簡単だ。

すなわち、"死ぬか生きるか(Dead or Alive)"だからこそ《普遍》と《普通》を大事にせよ、だ。

魔法とは人を生かす技術であり、ほんの少し違えただけで人を殺す技術の一つである。

故に注意しなければいけない、その力の扱い方を。

ほんの少し間違っただけで、手元が狂っただけで、人が死ぬ。

だからこそ人を生かすことができ、だからこそ細心の注意が必要なのである、と。

魔法は力である。力は人を狂わせる。狂った果てに行き着くのは何か、殺しに愉悦する獣である。

麻帆良は優しい、しかしその実質は他人に迷惑をかけなければ生きていけない土地であるといえよう。

その筆頭はもちろんあのぬらりひょんもどきだ、別名学園長。

何しろ、人手不足であるという理由で中学生すらも警備員として雇い、使っているのだから。

正直に言おう、俺はぬらりひょんもどきが嫌いだ。

自分の思うとおりに動かしたいというのは分からなくもないが、自分の要求を受け入れなければならない状況を作り出す。

打算なしで動くことは一切ない、弱者を利用する。

何よりも、孫娘が危険な目に遭うと分かっていながら動かないのと、孫娘を道具のように考えているのだろうところが気に入らない。

孫娘、近衛木乃香は世界的に見ても巨大な魔力を宿している、アルから聞いた話ではネギの父親すら越えるらしい。

なのにその傍に置いているのは後手に回らざるを得ない護衛が一人だけ、これでは浚ってくださいといっているようなものだろうに。

麻帆良に住むものは命に対して疎いとしか言いようがない、ここでもキティは例外だが。

奪われたなら取り返せばいい、そう思っているのなら殴り飛ばしてやるべきなのではなかろうか。

その考え方は無機物のような《物》に対する考え方とどれほど違うというのだろうか、人は物言わぬ物体ではないというのに。

自分の失敗を相手に着せて、自分の手札とする。それが近衛近右衛門の行っていることだろう。

己の失敗は己で贖う、それが本来の形であるはずなのに。

命とは安いもの、どこぞにいけば金を出せば買えるものなのだから。

命とは安からず、例えどれほど金をつぎ込んだとしても、父と母がいなければ本来の命は生まれ得ない。

そしてこの"奪われたのなら取り返せばいい"という考えの問題点、何よりも重要な問題点が一つ。

取り返すまでに奪われた人がなにをされるか理解していない、という一点である。

浚われたのならば五体が無事であればいい、もしかすれば手が、足が、目が、耳が、使えなくなっているかもしれないのだから。

もし五体満足であったとしても、その精神的な部分にどれほどの傷を与えられるのだろうか。

貞操を守る誘拐犯とは得てして理性的に狂っているものであり、人を殺すことを歯牙にもかけないものである。

それを知らないからこそ、麻帆良の魔法使いというものは生温いのだろう。

先月の期末テストの騒動はその一例だ、どこに魔法を知らない一般人を石人形(ゴーレム)で追い掛け回すやつがいる。

それも魔法使いを束ねるべき長である人物が率先して行ったなどと、魔法を軽く見ていることがありありと理解できてしまう。

封印すべきものすら封印しておらず、一般人が魔法を手にする状況で止めるべき立場のものが逆に煽る始末。

そして何よりも、嘗て魔法が到達することのできなかった場所に到達した者が残したそれを、理解しようとすらせずに放置する姿勢。

メルキセデクの書も元々は神の知識を書き記した書物の一つであり、中位に属する魔導書(グリモワール)の一冊なのだから。

というわけで、この世界というか麻帆良における価値観は俺の知る魔法使いの価値観とは違っている。

嘗て出会った彼女たちの魔法は、その命のやり取りにおいて殺すことを嫌ったために《非殺傷設定》というプログラムが作られたのだから。

この世界ではそういったものはない、つまるところ命を奪うことをそれほど重要と見ていないと俺は感じた。

武装解除の魔法は基本らしいが、あれはそれなりに魔力が高ければ対抗(レジスト)できるのであまり意味はない。

だからこそ思う、この世界の魔法使いは本当の意味で危険を知らないのではないだろうか、と。

過去に大戦が在ったというのは知識として知っているが、その大戦ですら死者の数は三桁後半、四桁に届いていないのだ。

こういったことから俺が得た結論は、この世界において殺し合うというのは本当の意味で頂まで上り詰めた極少数でしか行わないということ。

事実、調べた内の一対一における死亡率は一桁前半であり、集団戦ですら死亡率が二桁に届くか届かないかなのだ。

そして一対一における死亡した人物を調べた結果、そのすべてが極めたとまで言われた人物同士での戦闘の結果であったのだから。

こういったことをネギは自分の目で確認し、その上で俺の考えと価値観を聞いてきた。

そして俺の話や確認した事実を元に自分自身の価値観を作り上げた、それがいまのネギの持つ価値観なのだ。

その価値観は、自分の失敗は自分で処理する、《普通》に暮らす一般人を巻き込まない、この二点。

魔法がバレたのが自分の失点であるのなら自分で処理し、日常を可能な限り守るという方向へネギは価値観を作り上げた。

それが先のエロいたちへの行動に繋がるのだ、正直ここまで明確に表面化するとは思っても見なかったが。

もし表面化するのなら、おそらくもう少し、ニ〜三ヶ月ぐらい先だと思っていた。だからこそ結構驚いている。

(イツリ、カモ君はどうすればいいと思う?)

『うん? 正直に言うと、俺は別段必要としない。が、仮契約(パクテイオー)の魔方陣って覚えてるか?』

(・・・・・・・ごめん、それは覚えてない)

『気に入らんがその為だけにでも残しておくか、代わりになる人材がいればそっちを選びたいが・・・・』

(流石に現段階で仮契約の魔方陣を教わるとなると、エヴァンジェリンさんのことを話さなきゃならないだろうし・・・)

『あの耄碌爺に教わることにしたら、孫娘と見合いしろとでもいいそうだ』

(だね。そうすると、"一応"使い魔ってことでいいのかな?)

一応・・・・暫定的にしておいて今後の態度と功績で決めればいいか?

『なら今後次第、でいいのか? 決めるのはお前だぞ、ネギ』

(そっか、カモ君を使い魔にするかどうかは僕の問題だもんね。アドバイスありがと、イツリ)

とりあえずエロいたちは生きてはいるが、今後次第では本気でネギが見捨てそうだな。

俺としては必要だと思えないのだが、ネギは元々優しい性質だ。見捨てるのは本当に最後といったところか?

「カモ君、君を使い魔にするかどうかなんだけど」

「へ、へい!」

「"一応"使い魔ということでいいね?」

「一応、なんすか?」

「今回のことは知らなかったことでもあるから許してあげる。でも、次はないから気をつけること。そして今後次第でちゃんとした使い魔にするかどうかを決める、いいね?」

そういってエロいたちを見るネギの眼はまったく笑っていなかった、だからこそエロいたちは全身の毛を逆立てて恐怖し、反射的に声もなく頷いた。

エロいたちのそんな姿を見ながら、ネギはロフトを下りてポストに歩み寄り一通の手紙を取り出した。

「さてカモ君、お姉ちゃんの手紙がここにある。しかも重さからしていつもより多く入ってるみたいだね?」

ネギの言葉を受けてエロいたちが全身から汗を流し始めた、それこそ滝のように。

ネギは薄っすらと笑いながらロフトに上がり、中身を取り出す。

魔法を応用したビデオレターの一通目を再生し、ネカネとアーニャのメッセージに顔を綻ばせた。

それを見て安心したらしいエロいたち、しかしネギの本題はここからである。

一通目に重ねるようにして持っていた二通目のビデオレターを上に持っていき、躊躇せずに再生する。

その内容は、エロいたちが女性の下着2000枚を盗み指名手配を受けたという話である。

もちろん表示されている指名手配書の顔写真と名前は、現在この場にいて真っ白に燃え尽きて灰になりかけているエロいたちに他ならない。

そのビデオレターを見終わったネギが、石灰のようなエロいたちに宣告する。

「正式に使い魔にするには僕が渡すポイントを100集めること、それが条件になるかな? まず最初のポイント、ウェールズからここまで見つからずにこれたことに10pプラス。

でもね、お姉ちゃんの手紙の内容で500pマイナス、指名手配に顔写真が使われていて更に300pマイナス、そして本名で指名手配されていることに関して600pマイナスだね」

最初は天国、その後に地獄の三連呼。スタートがプラマイゼロだったのに、現在は−1390pという馬鹿げた状態。

「カモ君、君は正式に僕の使い魔に成れるのかな?」

「くっ。漢(おとこ)アルベール・カモミール、必ず正式な使い魔になって見せますぜ!」

「言い忘れてたけど、−20000pになったら暫定すら消えてお姉ちゃんのところに強制郵送決定だから」

さらりと告げられたネギの言葉に、エロいたちが石像の様に固まった。

「あ、今回のアスナさんの下着を持ってきたのもカモ君だね?」

「・・・・・・・・・・・・へい」

にこやかにエロいたちを問い詰めるネギと、エロいたちの持つ下着を見てその眼を吊り上げる神楽坂、そして誤魔化せないことに気づいて返事するエロいたち。

「マイナス50p」

エロいたちへの追い討ちが完成した、ネギがこの先どうなるか楽しみで仕方ない。







『始まりを知った少女 片鱗を覗かせた少年 風が吹くのは何処から』










次へいってみよう






あとがき(久しぶりすぎる思いものせて)

どうも、実に久しぶりな綴り手、神鳴神薙です、こん○○は

本編第八話、内容的にはほとんど進んでません、書き出したら横道にそれて一話分、完全に予定外なお話です

そしてこの中に出てくる価値観に関しては私独自のものですので、一般論として捕らえないでください

ついでにこれは自論の一種ですので、決して持論として認識しないでください、結構コロコロ変わります

アスナの伏字は、隠す意味があるのかないの不明ですが、一応です

そして今回ネギが使った魔法ですが、どっかに似たのがあっても気のせいです

一応ですが勘と即興で作ったオリジナルですので、他とは関係ありません

最近はPSUやらパンヤやらをしています、卒論は終了しました、提出するレポが後一科目残ってます

ふふふふふふ、就活もしてますがこの先どうなることやら・・・・

遅ればせながら、一周年おめでとうございます!

しかし一周年に間に合わずすみません、遅くてもよろしいなら一周年記念として三次創作でも作ってみようかな?かな?

ご要望あれば書いて見ましょう、Doppelt×異邦人という短編三次(実はアイディアだけはあったりして)

今回は横道にそれてネギと麻帆良の価値観ということになりましたが、さて、ついてこれる人はどれだけいるのでしょう?

まぁ、ご要望次第では変化が出ますけれども


流水が羽毛を流す 風が木の葉を流す 星が大気を流す 
求めたものは太陽と共に 私が貴方の月になる

この先どういった形で進むのかちょっと不安に思いつつ、一周年を祝いまして一つ



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