嘗て蒼き宝石と湛えられた、緑の惑星地球。
その面影として残るのは見た目が丸い、ただそれだけだろう。
白い大地と赤い海、それが現在という名の現実に見た地球という名の星。
嘗ての蒼という色はどこにも存在せず、生物すら殆ど居ないという紅白の星。
ではこの星で尚生きているのはどんな生物か、どんな存在か。
こうなった原因はなんなのか、この先どうなるのか。
始めよう、古き過去の話を。
始めよう、古き戦いの話を。
始めよう、最速を掲げる者の過去を。
始めよう、神の階梯を上り始めた者の過去を。
最終戦争たる最速と反逆者なる神の始まりを、今ここに・・・・・・・
Concerto 〜The Before Doppelt〜 神鳴神薙
始まりの出会い、危険な薔薇の香り(笑)
嘗てこの地では戦いが存在した、人が未来を書けた戦場が存在したのだ。
その戦いは僅か十四歳の少年少女によって行われ、戦いを命じたのは護るべき大人だった。
本来護られるべき子どもに、護るべき大人が命じるという矛盾を当然とした組織を「NERV」という。
白い砂浜に一人の少年が座っている、隣には赤いタイツのような服のようなものが一つ。
少年は膝を抱え、膝に顔を埋めて震えている。時折漏れる嗚咽がないている事を教えていた。
時間は過ぎていく、その間に少年に付いて少々の説明を入れよう。
少年の名前は碇シンジ、サードチルドレンと呼ばれ戦った少年である。
汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」、その初号機の専属パイロットとして最前線で戦った少年だ。
本来なら思春期に値する時期において戦い、人類を守るというあってはならない重圧を受けた一人でもある。
では何故この少年がこのような場で膝を抱えて座っているのか、それを説明しよう。
嘗て遭った戦いにおいて少年と同僚の少女二人は勝利を収め続けてきた。
しかし、あろうことか護られてきた政府が反旗を翻しNERVを襲撃、更にとある儀式が重なった。
人類補完計画と呼ばれる儀式は、人を一つへと纏め上げ進化をもたらす事を目的としていた。
その結果がこの現状、儀式の中心に置かれたのは傷ついた少年だったのだ。
結果的に儀式は成功した、少年の目の前で揺蕩う赤い海がその成果であり、全ての生物が一つになった結果である。
少年はこの儀式の中で僅か一握りの存在である、一つになることを拒否した存在。
しかし少年にとって不幸なのは、一つになることを拒否したが故に一人になるという結果だった。
と、少年が顔を上げて赤く染まった海へと視線を向けた。
「みんな、一つになってそんなにたのしいんだ。何で僕は拒絶したんだろう、何でぼくはここにいるんだろう」
少年の意識は未だに沈んだ気分という心持を続けているようだ、内気だった少年には当然かもしれない。
「死ねば僕も一つになれるかな?」
その先に保有していた選択肢は限りなく危ない選択だったが、少年は迷わずその選択をした。
少年がふらふらと歩き出し、鋭利な刃物の代わりを探す。
と、唐突に少年の手に鋭いナイフが握られていた。明らかに砂浜やその他から持ち上げたものではない。
しかし少年は疑問に思う事無くそのナイフを手首に当て、深い切り傷を作り上げた。
一瞬だけ顔を顰めた少年はゆっくりと赤い海に近寄り傷口を沈めていく、お湯に浸して血管が塞がらないようにする代わりのように。
「これで僕は死ねるんだよね?」
小さく呟いた声は誰にも聞き取られる事はない、その代わりに少年は不思議な感覚を得ることとなった。
「なんだろう、傷が・・・・・・ふさがってきてる・・・?」
赤い海の透明度はそれほど良くはない、それでも少年の目には海に浸した手首の傷が塞がってきていることに気付いた。
とっさに手を引き上げ確認すると、やはり最初よりもずっと小さくなっている。
呆然とその手首を眺めているうちに傷が治ってしまったようで、思い出したかのような激しい頭痛が少年を襲う。
「っっっっっ?! え・・・・・・・・がっ、ぎぃぃぃぃぃっ!!」
膝をつき、倒れるように赤い海に頭を浸す少年に変化が存在していた。
赫い海に浸るようにして少年は動かなくなり、ゆっくりと少年の肌が色素を失っていくように白く変わる。
それが終わると黒曜の色をしていた髪から色が落ちていき白銀へ。
波もなく湛えられていた赤い海が思い出したように波を起こし、少年がその波に飲み込まれていく。
少年が居なくなった砂浜には先の赤い服のようなものも残っていなかった、どうやら波が攫っていったようだ。
瓦礫と白い砂以外がなくなった砂浜は、波の音すら存在しない静かな浜辺へと姿を変えてしまった。
昼と夜の境が存在しない赤い星において、時間という概念は存在しているのかどうかわからない。
広大すぎるその星の上を確認すると半永久的に活動するといわれた時計を確認できる、時間を見てみるとしよう。
ディスプレイをみるとアナログではなくデジタル、それも西暦と日付が記されていた。
其処に記されている西暦は2016年、月日は3月14日となっており、時間は24時間表示で14時32分。
このときから赤い星のどこに少年が居るのか分からなくなってしまった、現れるのを待つことにしよう。
止まる事を知らないデジタルの時計、その西暦表示が確認当初と同じ日付を通過した回数が16に達した。
現在の表示は8194年9月14日、日付のみでいえば半年となる。
東北のとある海岸において、僅かの揺らぎもなかった赤い海に波が起こったのだ。
高さは3mはあるだろう、波紋すらなかった海にとっては大波だ。
その波が砂浜に一度だけ打ち寄せられ、小柄な人影が打ち上げられた。
波が引いた後にはまた揺らぎを消した赤い海があるだけ、先ほどの涙と後数回は打ち寄せる筈なのだが。
少年はその姿を殆ど変えていない、嘗て波に呑まれた銀髪と白い肌、着ていた服もそのままである。
暫らくすると少年が目を覚ました、家で起きるように僅かに身動ぎしてその目を開く。
開かれた目はルビーを思わせる鮮やかな赤、肌の色や髪を含めて典型的なアルビノの姿である。
「ここは・・・・?」
ゆっくりと起き上がりながら周囲を見渡し、頭を押さえる少年。
「僕は、確か手首を切ってLCLに傷を浸して・・・・傷が治り始めて?」
どうやら気絶している間のことは覚えていないようだ、それが普通といえば普通なのだが。
とはいえ、一度も目覚めずこれほどの時間が経っても容姿が変わらないとはこれ如何に。
ふと、海岸の片隅に小屋がある。古びた様相を呈しているが崩れる前兆はない。
少年がその小屋の中へと歩みを進めていく、その表情は押さえられているが僅かに期待を滲ませていた。
「すみません、誰か住んでますか?」
言葉と共に小屋の扉を開ける少年、帰ってきたのは扉の軋む音のみ。
落胆すると共に中で見つけたのは鏡、ほぼ前進が映るだろう大きさから姿見用のものだろうと予測される。
興味半分に近づき鏡に映る姿は嘗ての親友に近い色、少年がその手で殺した好意を持ってくれた親友の色。
呆然とする少年が右手を上げると鏡の中の人物が左手を上げた。
震えながら右手を下ろし左手を上げると鏡の中の人物は左手を下ろし右手を上げる。
少年は考える、何故自分の姿が親友を思わせる色合いを得ているのか。
ふと、何かを感じたらしい少年が小屋を飛び出し海岸へと戻る。
少年が見つめる先に有るのは巨大な顔、真っ白なその顔の中で赤く輝く瞳は恐怖や嫌悪を思わせた。
しかし少年には恐怖も嫌悪も無ければ怯えもない、どちらかといえば懐かしんでいる表情だ。
「綾波・・・・・僕はこの世界でどうやって生きればいいの?」
ポツリと漏れた少年の言葉は本心だったのだろう、強い意志が込められた言葉だった。
その言葉から幾分か間をあけて、少年が頭を押さえて蹲る。
「?!?!????!?!?!!!!?!?!!!?!?!?」
既に声は出ない、ただその場で蹲り堪えることしか出来ないで居るようだ。
どれほどそうしていただろう、少年が汗を噴出しながら砂地に手をついて息を荒げている。
そんな少年を見下ろすように、波打ち際に半透明の幽霊のように少女が立っていた。
しかしその表情を沈痛なものへ変えた後、少年へと言葉を一つ残して消えてしまう。
「碇君、お願い・・・・生きて」
少年には聞こえたのだろうか、ゆっくりと幽鬼のように起き上がり力の限り吼えた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
その声に怯えるように大気が震え、次の瞬間には少年の口元から太い光が空へと斜めに迸っていた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
少年はそれに気付いていないかのように、未だ力の限り吼え続ける。
まるで自分の存在をその場に誇示するかのように、自分はここに居ると叫ぶかのように。
今はまだ気付くものは居ない、少年の口元から空に伸びる光が嘗て巨大なクリスタルから放たれた光と同じであることは。
少年は気付いていないが故に理解していない、本来であれば巨大な施設を使わなければ扱えない光であることを。
どれほど少年は吼え続けたのだろうか。
一秒か、一分か、一時間か、一日か、一ヶ月か、一年なのか。
そのどれでもありどれでもないというのが選択肢、どれでもありえないのが答え。
既に時間という感覚が無いといえるこの星において、時間そのものを考える事自体愚行。
漸く、漸くその光が途切れ少年の声が止んだ。
吼える事をやめた少年はゆっくりと後ろに倒れていく、倒れた音は小さかった。
少年は倒れたまま動かない、聞こえる音は息遣いの音、動いているのは少年の胸だけ。
「・・・・・・・・・・人類の知識も、使徒の能力も、何も要らなかったのに」
小さく呟かれた少年の言葉は、ある種の後悔を含んでいた。
小さな後悔を口にした少年はゆっくりと起き上がる、赤い海を静かに見据えながら。
「全てが溶け合ったLCLの海、全ての生物の集合体である海。階梯を上り神に近づく最初の覚醒、第18使徒リリン」
ゆっくりと確かめるように、少年は思い出すように言葉を紡ぐ。
「人類補完計画、その儀式の結果が僕というリリンの完全体の生成。本来の結果とはまったく違ったもの。
本来であれば人類補完委員会『SEELE』のメンバーを中心としたものとなるはず、しかし失敗した。
その失敗理由が僕を核として発動した為、僕が中心となったからって言うのは皮肉に聞こえるよね」
静かに、静かに言葉を紡ぎながらその目を閉じて佇む少年。
そしてこの星における変化は、少年の知らない所で起きていた。
まず第一使徒と呼ばれるアダムの最初の覚醒地たる白き月、そこから一振りの刀が飛び立った。
その真逆、北極にある古き玉座と呼ばれる空洞からも、一振りの刀が飛び立っている。
そして独逸のとある海岸線に、真っ白な肌と真っ白な髪の青年が不機嫌な顔で立っていた。
暫らくその場に居た青年はゆっくりと歩き出し、市街地にある服飾店へと入っていく。
次に出てきたときにはスラックスと袖の無いワイシャツを着ていた、というか袖の無いワイシャツって有るんだ。
しかもワイシャツと呼んでいるのは便宜上だ、何しろその色は白ではなく黒なのだから。
もちろんというようにそのスラックスも黒、ただしその不機嫌な顔にある瞳はルビーとサファイアのオッドアイだが。
次に先ほどの服飾店よりも大きな服飾専門店に入っていく、出てきたときには真黒なコートを羽織っていた。
何故黒なのか分からないが拘っている、その辺はやはり個人の自由だろう。
どうやら準備というか服装は整ったらしい青年が、先ほどまで居た海岸へとその足を進める。
海岸の先を睨むように見つめ溜息を一つ吐き、ぶれた音を残して消える。
一拍遅れて赤い海が爆音と共に飛沫を上げながら直線を描き始めた、砂浜にくっきりとした足跡を一つ残して。
まるで水面ギリギリを戦闘機が飛んでいるような、そんな飛沫の上がり方。
飛沫の先端を見てもなにもない、その更に数十m先を見ると黒い人影が見える。
よく見ると先ほどの青年だ、というかどんな速度で水面を走っているのだこいつは。
飛沫が追いつくよりも遥かに早く、その青年は対岸であるイギリスへと足を踏み入れた。
もっとも止まるのにかなりの距離を使い、海岸近くの道路が1km近く抉れてしまっていたが。
それを気にせず青年は歩みを進めていく、時間をかけて到着したのは大英博物館。
青年はそのまま中へと入り、奥へ奥へとその歩みは止まることを知らないように、道筋を知っているように。
数分をかけて階段の一番下へ、漸く辿り着いたその場所にあったのはガラスのショーケース。
縦長のそれに収められているのは反りというものを忘れたと言わんばかりの、真っ直ぐな刀。
その長さは見た目だけでも180cmは有りそうにみえる、もっと有るだろうか。
青年は躊躇を見せずにガラスを殴る、ガラスは割れる事無く青年が殴った右手を押さえて蹲る。
どうやらこのガラスは防弾使用か、強化されているかのどちらかに当て嵌まるのだろう。
立ち上がった青年がガラスを睨みつけながらどうするかと考えていると、僅かに刀が輝きガラスが砕けた。
それを呆然と見る青年は思い出したように動き出しその刀を手に取る、そして穏やかな笑みを浮かべた。
すると刀身と同じ色の光が刀の先端へと収束、刀がその光の中に沈んでいく。。
その後すぐさま踵を返し外へと出ると、今度は西をじっと見つめ始めた。
「よし、次はミスカトニック大学に行くか」
小さく呟いた青年がまたもや消える、アスファルトに直径20m程のクレーターと陥没した足跡を一つ残して。
どうやらまた走り出したようだ、今度は大西洋を全力疾走で渡りきるつもりなのだろうか。
・・・・・・・・・・・ニヤリ笑いしながら走るこの青年を見ていると出来てしまうということが嫌でも分かってしまう。
事実、時間がかかったにせよアメリカ合衆国マサチューセッツ州へと到着してしまった、使用時間1時間18分。
到着して僅かも休む事無く青年はミスカトニック大学へと足を向け、厳重に鍵がかかっていた地下倉庫へと入っていく。
やはり道筋を知っているように進み続け、大英博物館と同じショーケースの前に辿り着いた。
大英博物館に有った刀は刀身が藍色をしていたが、ここに有るのは嘗ての夜明けを連想する橙色。
ここでは青年が殴る前にガラスが砕け、青年の手にその刀が納まった。
この刀も同じように刀身と同じ色の光へと沈み込んでいく、どうやらどこかに仕舞っている様だ。
地上へと出てきた青年はじっと空を見上げ、小さく呟く。
「あと四振。次は・・・・・エアーズロックに行くか」
そしてやはり地面を陥没させて走り出す青年、そのあとを追いかけるようにしてミスカトニック大学から二つの光が飛び出した。
このあと青年はエアーズロックに到着し、その頂上に突き刺さっていた翡翠色の刀を引き抜いた。
そして追いついてきた二つの光を見て驚き、それを懐へと仕舞う。
その後には翡翠色の刀もまた刀身と同じ光に沈んでいき、青年はゆっくりと北へと視線を向ける。
「さて、次は黒き月だったか・・・・・・・・確か、日本だったな」
それが当然だというように、青年はまた姿を消した。やはり走っているようだ、無駄に体力がある。
この蒼紅の双眸をもつ青年と計画の中心に置かれた少年の邂逅は、このもう少しあとのこと。
少年、碇シンジは空を飛んでいる。
目を覚ました場所が第三新東京ではないと漸く気付いたからである、些か遅い気がしないでもない。
そして気付いたからなんだと言われても困るが、第三新東京に戻ろうと思い立ったのが理由だ。
空を飛んでいることに関しては、せっかく手に入れた能力なのだから活用しないてはないということである。
なにやら手に入れた知識を漁りに漁ってから動き出したのだが、飛ぶという行動にまだ慣れていないらしい。
時々カクンとほぼ垂直に、それこそ飛び込みをしている水泳選手のように上空から真下に落ちては立て直している。
「は、初めて飛ぶけど姿勢制御が難しい・・・・・でも気持ちいいなぁー」
どうやら思考は結構のんびりとしているようだ、この調子で今度はアスファルトに漫画落ちしてもらおう。
いや、ここは基本に立ち返って犬神家か、はたまた車田落ちか?
悩む所ではあるのだが、気にしてはいけないのが世の常である。
さて、碇シンジ少年・・・・・呼び難いので次からはシンジ君とフレンドリーに行こうと思うがそこんとこどうよ、デビッド=佐藤君。
とりあえずシンジ君の呼び方はこのままで行こう、決定理由はデビッド=佐藤君の彼女であるビクトリア=田中君に承諾を貰ったから。
と、こんな事を考えているうちにシンジ君が第三新東京についてしまった、まずは鈴原未来ちゃん(小五)に深く反省するべし。
・・・・・・・シンジ君が空から降り立つ、良くある足から普通に降りましたという形で。
つまらない、ここはしっかりと車田落ちを決めるべきだ。
そうぼやく意味は不要と判断してシンジ君の周りを見ていこう、あまりシリアスは続けたくないのだが・・・・
シンジ君が降り立ったのは旧NERV本部跡地近く、簡単に言うとN2により穴の開いた第三新東京市の穴の縁。
無駄に広いその穴の縁から、かすかに月光が届いているのだろう穴のそこで光る本部の残骸が見える。
この穴の深さは、深い。深いというか深すぎるというか、底が見えるのはシンジ君ぐらいかもしれないが。
現在は昼ではなく夜、月と星の光で周りは問題ない。が、1kmという穴の深さによる底なんて見えるわけが無い。
それでもシンジ君は覗き、底にある本部の残骸に反射する月光を確認した。
恐るべきはシンジ君の身体をここまで変えた使徒の能力か、それともここまで至ってしまっているシンジ君か。
そしてじっと穴の底を見ていたシンジ君の表情が僅かに驚愕に変わる、何か有ったのだろうか。
慌てるようにしてそのまま穴へと飛び降りるシンジ君、いくら飛べるといってもあっさり飛び降りたな。
一方青年はというと、NERV本部の硬化ベークライトに顔を顰めながら通路を歩いている。
対先ほど偶然のようにシンジ君がNERV本部へと入っていく青年を目撃、そのために飛び降りたのだ。
そして青年は面倒だといわんばかりの表情で下へ下へと進む、地図も案内も見ないで勘だけで進む。
シンジ君と遭遇する事も無く人口進化研究所の扉をくぐる青年、とにかく先へと進んでいく。
十数分遅れてシンジ君がそこに辿り着くが、それは些細な事だと思うことにしよう。
青年は更に下へ下へと歩みを進め、その歩みは嘗てシンジ君が最後のシ者を殺した場所で止まった。
じっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、巨大な十字架の根元を見つめ続ける青年。
と、巨大な十字架に日々が無数に走り出したと思った次の瞬間、あっさりと十字架が壊れてしまった。
青年は口を半分あけたままで固まっている、どうやらこの青年にとっても予想GAYなことだったらしい。
しかし壊れたというか砕けたというか、その十字架の中心部に位置した場所が僅かに光る。
それは青年の目の前にゆっくりと移動し、青年に柄を差し出すように空中に固定された。
青年がその柄を手に取る、美しいまでの琥珀色の刀身を持ったその大刀の柄を。
僅かに輝いた刀を見やり、青年が薄っすらとした笑みを零す。
その後今までと同様に刀身と同じ光が収束し、その光へと沈んでいく刀。
次はどうするかと考えた所に轟音が一つ、擬音で表現すると『ゴドォォォォォォォォン』辺りが適切だろうか。
気になったらしい青年が音の聞こえた方、自身の後ろを振り返る。
底には真っ裸のシンジ君が誇りで咳き込みながら立っていた、そう“真っ裸”の。
シンジ君を認識した瞬間呆然とした青年、それに気付かずに歓喜の笑みを湛えて見つめるシンジ君。
青年の背中に冷たい汗がそれこそ滝のように浮かんでは流れ落ちていく、顔には脂汗が大量に噴出していた。
ゆっくりと近づいてくるシンジ君に対して一歩、また一歩と後退りしていく青年。
シンジ君がその手を広げて涙を流しながら青年へと突撃する、青年は回れ右をして走り始める。
かつて第二使徒リリスが磔にされていたセントラルドグマと呼ばれる場所において、参加者二名のイベントが開催された。
イベント名は『時間無制限の鬼ごっこ〜チキチキチキンレースバラの香りの漂うLCLの湖畔で〜』という。
それを見ている観客は、LCLの上空50mに浮かぶ二振の刀だけであったという。
もしこの状態を某シスターこと安倍まりあが見たのなら、おそらく盛大に鼻血を噴出してくれるだろう。
勿論その親友である三人、鳥居くり子、山伏実希代、王城なむは苦労する事間違いなしだ。
あとがき(+元ネタ当てクイズ付き)
どうも、卒論に追い掛け回されつつ偶に麻雀している神鳴神薙です
これは本編のネタ募集中につき書き上げた過去話ということになりますね、たぶん
正直に話すとこれは無くてもいいしあってもいい、あんまり意味は無いだろう話
ネギの中にいる彼、捌~逸理が体験した道筋、それが“The Before Doppelt”です
そしてぶっちゃけたはなし、息抜きと暇埋めでかいたさくひんだったりして?
そのため、ちょっとしたネタを後半に配置していますので元ネタはクイズにして出題
解答は感想とご一緒に、答えは掲載後最初のレス返しで行います
これに関しての感想がございましたら普通に掲示板、Doppelt感想スレッドまでどうぞ
続く予定は、このあとの感想と皆様の反応次第で・・・・・・・
皆さんは下記のクイズで満点を取れるでしょうか、ちょっとマイナーなものも入ってますよ?
夜を見上げ星を見よ それは禍根をもたらす遠き星
願え 古き 尊き 星の声に それが常と信ずるならば
次は本編を予定しておりましてこんな駄文で申し訳なく思いながら一つ
問題.次の設問について答えなさい。
問1.デビッド=佐藤及びビクトリア=田中、このカップルの元ネタを当てなさい。(合計30点)
(登場作品名3点+7点、登場巻数10点、初登場話数10点)
問2.鈴原未来の元ネタを当てなさい。(合計30点)
(登場作品名7点+3点、登場巻数10点、初登場話数10点)
問3.安倍まりあ、鳥居くり子、山伏実希代、王城なむの元ネタを当てなさい。(40点)
(登場作品名9点+1点、初登場話数10点、それぞれが初登場したページ数各5点)
なお登場作品名の省略は認めないものとする。
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