黒一色の空間を感覚的にいえば歩いている、しかし本当に歩いているかは不明だ。

碇が道として作り上げたこの空間、どこを見ても光なんてないからどこに向かえばいいのかわからない。

ふと、気が付いたときには白一色の部屋に、病室のようなその部屋の中に俺が居る。

目の前にはテーブルが一つ、その上に白い棒が一つとネックレスが一つ、無造作に置かれていた。

それ以外のものは、それこそ入ってきた筈の入り口すら見当たらない、四方も天井も床も全てが白で埋め尽くされている。

目の前のテーブルには、嘗て集めて回った大刀の柄と似ている白い棒が一つ、とりあえず手にとって見ることにする。

軽すぎるわけでもなければ、重すぎるわけでもない、絶妙といっていい重さだと感じた。

隣にあった黒いネックレスも手に取りそのトップを眺める、意匠は一種の鍵のような形をしていた。

斜めの三日月に針が三本刺さり、三日月の下の部分を突き抜けるようにして鍵先がつけられている。

手に持って眺めていると、一気に周りの壁が遠のいていく。それもかなりのスピードで、天井も比例して高くなっていく。

呆然としている俺の手の中で、鍵の形をしていたネックレスがその形を変え始め、白い棒は大刀の刀身を作り上げていく。

これは、碇の作った道が不安定だったところに、無造作に俺が踏み込んだのが原因となって次元時空間に迷い込んだときの話。

俺がこの先、長く、永く、使い続けていく相棒ともいうべき武器との出会い。

『向こう』に出て碇に会った瞬間抱きつかれ、水月に1inchパンチをくれてやったのは抱きついてきたことに対する抵抗だ。













Concerto 〜The Before Doppelt〜          神鳴神薙

「物語の始まり、作られる未来」















はじめましてー。僕は天架シンジ十四歳、性別は男、趣味はチェロと体を動かすこと。

僕の目線の先、ピースサインを出しながら道路の真ん中に立っている銀髪紅眼の見た目同い年の少年は天架カグラ、年齢不詳の孤児院院長。

現在地は第三新東京の二つ手前の駅、其の駅前にある十段しかない階段の中ほどに僕ともう一人で突っ立ってます。

僕から見て右手、その階段の少し先には青い車が一台。階段上の花壇とゴミ箱の中間に正面から突撃した状態でストップしてます。

そして僕のすぐ左隣に片手で目元を抑えながら呻いている人が一人。膝裏まである白髪、雪のような白さを持つ肌の捌~イツリ、年齢不詳の不条理。

天架カグラは僕の兄であり、僕の親権を持っている血の繋がりのない家族。

捌~イツリは僕の兄であり、誰よりも信頼し信用する血の繋がりのない家族。

カグラ兄さんが邪魔だからといって車を投げ捨てたことがありました、後日ヤのつく人たちが孤児院を襲撃してきたけどフルボッコにした。

孤児院の子供が誘拐されたから、誘拐した人たちのところに単身乗り込んで最低半身不随状態にまで追い込んで、意気揚々と帰ってきたこともある。

山沿いの道でがけ崩れのせいで道をふさいだ10mはあった岩、それを素手で粉砕して通れるようになったと、爽やかに笑ってピースしてたことも。

そして現在、目の前でカグラ兄さんがやったことは、青い車が階段を上りきって壁に突撃するぐらい衝撃的な行動だった。

その前に、何で僕らがこんなことになっているのかは遡ること数日、孤児院の朝食の席でカグラ兄さんが僕宛にと渡してくれた封筒が発端だ。

あて先には「碇シンジ」の文字、最初に見たときはそれが僕宛だということ気づかなかった。

思い出したのはカグラ兄さんに言われてからで、それまで碇の苗字がかつて自分のものだったということを綺麗さっぱり忘れていた。

そして封筒を開けるとメモが一つ、「来い   ゲンドウ」という手紙ですらないメモ。

ほかには写真が一枚とカードが一枚、そして「第三新東京行き」と書かれたリニアの片道切符が一枚。

しばらく硬直している僕にカグラ兄さんが声をかけてきた。

「決めるのはシンジだ、周りの言葉なんて気にしなくていい。自分で決めれば、後悔はしないだろう?」

僕は無言で其の言葉を聴いていて、どうしようかと考えて考えてたどり着いたのは。

「一応行きます。でも、カグラ兄さんとイツリ兄さんのどっちかはついてきてくれるんですよね?」

結局は行くことにして、二人の兄のどちらかはついてきてくれると思っていた。

「ん? 僕といーちゃん、二人でついていくつもりだけど?」

カグラ兄さんは二人で来るという、どんな危険が待ってるのか頭を抱えてしまったのは当然だと思いたい。

「シンにー、おみやげー」

隣で一緒に朝食を食べていた佐倉チカちゃん(6)がお土産を所望、行く理由は観光で決まりだったらしい。

そして切符のとおりにリニアに乗ったら第三新東京市の二駅手前で止まってしまった、非常事態宣言というものらしい。

でも二人はいつもと変わらずのほほんとしていて、それを見ながら僕は「ほっ」と安心しながら二人の後ろについていく。

ただし、義兄二人の服装はすごかった。というか現在の日本人に真正面から喧嘩売ってます、バーゲンセールで売ってます。

着ている服は黒のノースリーブのワイシャツ(もうワイシャツなんていえないけど)、黒のスラックスに黒のロングコート、そして場違いな麦藁帽子

セカンドインパクト以来真夏の日本において「ダウトォォォォォォォッ!!」と叫びたくなる、見るだけで暑苦しい服装が二人分。

どっちも色素が少ないから紫外線が天敵なのはわかるけど、ここまでしなくてもいいと思うのは孤児院の子供たちの総意だ。

方やサングラス、方や目元を覆おうバイザーというその姿は似合わない、はずなのに違和感皆無で無駄に似合っている。

バイザーがなければ今の姿でさえ女性に間違われるイツリ兄さん、その間違い対策でもあるといってたっけなー。

で、二時間ほど待たされた。そう、二時間十八分三十二秒も待たされたんだ。

で、丁度いいといわんばかりに出てきた黒タイツのおっきなのが、戦闘機を蝿を叩くようにして叩き落とした。

その撃墜された戦闘機が僕らに当たるとわかった瞬間、カグラ兄さんが「タン」という軽い音を立てて戦闘機に突っ込んでいく。

遠くから来る青い車はその間に入ろうとスピードを上げて、カグラ兄さんが戦闘機を『正面から殴った』んだ。

ちなみに掛け声は「だらっしゃぁー!」だった、どんな気合の入れ方なのさ。

そして青い車はブレーキを忘れたように突っ込んできて、僕の右側を掠めるように過ぎ去り、壁に突撃したというわけである。

カグラ兄さんが殴った戦闘機はバラバラになって道路に転がっている、相変わらず物騒な身体能力だと思ったのは僕だけではないはずだ。

そして壁に突撃して突き刺さったままの青い車、どうしようかと思案しているうちにカグラ兄さんが引っこ抜いてしまった。

乗っていたのは女性、一応封筒に入っていた写真(チカちゃんの目には毒だからと兄貴分である菱義トチ(8)が細かく細かく切って捨てた)と同一人物、のはずだ。

そしてドアを開けようにも打ち所が悪かったのかまったく開かない、カグラ兄さんは開けるのいやだと言って開けてくれないし。

結局カグラ兄さんが車ごと持ち上げて運ぶことになった、イツリ兄さんの一言「面倒だ、カグラがもってこい」が決め手になったようだ。

そして僕はイツリ兄さんに背負われて駅を離れることになった、なんでも爆弾があるらしくて爆発する前に逃げるんだとか。

なんとなく巻き込まれても二人の兄は生きてるんだろうと、漠然とではあるが感じてしまった僕は染まってしまったのかも知れない。

その場所からかなり離れた場所で凄い音がして思わず振り返るまで、その爆弾の威力を知らなかったのは運が良かったのだろうか。

そうして僕は第三新東京市へと向かっていた、そこに着くまで僕はイツリ兄さんの背中にずっと背負われていたのはちょっと恥ずかしかった。









第三新東京市に到着して、カグラ兄さんが青い車を放り出して近場の壁を殴りつけている。

何をしているのかと思ってみていたら、その壁が壊れて空洞が出てきた。イツリ兄さん曰く、カートレインというものらしい。

そこに車を運び入れて僕らも入り込み、イツリ兄さんが携帯電話を操作すると動き出した。

後で聞いた話だけれど、このカートレインは部外者が勝手に使うことはできないもので、ネルフのIDが必要だとか。

そしてこの時、ネルフが自慢しているMAGIというスパコンがハッキングされて操作できなくなったらしい。

このことをイツリ兄さんに聞いたら、人差し指を口に当てながら一言。

「勿論、秘密だ」

綺麗に微笑みながら言われてしまい、カグラ兄さんに聞いても次の一言。

「ん? あぁ、気にしないほうがいいよ」

後になって赤木さんからかなり問い詰められていたようだけど、イツリ兄さんもカグラ兄さんものらりくらりと質問をはぐらかし続けたらしい。

閑話休題、元に戻すよー。

そしてカートレインが動いていく途中、地下にある金色のピラミッドと森と湖が見えた。

カグラ兄さん曰く、「ジオフロントっていうやつだね、人類最後の砦という名の臆病者のお城だよ」とのこと。

イツリ兄さん曰く、「資源の無駄、ゴミの巣窟、無能が頂点で有能な部下がいないと成り立たない堕落公務員の塒」とのことだ。

正直な話、二人の兄の言い分を聞いていると存在するだけ無駄という結論に達してしまうのだけど、そう思っていいのかな?

そしてカートレインが終着場所に止まり、青い車を置き去りにしてカートレインを降りる僕と兄さんたち。

そして待つこと三十分、ようやく人が来た。金髪黒眉で水着に白衣(ちゃんと白)を羽織った女性、その髪は染めてるのかな?

「はじめまして碇シンジ君。私は赤木リツコ、よろしくね」

僕の信条その一、旧姓の碇で僕を呼ぶ人に礼儀はいらない。

「とりあえず初めまして、赤木さん。碇の苗字はすでに返品していますので、天架と呼んでください」

「そうなの? じゃあ天架シンジ君、私についてきて欲しいんだけど、そちらのお二人は?」

どうやら僕の苗字が変わっていることを知らないらしい、せっかく裁判までして勝ち取った大事な苗字なのに。

ついでに信条その二、すぐに訂正してくれた場合最低限の礼儀を持って接すべし。

そしてなにやら僕についてこいと、つまり誘拐? いやいや、僕の遺伝子提供者は今どこにいるのさ。

「二人とも僕の大事な兄です。そして赤木さん、ついていく意味がわかりませんが?」

さて、遺伝子提供者はいったいどこにいるのやら。探し出してちゃんとあの写真の人と結婚させてあげないとね。

「あなたに見せたいものがあるの。そちらの二人は部外者・・・・になると思うからシェルターに行って欲しいんだけど・・・」

「愚問です。僕は遺伝子提供者に完全な絶縁を申し込みに来たんです、赤木さんの用事に付き合う義務はまったくありません。そして二人の兄が部外者なら僕も部外者です、こんな穴倉にいる怪しい人たちと係わり合いになんてなりたくありませんので、よろしいでしょうか」

僕の言葉にその口元を引き攣らせる赤木さん、本当にこの人は何の用で僕に話しかけてきたんだろうか。

「私はあなたのお父さんの部下なの、だからあなたの案内を頼まれているのよ」

「あれを僕の父親として呼ばないでください。碇の苗字はすでに返品したといったとおり、僕はあれを父親としてみていません。ついでに言わせてもらうのでしたら、僕はあれの姿形から声に至るまでをまるっきり記憶しておりません」

続けた僕の言葉に口元をさらに引き攣らせる赤木さん、遺伝子提供者の部下だなんて可哀そうに。

そして僕はさらに言葉を続ける、とりあえず赤木さんはいい人かどうか保留と判断しながら。

「そして遺伝子提供者のあれに会うために来たのは確かですが、僕の大事な兄二人が一緒でないのでしたら今すぐ帰ります。あんな低脳にして無能であり害悪でしかないミジンコレベルの脳味噌の持ち主に会う必然性が微塵もないのですから、当然でしょう?」

皮肉気に口元をゆがませて、真正面から赤城さんの目を見る。

赤木さんは目を丸くして驚いていたけれど、目を伏せて溜息を吐きながら頭を振った。

「いいわ、(迷惑するのは私じゃないし)その二人にも許可を出します。着いて来てもらえるかしら、天架君」

「わかりました、といいたいのですが・・・・僕は遺伝子提供者に会いに来たので、忙しいのでしたら後でかまいません。
仕事が終わるまでシェルターという場所にいますので、会える状態になって連絡をいただければまた来ます」

「理由は教えられないのだけど、その、案内する場所が対面場所になるの。だから着いて来て貰えないかしら?」

困った顔で言われた僕は、与えられた言葉という情報で最大限考える。

これから連れて行かれる場所、そこが遺伝子提供者との会談というか対面する場所になるらしい。

赤木さんがなぜ遺伝子提供者と僕の関係を知っていて、僕の昔の名前を初対面なのに知っていたのか。

そしてイツリ兄さんとカグラ兄さんが連れてきたこの場所はどこなのか、情報だけが空回りする。

さらに言えばあの特撮映画に出てきそうなでっかいの、あれに向かって攻撃していた戦闘機と武装ヘリ。

まてよ、特撮映画? ウルト○マンとは違うけど、隠された入り口にジオフロントという地下空洞。

この場所は秘密基地・・・のようなものに近いと考えれば、ここを根城にしているのは怪しい組織で決定だ。

するとなに、僕はあのでっかいのと戦う兵器にでも乗せられるとか、もしくはウル○ラマンのように変身させられるとか?

馬鹿馬鹿しい、ありえない・・・・・・・と、普通なら思うところなんだけどありそうだ。

誰の言葉だったか、「ありえないなんてことはありえない」なんて言葉があるぐらいだ、カグラ兄さんのような奇人変人もいるし。

本気で僕があんなでっかいのと戦う羽目になるのか、それとも単純に呼ばれただけなのか。

とりあえず、前者の場合はカグラ兄さんとイツリ兄さんがいればどうにでもなる。

後者の場合は、僕自身がいつか遊びに来ていた『いの字』さんのように戯言を連ねて煙に巻いてしまえばいい。

そこまで考えた僕はいつの間にか俯いていた顔を上げ、しっかりと赤木さんに目を向ける。

「わかりました。着いて行かせてもらいます」

僕の答えを聞いた赤木さんは、小さく、とても小さく息を漏らしていた。「ほっ」という安著の溜息を。

「それじゃあ案内するわ、こっちよ」

赤木さんの言葉に従って歩き出す僕たち。カグラ兄さんもイツリ兄さんも、赤木さんとの会話に口を挟まなかった。

これは孤児院にいるときと同じ、自分の意思でしっかりと考えて、自分の意志で進めということなのだと思う。

そして赤木さんの後についていくこと約二十分、赤い水でできた水路のような場所をゴムボートで進んだ先。

そこにあったドアを開けて中に入ったものの、見事なまでに真っ暗闇だった、一寸先も見えないような闇。

手すりを伝いながら何とか前に進んでいくと、いきなり目の前が真っ白に染まる。

ライトがついたんだと気がついて、目の前に広がっていたのは・・・・赤い水溜りと一面の壁。

何でこんなところにつれてきたんだろうか、そう考えていると後ろにいた赤木さんから声がかかる。

「天架君、そっちじゃなくて後ろよ、後ろ」

どうやら僕は反対を向いていたらしい、少し恥ずかしく思いながら反転して、それを見た。

「・・・・・・・・・・・昔、僕のもう一人の遺伝子提供者を飲み込んだ何か?」

フラッシュバックしてきた記憶は単純で、かつて母親と呼んでいた人が赤い水に溶けていく瞬間。

子供のころ(今もまだ子供だけど)はこれがトラウマになっていて、泳ぐことができなかった。

今は色々あって克服したし、ちゃんと泳げるようにもなったからこの記憶もいいものじゃないけど、克服はした。

「汎用人型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。これはそのシリーズの中で初号機と呼ばれるものよ」

赤木さんが顔を顰めて面倒そうに、嫌そうにこれが何であるかを教えてくれた。

「これが、遺伝子提供者の遊び道具というわけですか?」

「そうだ!」

皮肉を込めて聞いてみた内容をあっさり肯定した人がいた、どこにいるのかとキョロキョロしてみる。

「シンジ、上だよ上」

するとカグラ兄さんが顔を顰めながら場所を教えてくれた、いつも楽しそうにしているカグラ兄さんが嫌そうにしている。

上を見る前にイツリ兄さんをちらっと見てみたがその無表情は変わらない、いや、若干だけど呆れているような気がする。

そしてゆっくりと上を見上げると、ガラス張りにでもなっているのだろう紫色の頭の上部分に人が二人。

片方は髭を生やしに生やしてサングラスをかけた厳ついおっさん、ヤのつく人か怪しい組織の下っ端に見える。

その髭(呼び方はこれで決定)の隣に寄り添うようにして立っている女性、容姿はそれなり・・・・なんだろうきっと。

女性の容姿に関して補足を一つ、僕にとっての基準は暮らしている孤児院の女性にある。

年齢の下は四歳、上は三十歳まで、孤児院を出て暮らしている人を含めるとかなりの人数に上る。

そして図ったかのように、全員美幼女、美少女、美女という何の集団だといいたくなる状況なのだ。

男に関しては中の上あたりから上がいるため、この孤児院は容姿がよくないと入れないとまで言われている。

そしてそんな常に「美」が付加される女性陣を見て育ってきた、僕をはじめとした孤児院の男性陣は目が肥えているのだ。

もっとも好きになったら容姿なんて関係ない、といって憚らないのが我が孤児院の男性陣の特徴的な部分でもあるが。

さて、何が言いたいかというとだ、赤木さんもあそこにいる女性も、見た目がいいのかもしれないがどうしても上の下に見えてしまうということだ。

髭に関しては論外、評する価値そのものが一ピコメートルもない。微生物からやり直してこいといいたいが、ここはぐっと我慢する。

さて、閑話休題というか原点回帰というか微妙だが話しは元に戻る。

上にいる一組の男女、女性に関してはなんか見覚えがありそうでないため率直に聞いてみることにする。

「赤木さん、あの二人はどこのどなた? 僕は遺伝子提供者に会いに来たはずですよね?」

そしてかなり顔を顰めながら近くに寄ってきた赤木さんが、僕の両肩に手を置いて上の男女に関して答えた。

「天架君、あの二人があなたのご両親。あなたの言葉を借りれば遺伝子提供者ということになるわね」

僕に対する原爆級の爆弾を落としてくれた、ジョウダンダトイッテクダサイアカギサン。

「シンジ、現実逃避もいいが事実から目を背けるな。あれらは紛れもなくお前の遺伝子提供者という名の親二人だ」

現実逃避使用とした矢先にイツリ兄さんの言葉が耳に入ってくる、強制的に回帰させられた。

「ここはジオフロント、国連軍直属非公開組織『特務機関NERV』本部、使徒と呼ばれる巨大生物と戦う最前線基地」

普段の無表情そのままに詠う様に言葉を紡ぐイツリ兄さん、そしてうっすらとした笑みを浮かべたカグラ兄さん。

「初めまして碇ゲンドウ、碇ユイ夫妻。俺はイツリ、捌~イツリ。天架シンジの義理の兄という家族だ」

「初めまして。僕はカグラ、天架カグラ。僕は天架シンジの義理の兄であり現在、天架シンジの親権を持ってるものさ」

いつもの無表情で自己紹介をしたイツリ兄さんと、なぜか爽やかに、にこやかに、歯を白く輝かせながら自己紹介したカグラ兄さん。

それを聞いて目を丸くして驚愕してますといった体裁の、イツリ兄さん曰く碇ユイという女性。

隣の髭は片眉を少し上げただけで反応なし、もう少し感情を言うものを表に出したまえ髭。

「出撃」

そして兄さんたちの言葉を無視して勝手に意味不明な言葉を話す髭、痴呆症の発病はまだ少し早い気がする。

「司令! シンジ君は今着たばかりです、それでも乗せるおつもりですか!」

唐突に、今まで聴いたことのない声が横入りしてきた。誰だ、この無神経なおばさんは。

ぱっと見た感じどこかで見た覚えがある人で、容姿は中の中だと感じ、なんとなくカグラ兄さんの左側へと移動する。

勝手に人の名前を気安く呼んだそのおばさんは、僕らを無視して髭と話を進め始めた。

聞くに堪えない言葉、聴いていて不快になる言葉、それよりも酷い人だ。

人語として認識することすら嫌悪する声で、勝手に人を蚊帳の外において話を進めていく。

何でも僕が目の前の紫色のでっかいのに乗せられるということだ、ここに来ることを承諾するときに考えたことが本当だったとは。

頭痛がするのを我慢してカグラ兄さんの左手を握る、僕が乗せられるのではないかという不安が出てしまったからだ。

カグラ兄さんはこちらを見ることもせず、その手を振りほどくこともせず、そのままわずかに握り返してくれた。

僕にとってはそれが一番うれしかったし、そのおかげで少しだけ不安と恐怖が薄れた気がした。

「仕方ないのね。シンジ君、乗りなさい」

最初は反対していたのに、仕方ないという言葉で自分を納得させ、手のひらを返して僕を乗せようとするおばさん。

「嫌です。そして何よりも、あなたが誰か知りませんので気安く僕の名前を呼ばないでください。不快です」

「なっ、ふざけてんじゃないわよ! さっさと乗んなさい、人類のためよ!」

そういった僕の答えを予想していなかったのだろう、おばさんが顔を真っ赤にして怒鳴り返してきた。

その言葉と勢いに僅かに萎縮して体が硬直する、次の瞬間にはカグラ兄さんがその手を握り締めてくれて、硬直したからだがほぐれた。

「豚、よりも牛かな? 家族である僕らの許可も得ずに勝手に話を進めないでもらえるかな、無能」

にっこりと笑いながらおばさんに言葉を返すカグラ兄さん、その向こうではイツリ兄さんがどこかに電話をかけていた。

ここって地下のはずなのに、電波が届いているのかな?

そんな場違いな疑問を考えるぐらいには余裕が生まれていた、ちょっと考えてみよう。

僕がここに来てまず目の前の紫色のでっかいのに会わされて、その後に遺伝子提供者と対面した。

そしてそのまま人の話を利かずに変な風に話が進んでいって、僕がこの紫色のでっかいのに乗って使徒とか言う上のでっかいのを倒すと。

どこかの漫画かアニメのストーリーみたいな話で、思い出したのは「事実は小説より奇なり」の一文。

そして僕の隣での舌戦も佳境に差し掛かっていたらしい、カグラ兄さんが鼻で笑いながらおばさんに答える。

「俺たち三人がここにいる理由は、裁判にも来ないで親権を移動させられたにもかかわらず親を自称する馬鹿を笑うためだ。法的にも世間体的にもシンジの親権は僕の手にあって、シンジの苗字も碇じゃなくて天架だ。来てもらえただけありがたく思うべきなんだよ?そしてさらに言うのなら、初対面で自己紹介すらしてよこさず馴れ馴れしい四十代のばあさん相手に、礼を尽くすつもりなんてないんだよ」

カグラ兄さんのその言葉に赤くなった顔をさらに赤くして怒り出すおばさん、癇癪持ちの子供みたいに見える。

と、いきなり懐に手を入れたかと思ったら拳銃を取り出してカグラ兄さんの額に押し付けた、って拳銃?!

「ふざけたこと言ってんじゃないわよ、クソガキ! あたしが使徒を倒すためにシンジ君には乗ってもらわないといけないのよ!部外者のあんたがこれ以上邪魔するんだったら、その頭に風穴開けてあげるわ」

ギリっと、目の前の光景に対して歯軋りをする。僕がここにいるからカグラ兄さんの邪魔になっている、悔しい。

そう思っていたらカグラ兄さんがにっこりと、さっきまでよりも綺麗な笑みを浮かべた。

「言葉でだめなら実力行使ですか、あなたの頭の中にはいったい何が入っているのか調べてみたくなるよ。そして拳銃を押し付けただけでもう勝った気でいる、それは二流のすることなんだけど気づいていないのかな?さらに言えば僕は部外者じゃないし。天架シンジの親権を持っている兄なんだけど、その辺の話しを聞いてないのかな?あと、あなたの名前を僕は知らないからこのまま牛とか牛とか牛とか牛とか、豚でもいいけど、そう呼んでいいという意思表示?」

カグラ兄さんの言葉は目の前の見知らぬ人に大きな傷を作ったらしい、一瞬、本当に一瞬だけ体重が後ろにかかって引き金から力が抜けた。

そしてカグラ兄さんが行動するには、その一瞬という時間で十分すぎたらしい。

目の前から残像すら残さずにカグラ兄さんが消える、次に見つけたのは見知らぬ人の頭上で逆さまになっていたところ。

そのまま両手で見知らぬ人の頭を挟み、たてに反転しながら見知らぬ人の背後に着地すると同時に頭を引っこ抜くようにして投げ飛ばす。

見知らぬ人が気づいたのは投げられて空中にいるときに、カグラ兄さんと僕を視界に入れたときだった。

一瞬だけ目線があった後は、そのまま重力に引かれて赤い水の中に大きな音を立てて着水。

そしてその鮮やか過ぎる一連の動作に僕と、なぜか赤木さんが拍手してしまっていた。

だが、悪い知らせというものは見事というほかない状態で重なるものらしい、いつだったかイツリ兄さんが言っていた気がする。

僕の視界の端にいたイツリ兄さんが上のほうに視線を向けた、僕もそれに倣って上を見上げる。

すると図っていたのではないかというタイミングで遺伝子提供者夫妻に通信が入り、白髪の老人が声を張り上げて報告し始めた。

「碇、ユイ君、大変なことが起きた!」

「どうしたんですか、冬月先生」

「何があった」

かなり動揺しているらしい老人は隣から差し出された水を一気に飲み干して一息つき、早口に話す。

「つい先程、第三に進行してきた使徒が見知らぬ相手に倒された。倒したのはエヴァとはまったく違う、おそらくロボットなのだろう。オペレーターが解析したところ生命反応は人間のものが二つ、後は機械らしい。とはいえ一大事だ、一度戻ってきてくれ!」

呆然としながらその報告を聞いている遺伝子提供者夫妻、それを見ながらうっすらと笑うイツリ兄さん。

その笑いを見た瞬間、僕の頭の中にはある考えが唐突に浮かび上がってきた。

即ち、上にいたでっかいのを倒したのはイツリ兄さんに関係している人たちで、イツリ兄さんがしていた電話はこのためだったんだ、と。

慌しく出て行ってしまった遺伝子提供者夫妻、赤木さんはその場で呆然と立っているままだ。

足元の赤い水に落ちた見知らぬ人はいつの間にか上がってきていて、聞き取れない叫びを上げながら走り去っていく。

そして見知らぬ人が走り去って言ったドアとは反対のドアが開き、ストレッチャーに乗った少女が運ばれてきた。

確か聞き流していた遺伝子提供者の言葉の中に「つれて来い」という単語があったはず、その対象がこの子なんだろう。

しかし、この蒼銀の髪の少女を見た赤木さんが怒りを顕にしながら連れてきた意志に噛み付いていた。

「何で連れて来たの! レイは絶対安静だって伝えておいたはずよ!」

「しかし、司令の命令では・・・・」

「司令の命令も何もないわよ! この子は絶対安静なの、病室から出したら悪化するでしょうが!」

どうやら赤木さんにとって大事な人のようだ、ぱっと見た限りでも左手が折れているみたいだし、頭の包帯も痛々しい。

というか、包帯を巻いた上からあの白い服みたいなものを着ているんだと思う。

「イツリ兄さん、彼女のこと、どうにかならないかな?」

「助けたいのか、シンジ」

彼女に対して僕にできること、僕自身は特殊な力なんてないからイツリ兄さんかカグラ兄さんに頼むしかない。

この場面だと赤木さんを説得して、その上でということになるだろうからイツリ兄さんが適任だと思う。

「助けたいよ。赤木さんは少ししか話してないけどいい人なんだろうし、あの子の怪我は見てていい気分じゃないから」

「それが偽善といわれても、同じ考えか?」

「勿論、僕の独善で、エゴであの子を助けたいと思ったんだ。頼めない、かな?」

なんとなく、あの蒼銀の髪の子をここから連れ出さないと駄目だと思ってしまったのも理由の一つだったりして。

僕の目をまっすぐに見ていたイツリ兄さんが、あっさりと赤木さんの方へと歩いていく。

「失礼。左手の複雑骨折に頭部の裂傷、内臓関係にも損傷が大きく残っていて足の骨には罅が入っているか」

ぱっと見と僅かな触診で症状を診断するイツリ兄さん、医者としても大成できるというのはカグラ兄さんの弁だ。

「赤木さん、俺らから提案できるのは二つのことだけだ。シンジが助けたいといったから、二つではなく一つになるが。一つ、この子だけを連れてNERVから出て行く。もう一つは、このこと一緒にあなたもNERVを出る。提示できるのはこの二つだけ、正直この子をNERVに残すというのは気に入らないし、シンジが嫌がってるので却下だ。赤木さん、俺はあなたに選択を迫る。今この場で選んでくれ、一緒に来るか否かの二択を」

イツリ兄さんが赤城山に選択肢を出した、かく言う僕も何度かこういった選択肢を出されたことがある。

赤木さんは迷っているようだ、なんとなく雰囲気がそんな感じ。すぐさまオロオロし始めた、解りやすいなぁ。

そしてようやく止まったと思えば考え込んでしまった、その間もイツリ兄さんは蒼銀の髪の子にできるだけの応急処置を施している。

そんな考え込んでいる赤木さんを他所に、カグラ兄さんがボソッとつぶやく。

「僕らのところに来れば、この子の怪我なんてすぐに治るんだけどなぁ」

その言葉を聞き逃さなかったのだろう、赤木さんが俯いていた顔を勢いよく上げてカグラ兄さんに詰め寄っていく。

「ちょっと、本当に直るんでしょうね! 少なくとも全治2ヶ月なのよ?!」

「こ、これぐらいの怪我なら、たぶん二週間前後で治る、と思う」

そう、僕もぱっと見た限りとイツリ兄さんの言っていた怪我の内容なら、大体二週間ぐらいで治ると思っている。

イツリ兄さんの知り合いはこういったことも含めて(性格は二の次としても)天才が多い、○○○○や奇人変人も多いけど。

赤木さんが僕のほうを見て、僕が頷くのを確認するとすぐさまイツリ兄さんに向き直る。

「えっと、捌~さん・・・でしたよね」

「正解。もう一回言っとくが、俺は捌~イツリ。呼び方は好きに呼んでくれてかまわん」

「わかりました。それで捌~さん、結論が出ました」

簡潔に、もう一度自己紹介したイツリ兄さんをまっすぐに見つめ帰しながら、赤木さんが一礼と共に結論を言う。

「私ともども、お世話にならせていただきます」

それはとてもあっさりした結論だった、少なくとも僕にはそう感じられるぐらい未練はなかったようだ。

「一応ここは国家組織だけど、その辺は大丈夫なの?」

心配そうに話しかけたのはカグラ兄さん、僕は蚊帳の外のような感じで放っぽられてます。

「辞表は郵送すれば大丈夫でしょう。私が居た理由なんてこの子が、レイが居たからここに居たようなものですから。唯一未練があるのは、母の遺作である有機コンピュータのMAGIをここに残していくことぐらいでしょうか?」

はにかみながらそういった赤木さんは、蒼銀の髪の子を、レイと呼ばれた少女を優しく見下ろしている。

「ただ問題は、どうやってここから出るかという点なんですが・・・・・」

赤木さんの疑問にして問題点はもっともなことだ、正直ここから出る途中で絶対に捕まる。

「カグラ、問答無用だ。この少女は俺が抱き上げて運ぶから、障害は全て踏み躙れ」

「オッケー!!」

イツリ兄さんの物騒な言葉を笑顔であっさり肯定したカグラ兄さん、何でこんなに平然としていられるのだろうか。

などと考えても切がないので僕ら孤児院の住人は次のように完結している、そうでないと持たないのだ。

孤児院ルール第一条「捌~イツリと天架カグラの行動と言動はこの二人だからということで完結すべし」

このルールができてから、頭を抱えてうずくまる住人が居なくなってしまった。

そう、カグラ兄さんが地面を陥没させようとも、巨岩を殴り壊しても、熊相手に真正面からやりあってしとめた挙句、晩御飯の材料にしても。

イツリ兄さんが水の上を走っても、垂直な崖を普通に歩いて上っていても、ドラゴンを召喚しても、気にしないったら気にしない。

こうして僕らはNERVという場所から二人の新たな住人を連れて脱出した。

その道中は皆さんの思っているとおり、カグラ兄さんが遣りたい放題やって道ができていたから余計な負担はなかった。

途中で金髪の髪を九つのポニーテールにした女の子が、10tと書かれたハンマーを振り回していた気がするけど、それは忘却する。

そうして地下にあったNERV本部から地上へと戻ってきた僕らは、イツリ兄さんに連れられてこの街で暮らす家に向かった。

何でもしばらくここに居る予定なんだというカグラ兄さん、案内されたのは街外れにあるちょっと大き目の山の裾。

そこにあるのは今朝方出発してきた孤児院そのもの、違いはその近くにある店ぐらいだろう。

孤児院の入り口には今朝別れた住人が全員そろって出迎えてくれて、いちいち帰る必要がなくてうれしくなった。

気になる店は孤児院の敷地内に立っていて、その店専用のドアが壁に追加されていたのが特徴的だ。

その店の看板にはこう書かれている、萬喫茶『DAHLIA』(よろずきっさダリア)と。

こうして僕の、天架シンジの新しい日常が始まりを告げた、いろいろ規格外の一日だったのが予想GUYだったけど。

目下の問題は今日つれてきた二人について、どういった話をするべきなのかといったことだろう。

うん、イツリ兄さんとカグラ兄さんに丸投げしよう。それが一番だ、と思う。













To be Continued...


あとがき

何気にしばらく時間が経ってしまいました、すみません

とりあえず、これ以降の投稿は卒論が終わった後にしたいと思います

気分転換にちまちま書いていく予定なので、完成したら送るかもしれません

というか送ることになりかねません、私は気分転換に一番時間を費やす戯けなので

さて、今回はエヴァ編の最初ということで、行き成りカグラが壊れていますが気にしないでください

さらにゲスト出演してくださった彼女は、気づいたとしてもそっとしておいて上げてください

ストレスが溜まっていたんです、発散するのに最適な場面だったんです

ハンマーの重量が少ないのは、相手が一応一般人だからだと思ってください

使徒もすでに殲滅済み、これに関して次話で書きますのでお待ちください

○四つの部分が一つありますが、ある特定の単語が入ります(分かったとしても掲示板などで書かないでください)

ある意味で修正すべき単語なので、すぐに分かる人のほうが多いと思われますが

では次回、過去編か本編かは分かりませんが


星が集い暦が巡る 思いを重ねて進む道に王者が在れり
王者の道を進むものよ 毅然たる装いを以って邪悪を断ずべし

卒論の締め切りまであと18日(12/02現在)ということで今回は一つ





補足事項

イツリはすでに下記の世界を渡り歩いており、その中から組織のメンバーが幾人か選ばれています

『とある魔術の禁書目録』『ティンクルセイバーNOVA』『飴色紅茶館』『言の葉の魔女と言霊の巫女と』
『レベリオン』『スカーレット・ウィザード』『暁の天使たち』『クラッシュブレイズ』『AHEDシリーズ』

ちなみに、これらの世界は作者である神鳴神薙の趣味が多分に入っています、ご了承ください
皆さんはいくつ知っていますか?


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