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二人?の異邦人IN麻帆良 NEXT


(エイプリルフールお詫び記念、特別企画シリーズ)

「もしも原作のあの場面に異邦人のキャラがいたら」





―――第二話 「新たなる力を手に入れろ!」―――





「さて・・・…この坊主をどうやって鍛えてやろうかね」


 南国もどきの日差しの中、褐色の肌をした大男が目の前の小動物のような少年を見つめる。
 大男の眼差しに映る少年はかのナギ・スプリングフィールドの息子だ。さぞかし鍛えがいのあることだろう。
 男は自分をキラキラと期待に満ちた目で見つめてくる少年、ネギに対してほんの少しの期待と、自身の暇つぶしも兼ねてどんな修行をつけてやろうかと考える。
 そんな彼の背後にはどういう経路で入手したのかは不明だが、旧世界のマンガと呼ばれる娯楽雑誌、それも週刊日曜日で絶賛連載中の幸薄い最強の弟子のコミックが山積みされていたりする。
 となれば、ネギを待ち受ける修行の内容を普通一般に考えると、過酷という言葉ですら生温い地獄と相成るわけなのだが――


「まあ、この結末は予想はできてたわな」

「あ……ありのままに起こったことを話すぜ……俺は修行ということで重しを付けて坊主を火の海に放り込んだはずなのに、気がついたら炎の中で昼寝してやがった。何を言ってるかわからねーと思うが……」


 ――例によってネギの驚異的な生態に圧倒され、同行していた千雨共々頭を抱えていた。


「なあ、坊主の師匠はエヴァだったよな……」

「一応な……」

「いったいどういう鍛え方をしたらこうなるんだ? 俺にも出来なくはないが、それでもこの年齢で出来るようになるのは異常だぞ」

「色々あったんだよ……色々とな……」

「なかなか壮絶な修行だったようだな」

「本当に修行だったらよかったんだけどな。先生にとっちゃ修行よりも普通に生活するほうがキツかったはず……」

「ま、それはともかくとして……だ」

「うわ、あっさりと切り替えやがったこのオヤジ!」


 千雨はネギの過酷な生活をあっさりと無視した男、ラカンに対して思わず突っ込みを入れるが、ラカンは千雨の突っ込みなどどこ吹く風とばかりに炎の中で爆睡中のネギを眺めている。


「まあ、どういう生活だか修行だか知らんが、坊主がかなりのポテンシャルを持っていることはわかった。だが……」

「だが?」

「いくら耐久力があっても、今のままじゃあのガキ……フェイトには勝てねえな」

「なんでまた? 今の段階でも十分に化け物だと思うんだが」

「確かに坊主の耐久力はすげえ、正直あの防御を貫くのは生半可な攻撃じゃ無理だ。だが、逆に攻撃に関してはまだ一流以下……フェイトに勝つにはまだ足りねえな」

「そこをなんとかすんのがオッサンの役目だろうが!」

「まあ、方法はないことも無いが……」

「方法?」

「ああ、坊主の師匠……エヴァが開発した究極の魔法『闇魔法』だ」


 ネギを包む火力が時間と共に増大し、周囲の岩石が溶岩と化す中で平気で眠り続けるネギを前に保護者である千雨に闇魔法の説明をするラカン。
 しかし、そんな彼の思惑とは別に千雨は『闇魔法』と聞いて一抹の不安を感じていた。
 そして、その不安が現実にのものになるのにたいして時間はかからなかったという。




「……『闇魔法』ですか? 僕、普通に使えますけど……最近ついに『フリーダム』も覚えましたし、あと1LV上げて『ワードパクト』を覚えてハンマー系統の打撃無効化を手に入れればもう怖いものなどありません!」

「いや、ネギ先生のは『暗黒魔法』だろうが! というかいつの間にLVUP?」


 ラカンがネギへ闇魔法の説明を行った後、最初のネギの発言はなんともアレな発言であった。
 当然、その発言に対して千雨は突っ込みをかますのだが、あいにくとアスナと違って実力行使の手段が無いため、ネギは何か物足りなそうに千雨を見上げている。
 そんな微妙な空気の中、あまりに予想外であったネギの発言にしばし停止していたラカンではあったが、今の発言を聞かなかったことにしたのか、妙に乾いた笑いと共に説明を続けるのであった。


「闇魔法は覚えておいて損はないぞ。何よりも坊主は素質が無茶苦茶ありそうだしな……」

「そうなんですか?」

「たぶん……いや、間違いなく素質はある。ありすぎるほどに……な」

「否定できねえ……」


 ラカンはキラキラと輝く目で見つめてくるネギから目をそらしつつ、妙な形でネギの素質に対して太鼓判を押す。
 ラカンは暗黒魔法がどういうものかはわからないが、明らかに光とは真逆の方向性を持つ魔法を自力で会得したのだから、闇魔法を使える素質は十分すぎるほどあると判断したのだろう。
 そして、その判断は極めて正しいと言わざるをえない。悲しいことに。


「と、とにかくだ。闇魔法を会得するには憎悪、嫉妬、悲しみといった負の感情がベースになる。だから闇魔法会得の修行として徹底的にネガティブになり、心の底から闇に溶け込んでみろ」


 かくして、ラカンの鶴の一声によってネギの修行が始まった。
 ネギに課せられた修行、その第一の試練は身も心も闇に溶け込ますために、ネガティブ系統の心の声を表に出しながら突きを放つという荒行であった。
 この荒行は一見ただの罰ゲームにしか見えない修行なのだが、この修行を一昼夜も続けて行うと自分がいかに矮小で、愚かな存在かを思い知り、下手をすると修行者自身が自殺を選択しかねないという想像を絶する恐ろしい修行なのである。
 ネギは千雨の心配――突っ込みとも言う――もよそに、生来の生真面目さから一心不乱にこの荒行をこなしていく。
 そしていつしか万単位を数える突きをこなして行く中、ついに過酷な夜が明けた。 

 
「なあ、コイツ本当にナギの息子か?」

「私に聞くな……頼むから」


 ネギの修行が始まって一夜明けると、その修業を生暖かく見守っていたラカンが呆然とした声を上げる。
 その傍らでは千雨が痛む頭を押さえ、唸るようにラカンに答えている。
 そして、当のネギはと言うと――


「恨み晴らさでおくべきか! 恨み晴らさでおくべきか! SATSUGAIせよ! SATSUGAIせよー!」


 ――どこかでスイッチが入ったのであろうか、木に打ち付けた藁人形を全身全霊の負の感情を込めながら生き生きとした表情で殴り続けていた。
 そして、その藁人形にはたどたどしいカタカナで横島の名前が書かれている。
 おそらく、今頃まだ行方不明の横島は謎の呪いに苦しめられていることであろう。
 

「なあ、千雨の嬢ちゃん……坊主の額に『死』って文字が浮かんできたように見えるのは気のせいか?」

「言うな、私には何も見えん!」


 ラカンと千雨は嬉々として藁人形を打ち付けるネギに恐れをなしたのか、ネギから微妙に距離をとる。
 そして今まさにネギの憎悪とテンションが最高潮に達しようとしたその時、突然ネギの背後に何か黒い影が現れ、その影がネギの背中に何かを張り付けた。
 するとその瞬間、ネギは急に胸を押さえ、苦しみだす。
 

「ハウッ!」

「な、なんだ? 何があった?」

「あ、呪詛返し……それも死神付きでかよ」


 千雨はこの時ネギの背後に現れた影の正体を看破していた。
 ネギの背後に現れた影、それは横島に付従う盟友、死神であった。おそらくネギの呪詛を受けた横島は呪詛返しを行い、その呪詛の運搬役としてクロネコ付きで死神が出張ってきたのであろう。
 

「って呆れてる場合じゃない! ネギ先生ー!」


 千雨はしばしの間クロネコにまたがって消えていった死神を見つめていたが、ふとネギの状態を思い出してネギの方を振り返る。
 すると、ネギは大地に倒れ伏し、ピクピクと痙攣しながらうめき声をあげていた。


「……本気で坊主はどういう人生を歩んできたんだ? あの呪い、大戦の時の親玉並みの瘴気だったぞ」


 ラカンはネギへと駆け寄る千雨を呆然と見やりながら、過去の強敵に思いをはせる。
 そして、あまりにも闇魔法への素質がありすぎるネギに対して戦慄を覚えるのであった。





「さて、色々とあったがこれが最後の試練だ」

「本当に色々とありすぎだったぞコノヤロウ……」


 あれから本当に色々とあったのか、千雨は心労で疲れ果てた表情でのほほんとしたラカンを睨みつける。
 だが、ラカンは突き刺さるような千雨の視線をあっさりと無視すると懐から巻物を取り出し、それをネギに見せた。


「今からコレを使って坊主は自分の内面と闘ってもらう。ただし、それは生半可なことじゃない。それこそ自分の認めたくないドロドロとした闇の部分が目の前に晒されることになる」

「すでに認めまくっているような気がするのは気のせいか?」

「ともかく! この試練に打ち勝ち、自分の闇すらものにすればめでたく闇魔法の免許皆伝だ」


 ラカンは千雨の突っ込みを再び黙殺すると巻物をネギへと手渡す。
 そして、闇魔法を得るための最後の試練が今始まるのであった。


 ラカンと千雨の見守る中、ネギは穏やかに眠っている。
 しかし、一見穏やかに眠っているように見えても、ネギは夢の中でまさに闇と戦っているのだ。
 もっとも、普通なら深刻極まりない状況であるにも関わらず、千雨はどこか楽観したような表情でネギを眺めているが、ラカンは厳しい表情を改める気配はない。


「さて、朝までが勝負だ……」

「ん? それはどういう意味だ?」

「文字通りの意味さ。朝までに目が覚めなきゃ坊主はこのまま、闇にとらわれ永遠に目が覚めることはない」

「な……って一瞬焦ったけど、よく考えたらアイツならあっさりクリアしそうだな。闇と同化して……」

「確かにそんな気もするが、人間の表に出てる闇はほんの一部だからな」

「もっとドロドロとしたとんでもない闇が眠っているかもしれないと……」

「ああ、下手したら有史以来最悪の魔王級の闇……とかな」


 二人は後頭部にじっとりと汗を浮かばせながら、穏やかに眠り続けるネギを見る。
 そのあまりにも穏やかな寝顔に逆に不安になってしまう二人であったが、ちょうどそんな時、ついにネギに変化が現れたのだった。





 ネギに現れた変化、それはあまりにも突然のことであった。
 今まで穏やかに寝ていたネギは突然苦悶の表情を浮かべ、ベッドのシーツを握りしめる。
 そして、そんな彼の体からまるで染み出すかのように黒い霧のようなものが現れ、その体を覆い尽くしていく。


「え、えっと……これはどういうことだ!?」

「あー……もしかしてアレか? 坊主の闇がでかすぎて漏れ出している……とか」

「うっわ、ありえすぎて否定できねえ!」


 二人は闇に包みこまれるネギを呆然と見詰めている。
 その一方で闇に包まれたネギはその闇そのものに取り込まれていいるのか、白人であるはずのネギの肌がどんどんドス黒くなっていき、その耳もまるで悪魔のように長くとがりだしていく。


「やべえ、まさか魔族化? どんだけでかい闇を抱え込んでたんだこの坊主は!?」

「魔族化……いや、まあ予想通りっていうか……こういうオチが見えてたというか……」


 ラカンが焦りの表情を見せ、混乱する中、ネギは闇魔法に囚われて瞬く間にその姿を変えていく。
 その一方で、千雨はどこか頭痛をこらえるかのように沈痛につぶやき、手にした巻物とキャンセル用の短剣に目を向ける。
 そして――


「ふはははは! なじむ、なじむぞー! ついに僕は念願の精神力抵抗+4を手にいれたー!」


 ――おそらく寝言であろうか、ネギが歓喜の声を震わせたその瞬間、千雨は無言で短剣を巻物付きたてるのであった。





 かくしてネギの野望は千雨の英断によって命運を絶たれ、ネギは切り札となりえる力の可能性をひとつ失った。
 しかし、同時に千雨は人知れず闇の脅威からネギを、そしてこの魔法界を救った救世主となったのであった。


「千雨さん酷いですー! もう少しで闇魔法を会得できたのにー!」

「やかましい! 闇魔法どころか本気で人間やめかけてたろうが! むしろ感謝しやがれー!」

「……ほ、本気で麻帆良で何があったんだ? というか今のコイツの瘴気は明らかに大戦時の大ボスを超えてたぞ……100倍くらい」


 この後ラカンは盟友の息子がどういう育ち方をしたのか思い悩むことになるのだが、物語の本筋とは関係ないので割愛する。
 だが、なにはともあれネギの野望は千雨の英断によって命運を絶たれ、ネギは切り札となりえる力の可能性をひとつ失った。
 そして、同時に千雨は人知れず闇の脅威からネギを、そしてこの魔法界を救った救世主となったのだが、それを知る者はこの場にいる者以外誰もいなかったという。


「うわーん、千雨さんのバカー!」


 夕暮れの魔法界に夢破れたネギの鳴き声がこだまする。しかし、それは新たなる平和の訪れを意味していたのかもしれない。


End
    


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