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二人?の異邦人IN麻帆良 NEXT


(エイプリルフールお詫び記念、特別企画シリーズ)

「もしも原作のあの場面に異邦人のキャラがいたら」




―――第四話 「対決、バグ VS チート」―――






「宙に飛び 大地に埋まりし 我が身かな 昨日の悪夢は今日の現実」

「煮てもよし 焼いてもよし けど空上げと叩きは堪忍な 今日の夢は明日の絶望」

「ちょ! 明日決勝なのになんで辞世の句なんか詠んでるのよー!」

「いや、ネギ先生のはともかく小太郎のは句になってないだろう」

「確かに句にはなっとらんけど、食べ物の唐揚げと空への打ち上げをかけているあたり、トラウマが垣間見えてなかなかやなー」

「いやお嬢様、そういう問題なのでしょうか……」

「どっちにしても、結びの部分で明日が見えない様よう伝わってくる……ほんまええ句やー」


 オスティアにて開かれる一大格闘大会、その決勝戦を翌日に控え、我らが主人公であるネギ達は物語が始まる前に既にナニカが終わっていた。
 今、ネギパーティーにおいて突っ込み担当となっているアスナと千雨、そして木乃香と刹那の前では、ネギと小太郎が虚ろな笑い声を部屋に響かせながら辞世の句を書いている。
 そんなネギと小太郎が作る句は内容を聞くだけで彼らの普段の生活が垣間見え、事情を知る人間はその苛酷な日常に涙を流すことは確実である。
 とまれ、句の良し悪しはともかくとして、なぜ決勝戦を前にこんな状態になっているかと言えば、それは決勝戦の対戦相手にその原因のほとんどを求めることができるだろう。


「だって、明日は生ける決戦兵器、バグキャラ上等のあのラカンさんが相手なんですよ!」

「セクハラ決戦で兄ちゃんと互角に渡り合える相手に、俺らが勝てるわけあらへんわー!」


 そう、彼らの対戦相手は歩く理不尽ことジャック・ラカンと影使いのカゲタロウであるのだ。
 大戦の英雄ラカン。その勇名はまさに千里を走り、この魔法世界においては知らぬものなどいない男。
 本来、そのような英雄と拳を交えることは闘技者として願ったり、たとえ負けても対戦したこと自体が自慢の種になるほどの男なのだ。
 そして、その英雄と明日の決勝戦で対戦するということは、この上ない名誉であるはずなのだが、あいにくと目の前で泣き濡れている二人は違う意見を持っているようである。


「だからって、なんでそんなに脅えてんのよ。アンタ達なら勝てないまでも十分に戦えると思うんだけど、というか二人とも十分にチートキャラじゃない」

「そうですよネギ先生。それにラカンさんだってちゃんと手加減を……」

「その手加減についてまったく信用できないんですー!」

「あのおっさんのことや、『あ、やっべー……』とか言いながら素で手加減間違えて俺らを殺すんやー!」

「いや、いくらなんでもそんな……」

「いや、ジャックならやりかねんな。戦っているうちに手加減を間違えるどころか、そもそも手加減そのものを忘れる可能性が高い……」

「うわぁぁぁん死にたくないよー!」


 アスナ達は泣き叫ぶネギを少しでも元気づけようと必死にフォローするが、今まで黙って見ていたヘラス帝国の第三皇女テオドラがしっかりととどめを刺す。
 彼女はラカンとの付き合いが長いだけに、ラカンのことをよく知っていた。そしてそれ故に見えるのだ。興にのった挙句に手加減そのものを忘れてネギ達をドツキ倒すラカンの姿が。
 まあ、さすがに殺しはしないとは思うが、このまま行けば冗談抜きで生死の境をさまようことは確実であろう。
 ネギとしては事このような事態となった今、全てを投げ出して逃げるという選択肢もあるのだが、それを選択することができない理由があった。


「とはいえ、逃げるわけにもいかんわなー」

「優勝はアキラ達の解放の必須条件だしね」
  
「自分の命が大事と言いながら、生徒を見捨てないあたり見上げたものなんだが……断言するぞ、俺が奴隷になってたらコイツは迷わず見捨てる!」

「でしょうね……」

「でも、横島さんが奴隷になったら、その相手が確実に滅亡することになると思うんですけど……」

「いや、もし美人のお姉さまが主だった場合、眠らせた丁稚根性が復活して服従しかねん」

「永遠に眠らせときなさいよ、そんな根性……というか、私相手じゃ丁稚根性出てこないの? なにげに便利だったのに」

「お前の場合だと丁稚根性より保護欲のほうが強いからな……」


 頭を抱えて苦悩するネギ達、そんな彼らをどこか達観したように横島とタマモ、そして刹那は見つめる。
 事実、横島達が言うようにネギに逃げるという選択肢はすでに無い。それ故に明日に迫った絶望と死の予感に恐怖しているのだが、いつまでもこのままでは埒が開かないのもまた事実であろう。
 故に横島はとうとう切腹の作法まで予習し始めたネギ達の首をむんずとつかむと、タマモと刹那と共にテオドラの持ってきたエヴァの持つボトルハウスのようなものに向かった。

 
「いいかげんいつまでも、嘆いてもはじまらん。というわけで……」

「え?」

「とるべき道はやはり……」

「あの、まさか……」

「特訓よ!」

「「いやだぁぁぁー!」」


 かくして、ネギと小太郎はエヴァのボトルハウスのような疑似空間の中で、タマモ&横島プロデュースによる地獄の特訓を受けることとなるのであった。












「あは、あははははははははははは!」

「うけ、うけけけけけけけけけけけ!」

「あー……うん、いったい何があった?」


 天はまさに晴れ、雲ひとつない空にネギと小太郎のただ虚ろな笑い声が響く。
 そのあまりにも哀れな姿にラカンをはじめとして観客達はドン引きし、歓声すらあげる者はいなかった。


「ちょっと……やりすぎたか?」

「さすがに『痛』の文珠連打は厳しかったのでは?」

「それもあるでしょうけど、やっぱり幻術で私達の過去をコミック1巻から最終巻+α分まで追体験させたのがまずかったかも……」

「誰の立場で追体験させたのか非常に気になるな……」

「ネギ先生は神父で、小太郎はあのバトルジャンキーよ。あと、オマケでくっついて来たカモは虎」

「それで小太郎はケツを押さえてたのか……おまけにネギは髪の毛が若干薄くなっているような……アレ、カモがいたのか?」

「いたわよ。まあ、横島の立場でフル体験させると壊れると思ったから、性格近そうな人物を選んだんだけど……」

「なんか見事に精神的に追い詰められてますね」


 ネギ達が壊れた原因。それはもはや言わずもがなであろうが、ここはあえて言おう。その原因はやはり横島達による特訓という名の拷問であった。
 しかし、拷問と言っても過去の特訓のように肉体的に痛めつけたわけではない。
 何しろネギ達は麻帆良学園での特訓、いや日常生活によって進化し、肉体的耐久力はラカンすら凌駕するレベルに達している。
 そのため、横島達は肉体的修行ではなく、精神的な面での成長を重点に置いた特訓を施したのだが、どうやら見事に逆効果となってしまったようだ。
 ちなみにカモは影が前以上に薄くなり、出番は無い。どこにもない。そう、どこにも――


****ネギと愉快な仲間達の修行風景ダイジェスト****



「1、3、5、7、11、13、17、19……ああ、今日もこんなに神が僕から消えていく」

「ねえ、神様助けて! 直しても、新築しても教会を建てるたびに壊されるんだ……」

「ちょ! まて、こっちくんなや! 兄ちゃん、兄ちゃん助けて! なんか変なオカマがこっちにー!」

「アレ? 俺っちの影ドコ? 見えない、俺っちの影がドコにも無いー!」


****ダイジェスト終了(視聴者の精神衛生上音声のみとなっております)****






「もけ、もけけけけけけけ!」

「おきゅ、おきゅきゅきゅきゅ!」
 
「ラ、ラカン殿……これはいったい?」

「なんというか、激しく戦いにくい……というか、戦いたくない相手に育っちまったな」

「そ、そういう問題なのだろうか」


 ネギ達のあまりの惨状に、対戦相手であるラカンとカゲタロウは額に一滴の汗を浮かばせながら遠巻きにネギ達を見つめる。
 やはりいかに海千山千の猛者と言えども、ここまでぶっ壊れたネギ達と闘うのは嫌なのであろう。
 二人はネギ達を遠巻きにしつつ、どうしたものかと相談していた。しかし、ちょうどそんな時、今までただ虚ろに笑うだけだったネギ達に変化が訪れたのであった。


「うふふふふふ……ねえ、小太郎君。なんで僕達はいつも……いっつもこんな目にあうんだろうね」

「星のめぐりあわせっちゅーやつなんかな。でも、今回のことについて一つだけはっきりしとることがあるで」

「そう……だね。僕達がこんな目にあうのも……」

「全部……全部目の前におるコイツらのせいやー!」


 ネギ達に訪れた変化、それは明らかな闇の気配。魔法(フォース)の暗黒面に支配された怨念であった。
 ネギ達は昨晩の特訓によって培われた人を超える負の感情、憎しみ、恐怖、嫉妬、怒り、それら全てを目の前にいる二人にぶつけていく。
 そして、そんなネギ達にとって目の前意にいる人物はもはやラカンとカゲタロウという固有名詞を持った人物ではなく、ただ自分たちに災厄を振りまいた諸悪の根源、敵であるとしか映っていない。
 ちなみに、人はそれを逆恨みと言うが、気にしたら負けだ。


「いや、ちょっとマテ! いきなり覚醒? というか、オレらがいったい何を!」

「ラカン殿、とりあえず迎撃を! この気配尋常ではない……ってぬお!」


 ネギ達のあまりの変化にカゲタロウは少しだけ焦りを見せ、ネギ達を迎撃するために前に出ようとする。
 しかし次の瞬間、不幸にもカゲタロウの足元の地面が崩れ去り、ラカンの視界からカゲタロウは一瞬のうちにその姿を消すのだった。


「よっしゃ! 昨日忍び込んで『穴』の文珠を仕込んでた甲斐があったぜ!」

「ナイスよ、横島!」

「いや、もう今更卑怯とか言うのは野暮なんでしょうけど……」


 満員の観客席が歓声を上げる中、横島はひそかに拳を握る。
 どうやらカゲタロウを襲った不幸は、横島によって引き起こされた人為的なものによるようだ。
 そしてこのふってわいたチャンスを棒に振るほどネギ達は無能ではない。
 

「くらえや! 兄ちゃん直伝、平安京エイリアンの術ー!」


 ネギ達はカゲタロウに脱出の機会も与えぬまま、瞬時に穴を埋め戻し、コンクリートもかくやと言うほどガッチリと締固めてしまう。
 かくして、カゲタロウは無残にもろくに見せ場もないまま退場となり、舞台にはネギと小太郎、そしてその二人に対峙するラカンのみとなるのだった。

 
「あはははははは! これで2対1だ!」

「うけけけ、このままいくでー。俺らにはもうなーんも怖いもんあらへんのやー!」


 カゲタロウを瞬殺し、それでもなおどこか壊れたままの二人は次の標的であるラカンに矛先を向け、一斉に飛びかかった。
 しかし、ラカンとて伊達に英雄と呼ばれてはいない。
 あまりの超展開に心奪われることはあっても、体は即座に反応してネギ達を迎撃する。
 観客達は今まさに大戦の英雄ラカンと、新しき英雄候補であるネギと小太郎の攻防を目にし、そのあまりの迫力に度肝を抜かれていく。
 特に、ラカンの攻撃を防御するために強制的に互いの体を盾にしあうネギ達の姿に瞠目することしきりだ。
 そして、ラカンもまた互いの安全を顧みないその戦いにぶりにじりじりとテンションを上げていくこととなる。


「戦い方はともく、後先を考えないその姿は気に入ったぜ!」


 ラカンは自らの攻撃を受けてもものともせず突っ込んでくるネギ達を相手に、いつしか純粋に戦いを楽しみだし――


「エターナル・ネギ・フィーバー!」


 ――案の定手加減を忘れて全力攻撃をネギ達に叩きこむのであった。


「あ……やっべ」

「ジャーック! 貴様何をやっとるかー! というか、本当に手加減を忘れてどうするー!」


 テオドラ皇女のどなり声が闘技場に響き渡る中、ラカンは目の前にできたクレーターを眺めながら額に一滴の汗を流す。
 そんな彼の表情はまさに『やっちまった』というヤツであるが、直撃を食らったネギたちにしてみればそんな程度済むとは思えない。
 そう、この闘技場にいるごく一部の人間を除いて誰もが無事に済むとは思えなかったのだが、その思いは砂煙の中から聞こえてきた声によって裏切られることになるのだった。

  
「WRYYYYY! 貧弱貧弱ゥゥゥ!」

「HAHAHAHAHA! ぬるい、ぬるいでー!」


 闘技場中心部を包み込む砂煙、その中心部よりネギと小太郎の狂ったような笑い声が響きわたる。
 その声を聞く限り、どうやらネギ達は奇跡的に無傷のようだ。ただし、まだどこか壊れているのか、異様なテンションは相変わらずである。
 しかし、いかに壊れていようとネギ達は戦う者として壊れたわけではない。
 今までの無謀な攻防の中でも、ネギ達はしっかりと自分たちの限界を見極めていたのだ。
 そう、自分たちの攻撃ではどうやってもラカンを打ち倒すことはできないということ。そして同時に、ラカンの攻撃を自分達は耐えられるということに気づいたのだ。
 となれば、どこかのエセ紳士が実行したようにチクチクとひたすら削りあう地味な戦いに持ち込めば勝機は見えるのだが、あいにくと戦場に立つのは西条という名のエセ紳士でもなく、卑怯上等の美神でもない。
 ここにいるのはあくまでも生き残ることに一生懸命な、ある意味とてつもなく純粋な少年二人なのだ。
 そして、少年達は今までの生活と戦いの中でキチンと学んでいた。自分達に敵を打ち倒す力がないのなら、他所から持ってくればいいのだと。


「いくよ小太郎君!」

「おお!」


 二人が思い浮かべるのは自身が体験した最凶の存在の最強の攻撃。
 その攻撃を完璧に再現することはできないが――再現すると命が危ない――それでも極限まで近付けることは可能だ。
 二人は互いにアイコンタクトをかわし、その一瞬の交差でお互いの役目を把握する。
 そして次の瞬間、小太郎はただ一人でラカンへと突貫した。
 この段階でラカンはネギ達がなにか大技を仕掛けて来ることを予想していた。しかし、ラカンはあえてその思惑に乗ることにする。
 まあ、もともと真っ向勝負が大好物の上に、細かいことは壁にぶつかってからも考えず、とりあえずぶち壊してから前に進む男だ。それ故に残されたネギは放っておき、まず小太郎をどうにかしようと動きだす。
 

「ま、見え見えの足止めだが、受けて立ってやろーか」

「舐めるんやない! オッサンの攻撃なんざ痛くも痒くもないわー!」


 小太郎はただ無心に、一筋の光の矢の如くラカンへと向かっていく。
 そのスピードはまさに目にもとまらぬスピードであり、通常の瞬動術で出せる限界速度すらあっさり凌駕する。
 ラカンは小太郎の予想外のスピードに一瞬小太郎の姿を見失い、決定的な隙を見せてしまう。そして、小太郎はその隙を逃すほど愚かではなかった。


「喰らえやぁぁー!」
 

 ラカンが小太郎を視界から外したのはほんの一瞬だった。しかし、そのほんの一瞬の間に小太郎は咆哮と共に光の如くのスピードで距離を詰め、勢いもそのままにラカンへ体ごと体当たりを敢行するのであった。
 ここで余談ではあるが、なぜ小太郎がこれほどのスピードを身につけられたのかを説明しよう。
 もともと小太郎は狗族のハーフ故に身体能力も高く、才能もあったのも確かだが、その最大の要因は横島達との毎朝の散歩を基礎に、タマモのハンマーから逃れるために文字通り命を賭けて会得したスピードだったりする。
 ただし、その努力が報われたかと問われれば、ドラクエのボス戦と同じ結果であったどだけ言わせてもらおう。
 さて、ここで話を戻して小太郎の体当たりを食らったラカンだが、彼は直撃を食らいながらもなお笑っていた。


「ハハハ! いい攻撃だ、せめてもの褒美で20%。20%ほど本気で闘ってやろう」

「俺を舐めるんやない! というか、それは負けフラグやでー!」


 小太郎は再び吠えると、完全に足を止めたラカンと壮絶な打撃戦を展開していく。
 その過程で幾度となくラカンの壮絶なパンチが小太郎に直撃しているが、小太郎は一歩も下がることなく、むしろ狂ったように笑いながら互角の乱打戦を続ける。
 その打撃戦のあまりの凄まじさと迫力、そして若き少年が大戦の英雄と互角の戦いを繰り広げる事実に、いつしか観客達はネギの存在も忘れて熱狂し、ラカンもまた目の前のドツキ合に熱中してネギの存在を忘れていった。
 そして、その瞬間こそがネギの待ち望んだ時であった。


「ウラウラウラウラー!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ー!」


 ラカンと小太郎が壮絶なラッシュ比べをする中、ラカンの注意が小太郎に集中したのを見計らい、ネギは誰にも気づかれることなく静かに空中へと飛び上がる。
 そして、はるか上空8000mまで上昇したネギは、その両の目で豆粒以下の大きさとなった闘技場の中のラカンを見据えると、静かに、そして激しく回転しながら大地へ向けて落下し始めた。
 大空の彼方から自由落下を続けるネギ、その目的は自らの肉体を弾丸と化し、その自らの質量と落下エネルギーをラカンにぶち当てることである。
 ネギが実行しようとしている攻撃、これは当然ながらネギが幾度となく経験した大気圏突入からヒントを得た攻撃方法だ。
 しかし、普段の突入と違って高度が足りないため、本来の打撃力は得られないのだが、ネギはこれに弾丸のようにジャイロ回転を加えることによってその不足を補おうとしたのだ。
 高度5000m、4000m、時間の経過とともに加速しながら迫る大地。眼下では小太郎とラカンが壮絶な打撃戦を繰り広げ、誰も自分を見ていない。
 これは明らかなるチャンス。小太郎が文字通り体を張って作り出した千載一遇のチャンス。このチャンスにおけるネギの役目はこのまま自らを誘導し、ラカンへと着弾させることのみだ。
 しかし、この時ネギは迫りくる大地を見つめながら何かが足りないと思いにとらわれていた。
 現在のネギは速度、回転数ともに自身の出せる限界値を叩き出し、擬似的な大気圏突入の状況を作り出している。しかし、まだ足りない、ラカンを打ち倒すためにはまだ何か足りないのだ。
 ネギは自身の心を襲う不安を無理やり押さえつけ、ラカンへと照準を合わせ続ける。だが、ラカンに近づけば近づくほど不安は大きくなるばかりであった。
 そしてネギが上空1000mを切った時、小太郎に集中していたラカンが動物的勘によってネギの存在に気づいた。


「ん? あれは……さすがにヤバイか」

「ちっ、気づいたか。けど、邪魔はさせへんで!」

「あいにくといくら俺でもアレの直撃を食らったらヤバそうなんでな。まあ、受けて立ってやってもいいんだが、今回は妨害させてもらうぜ!」

「させるかぁぁー!」


 炎を纏いながら落下するネギに気づいたラカンは、いざ迎撃せんとばかりに攻撃の矛先をネギに向ける。当然、空中で高速落下中のネギはそれを回避することは不可能だ。
 このままではネギが危ない。そう感じた小太郎はラカンの攻撃を阻止するために無謀な突撃を敢行し、内懐に潜り込もうとする。だが、百戦錬磨のラカンは小太郎の行動を完全に先読みし、一撃でもって小太郎を沈黙させようとカウンター放った。


「これを……待ってたんや!」 


 だが、このカウンターこそが小太郎の待ち望んだものであったのだ。
 小太郎はラカンの攻撃を前に、ニヤリと笑い。むしろその強大な拳へ自分から向かっていく。
 そして、ラカンの拳が小太郎の顔面を捉えた瞬間、ラカンの脇腹に添えられた小太郎の拳が爆発したのだった。


「ぐはっ! こ、これは……」


 突如としてラカンの脇腹を襲った衝撃。そのあまりの威力にラカンは呼吸を止め、思わず膝を大地につける。
 そして、ラカンの攻撃の直撃を食らったはずの小太郎は傷一つない状態でラカンを見下ろしていた。


「自分の攻撃をそのまま喰らった味はどないや? タマモ姉ちゃんの打撃を散々喰らって来た俺は、ある程度の打撃なら自由に受け流し、必要あればそっくりそのまま返すことができるようになったんや!」


 小太郎がラカンに放った攻撃。それは小太郎がタマモとの生活によって身につけ、涙なしでは語れぬ生き残るための匠の技であった。
 世界中のどんな都市よりも平和で、そして同時に世界中のどんな紛争地帯より危険で死と隣り合わせの都市、麻帆良。
 そこで生活していた小太郎は突発的に襲う災害から少しでも命を守るために、究極の受けを身につけていたのだ。
 元来、小太郎の耐久力はネギに一歩及ばず、横島をわずかに凌駕する階梯にまで及んでいるのだが、それでも麻帆良で遭遇する災害は命にかかわる。
 そのため、小太郎は打撃エネルギーを極限まで受け流す技術を文字通り体を張って会得し、ついには自身に加えられた打撃をそのまま相手に返すという反則技まで身につけたのである。
 なお、これほどの技術を会得してなお、災害遭遇地におけるダメージの減衰率は20%を超えていない。げに恐ろしきは麻帆良の頂点に君臨する最凶の天災、いや鬼姫である。それとも、この場合はむしろ20%も減衰できる小太郎をほめるべきであろうか。
 ともあれ、小太郎は自らの切り札をここで切り、ラカンに膝をつかせることに成功した小太郎は静かに空を見上げ、ダメージによって動けなくなったラカンにとどめを刺すべく落下中のネギに視線を移す。


「さあネギ! 今こそトドメや!」


 空を見上げれば天空より両腕を十字にクロスさせ、ジャイロ回転をしながら落下するネギが視界に入る。
 そして、自分達がいつも味わっている大気圏突入の威力をもってすれば、いかなラカンといえども確実に滅することができるという確信が小太郎にはあった。
 しかし、小太郎は気づいた。今まさに落下するネギの瞳には明らかに不安の色が見えることに。そして、同時に落下するネギのスピードが普段の大気圏突入より遅いという事実に気づいたのだ。
 小太郎とネギはただ静かに視線を合わせ、そしてたったそれだけでお互いに意思を交わす。これはまさに同じ柱で宇宙に飛び、同じハンマーで大地にめり込んできた彼らだからこそできる芸当であろう。
 そして、小太郎とネギはお互いに聞こえるはずのない声で静かにつぶやいた。


「そっか……ホンマにええんやな」

「うん、僕達がラカンさんに勝てるにはこうするほかはないよ」


 小太郎はここで胸元にしまい込んだ宝物、横島から譲り受けた文珠を取り出す。
 その文珠は小太郎が扱いに慣れてきたこともあり、無地となっているが故に小太郎の思い描く通りに自由な文字が入るはずだ。
 そして、小太郎は文珠に入れるべき文字と、文字に与えるイメージを思い浮かべると落下してくるネギに向かって飛びあがったのであった。
 大空より空気を切り裂き、炎を纏いながら落下するネギ。
 大地をえぐり、天高く舞い上がる小太郎。
 二人はその目に炎と、絶対に生き残る決死の思いと言う矛盾を胸に秘め、今ここに一つとなった。
 小太郎は落下するネギの足に自らの足を合わせ、落下エネルギーに自らの質量をプラスする。
 だが、この程度でどうにかなるほどラカンは甘くはない。
 ではどうするのか、その答えは小太郎がネギと合体した瞬間に発動させた文珠がすべてのカギとなる。
 小太郎はネギと合体した瞬間、文珠に『槌』と込めたのである。
 そしてその瞬間、文珠は込められた思いと力を完全に再現し、その姿を顕現させたのであった。


「んな!」


 観客席からは横島をはじめとして、すべての人間が驚愕し、どよめきの声を上げる。
 彼らはその目で見た。どこからともなく空中に現れた、金色に輝く巨大なハンマーがネギ達を打ちのめすのを。
 そして、ハンマーによって打ちのめされたネギ達はその打撃によって加速し、一筋の光となる。


「さあ、喰らえや!」

「これが僕達の必殺技!」

「「ディープ・インパクトー!」」


 二人の落下エネルギーに加え、ハンマーによる打撃エネルギーをプラスした必殺の一撃は一直線にラカンへと吸い込まれる。
 そして、ラカンはその攻撃をよけることもできずにまともに喰らうことになるのであった。







 新都オスティアを揺るがした一大格闘大会は終わりを告げた。
 

「ジャーック! しっかりしろー!」


 観客達の瞠目を集めたこの試合の勝者はネギと小太郎。
 彼らのまさに捨て身の攻撃はいかにラカンと言えども耐えられるはずもなく、強大な敵は大地に崩れ落ちた。


「おい、オッサンしっかりしろ!」

「こ、これは……」

「あの時と同じ……いえ、もっと酷いわね」


 もちろん、勝者たるネギ達も無傷ではない。その体は満身創痍であり、ケガの無い箇所などどこにもないが、それでも彼らの顔は勝利に酔いしれている。


「やった……僕たちは生き残ったんだ!」

「これで……これで明日の朝日を拝めるでー!」


 そして敗者たるラカンはと言えば――


「二人ともー! あんた達高畑先生つづいてラカンさんにまでなんてことすんのよー!」


 ――哀れ、ネギと小太郎の合体必殺技『ディープ・インパクト』を股間に直撃され、見る影もなく泡を吹いて気絶していた。
 そんな彼の枕もとでは死神が愛用の鎌で剃髪を完了させたうえに、『無精(むじょう)』という法名をつけられ、もはやラカンは上下共に見るも無残な姿となっている。
 そしてこの大会より後、ネギの名は『オーブクラッシャー』という二つ名とともに魔法界全土に轟き、『葱来来』と聞けば泣く子も股間を抑えて黙るほど恐怖の代名詞となり、あらゆる意味で師匠のエヴァを超えたのであった。


 追記ではあるが大会の後、ラカンは人知れず表舞台から消えようとしたところを横島に救われ、横島は『英雄を救った英雄』としてヘラス帝国第三皇女直々に騎士叙勲受ける事となるが、横島はこれを辞退することとなる。そして、騎士叙勲を辞退したことによってその謙虚さも相まって横島の名はサウザンドマスターに匹敵する英雄として、魔法界全土に知れ渡ることとなるのであった。
 なお、横島の騎士叙勲辞退の真相だが、叙勲中にテオドラをナンパするという離れ業を披露したため、タマモと刹那、そして裏返った木乃香によって別室に連れ去られ、そのまま戻ってこなかったというのが真相だったりする。
 そして、横島によって救われたラカンはといえば、とある酒場で合流した高畑とくだを巻いていた。


「ははは! 無精さん、これで僕達は仲間ですよ……ええ、仲間なんです」

「やかましい、その名で俺を呼ぶんじゃねえ! ちくしょう、ちくしょう……」

「気を落とさないでください……ところで、僕は昨日夢を見たんです」

「夢だと?」

「ええ、かつての仲間が一堂に集い、共に……共に『無』の一文字を背負う夢を……」

「……ナギ、お前の息子はひょっとして俺達の天敵なのかもしれん」


 この時、ラカンの脳裏にはかつての紅き翼のメンバー達が入道、または新宿2丁目あたりに就職する悪夢を見る。
 そして、定かならぬ悪夢の未来へ不安を覚える彼らの図上では、死神がどでかい垂れ幕に達筆な文字で『昨日の悪夢は今日の現実 今日の夢は明日の絶望 明日へと続く悪夢へ歩一歩』と書き綴っていたのだった。
 彼らの未来に幸有らん事を。


end
    


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