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「京都ー、京都ー」


 JRのアナウンスが停車した車両に響き渡る。


「ねえ、カモ君……」

「なんですかい兄貴……」


 呆然とつぶやくネギの目に映るのは、京都の晴れ渡る空、白い雲。そして自分達を遠巻きにして見守る生徒達。


「ようやく京都に着いたね……」

「着きやしたね……」


 ネギとカモは京都に到着した喜びをかみしめていた。

 ここ、京都にはネギの父、サウザンドマスターがすごした地でもある。ここにならきっと行方不明の父の手が手がかりがあることだろう。
 ネギは目に涙を浮かべながら、ようやくたどり着いた京都の地に思いをはせていた……



「僕は生きてるんだね」

「俺っちも生きてやすぜい」




 ……わけではないようだ。
 では、なぜネギ達が涙を浮かべながら京都に到着したことを喜んでいるかと言うと、これもちゃんとした理由がる。

 それは現在のネギとカモの状態を見れば一目瞭然だろう。



「「ああ、生きてるってすばらしい!」」



 ネギとカモは、新幹線の外壁に荒縄でくくりつけられた状態で、今、命の大切さ、尊さ、そしてなによりタマモへの恐怖をその身に刻み込むのだった。



 そんなネギ達を見上げながら、荷物を片手にアスナが隣にいるタマモに声をかける。


「ねえ、タマモちゃん……」

「なに? アスナ」

「ちょっとやり過ぎたんじゃない」

「大丈夫よ、死なない程度の手加減はお手の物よ」

「いや、ネギのことじゃなくてね……最近ネギは怪我しても自力で治してるっぽいし」


 アスナはなにかを諦めたかのようなため息をつく。


「それじゃなに?」

「こっちのこと……」


 アスナはタマモの後ろを指差した。

 タマモがアスナが指差すほうを見ると、そこには……






「うそや……あの時のことは夢や……タマモちゃん……横島さん……ああ! アスナ、逃げんといてーな。うちをおいてかんといてー!」


 タマモの折檻を目撃した木乃香が、封印したはずのトラウマを復活させていた。


「お嬢様ー!!」


 京都駅にネギとカモのうつろな笑い声と、刹那の悲鳴が響き渡った。


第11話 「動乱への前奏曲」




 清水寺


「京都ー!!!!」

「これが噂の飛び降りるアレかー」

「誰か飛び降りれ!!」


 風香のセリフの後に長瀬が挑戦しようとしたが、あやかの一喝により場はとりあえず静まった。
 ともかく、3−Aメンバーは晴れ渡る空の下、京都を心から堪能していた。


「ねー夕映ー、他に面白いところないかなー?」

「面白いとこですか? それでしたらこちらに縁結びの神社が」


 夕映の言葉に反応した3−Aの面々は、まるで先を争うように縁結びの神社に向かった。

 夕映が案内した神社には、恋の成就を占う石が道のど真ん中にあり、夕映の話だと目をつぶって20m向こうの石にたどり着いたら、恋がかなうらしい。
 その話を聞いたあやか、まき絵、のどかが挑戦しようとしていた。
 ちなみに、彼女たちの目標は言うまでもなくネギである。


「ねえ、タマモちゃんはやらないの?」


 そんな3人を遠巻きに見つめていたタマモに、笑みを浮かべた桜子が話しかけてきた。


「私はこういうのはちょっとねー、それにね……」

「それに?」

「恋愛は自分の手で呼び込んでこそよ! 私のプライドにかけて振り向かせてみせるわ!」


 タマモは天に向かって拳を突き出すように声を張り上げた。
 前世の記憶はなくとも、さすがはかつて傾国の美女とよばれた妖狐の転生である。


「あはは凄い自信だねー……でも、本当に興味無いの?」

「う……」


 タマモはややうつむいて押し黙る。
 やはりタマモも女の子、口では威勢のいいことを言いながらも、本心では気になるのだろう。


「ここって、かなりご利益あるみたいだしー。それにやっても損は無いんじゃない? というわけでレッツゴー!」


 桜子は頬を染めながら俯いているタマモの腕を取り、そのままタマモを引っ張りながらあやかの元へと連れて行く。


「みんなー! タマモちゃんも参加するってー!」

「ちょ、ちょっと……」


 タマモは形ばかりの抵抗をするが、やはり本当はやってみたかったのだろうか、そのまま桜子に手を引かれてあやかの元へとたどり着いた。


「タマモさん、あなたも参加するんですか?」

「ん……まあ、なりゆきでね。あ、安心して、狙いはネギ先生じゃないから」


 あやかは一瞬タマモまでがネギ争奪戦に参戦するのかと肝を冷やしたが、タマモが否定したことにより密かに安堵する。


「じゃあ、やっぱりタマモちゃんはお兄さん狙いだね」

「ええそうよ……ってなんで知ってるのよ!」


 タマモはさも意外そうにまき絵に詰め寄る。
 どうやら、自分が横島を好きなことがバレていないと思っていたようである。


「なんで知ってるって……バレバレだよ。ほら、この前学校でお兄さんに膝枕してもらってたし……」

「あのー、タマモさんのお家で歓迎パーティーやった時にも、お兄さんにキキキキ、キスしてその後に膝枕を……」

「この前アスナさん達とカラオケに行った時は、膝枕に加えて耳掻きもしていましたし。しかもすごく嬉しそうに」

「う……」


 これだけ目撃情報がそろっている以上、もはやタマモは全面降伏しかないであろう。


「あーもう、そうよ! 以前言ってた気になるヤツ、ていうか好きなヤツは横島よ!」


 タマモの顔はトマトよりも赤くなっており、あやか達は、普段クールなタマモが決して見せない姿を興味深げに見つめていた。


「とととともかく、早くやっちゃいましょ! やるからには負けないわよー」


 タマモはまだ動揺が解けてないのか、どもりながらスタート位置につく。
 あやか達もそんなタマモにあわせ、スタート位置につくのだった。


「じゃあいくよー、スタート!」


 桜子の号令で、目を閉じた4人は一斉に目標の石に向けて歩き出す。

 あやかとまき絵、そしてタマモは順調に歩を進め、一進一退を繰り広げている。一方、のどかは開始早々に明後日のほうに向かって歩き出し、はやくも首位戦線から脱落していた。

 本来のタマモなら、たとえ目をつぶっていても余裕でゴールへたどり着くことが出来るのだが、やはりこういった占いで自分の能力としての超感覚を使うのに抵抗があるのか、それを封印しているようである。
 だが、今回ばかりはそれが完全に仇となった。


「私は負けませんわ、行きます! 『雪広あやか流 恋の心眼術』」

「あ、いんちょうずるい! 目を開けてるでしょうー!」

「ほほほ、とんでもございません。真にネギ先生を愛するこの私には、たとえ目を閉じていてもゴールがはっきりと見えているのです!」


 タマモは隣にいたあやか達が急にスピードを上げたのを確認すると、その足音を頼りに彼女たちを追いかける。


「委員長甘い! 方向が分かった以上後は追いつくだけよ!」


 タマモはそう言うと、走るスピードを一気に上げ、やがてあやか達に追いつく。

 そして今まさにタマモがあやかを追い抜き、ゴールにたどり着こうとした瞬間、その事件が起こった。




 ズボ!





 タマモが踏み出した足が、まるで吸い込まれるように地面に埋まっていく。
 そしてその足に引きずられるように、体が地面の中へと埋まるのだった。

 そう、それは所謂落とし穴と呼ばれるものだった。


「「「キャー!!」」」


 一塊になっていたタマモ達三人は、もつれ合うように落とし穴の中に落ちていく。


「あ、あいたたた。いったいなんなのよこれは……」

「えへ、ずるして目を開けたからバチが当たったのかな?」

「こんな人為的なバチが有ってたまるもんですかー!」


 落とし穴に落ちた三人は、互いに顔を見合わせながら、お互いの無事を確かめていた。


「ともかく、早く出るわよ……ってアレ?」



 ヌチャ……




 この時、立ち上がろうと地面に手をついたタマモに、ひんやりとしつつもヌルヌルした何かが当たった。




「いやぁぁぁぁぁぁー!」



 落とし穴に落ちたタマモ達を心配したアスナが近寄ると、絹を引き裂くようなまき絵の悲鳴が響き渡った。



「ちょ! いんちょ達どうしたの?」

「いやー、またカエルー!」

「あ、アスナさん早く助けてくださいー!」


 タマモ達が落ちた穴から一匹、また一匹と大量にカエルが湧き出してくる。
 おそらく落とし穴の中はカエルで一杯だろう。


「ヌルヌルいやー!」


 その後、アスナやクーフェ、龍宮の手によりカエルを撃退し、穴からなんとか這い出してきたあやかとまき絵を介抱する。


「あれ、タマモちゃんは?」


 この時、アスナはタマモがいないことに気付いた。


「ねえ、誰かタマモちゃん見なかった?」

「いや、見なかったが……」

「そういえばさっき助けたのはいんちょとまき絵だけだったアル」

「と、ということは……」


 アスナはこの後の出来事を正確に予測しながら、恐る恐る穴の中を覗き込んだ。











「キャー! タマモちゃんが穴の中で灰になってるー!」





「だ、誰かカドルトを早く唱えるですー!」

「お、落ち着いて夕映、それよりもカント寺院のほうが成功率が……」


 どうやら夕映と早乙女は、とあるRPGを良く知っているようである。

 一方、ネギは灰となったタマモに慌てて駆け寄り、いつの間にか手にした洗面器に灰を詰め込み始める。


「みなさん早くこの洗面器に灰を入れてください。そのまま灰を溶かして川に流さなきゃ」

「ネギー! あんたタマモちゃんにトドメでもさすつもりなのー!」


 ちなみにネギがやろうとしている事は、吸血鬼へのトドメの刺し方である。


「あ、灰が風に飛ばされてますわ!」

「追うのよ、絶対に見失っちゃダメー!」

「ラジャーっす!」


 穏やかな京都の昼下がり、そのとある平和な神社の一角でキツネの少女が今まさに命の瀬戸際に立たされていた。




 カエル騒動が一段落すると、次に「音羽の滝」へ向かった一行だが、その足並みは一様に遅く、どこか疲れたような感じだった。
 だが、それでも恋に恋する年頃の彼女たちは、予想通り縁結びの水に殺到する。

 そこに、どういう手段を使ったのか、奇跡的に消失せずに復活したタマモが何かに気付いた。


「あれ? この水……お酒の臭いがする」


 タマモの言葉を聴いたネギがあわてて、皆が飲むのを止めたが時既に遅く、何人か酔いつぶれてしまっていた。中には顔を赤くする程度の者もいたが、それは何度か行った宴会のせいで耐性がついたおかげであろう。
 ちなみにあやかはやはりつぶれていた。現在、彼女と酒との対決は3戦全敗である。


「なんでこんな所にお酒が、これも西の妨害?」

「しかし兄貴、西の妨害にしてはセコイというか……」

「でも、さっきのカエル騒動はかなり危なかったよ、新幹線の時は僕たちの命も危なかったし」

「ねえ、西の妨害ってどういうこと?」


 ネギとカモが話していると、その話を聞きつけたのか、タマモとアスナが話に加わってきた。
 ネギは事情を説明して助力を頼もうとしたが、タマモはネギの話を聞くと顔をうつむかせて肩を震わせ始める。


「そう、そうなのね……さっきまでのくだらない出来事は、関西呪術協会とやらの妨害だったのね」

「おそらく」

「よ、よくもこの私に恥を……許さない! ネギ先生、私も手伝うわ。やつ等にこの世の地獄を味合わせてやる!!」


 タマモは瞳に炎を映し出してネギの両手をつかんだ。
 よほどカエルに脅え、危うく灰化→消失コンボをくらいかけたのがプライドに触ったのだろう。




 ネギは炎を背にして叫ぶタマモを、冷や汗を浮かべながら見つめていた。


「……アスナさん」

「なによ」

「なんかこう、今なら核兵器のボタンを押した人の気持ちがわかるような気がします」

「核って……まあ、言いえて妙ね。ともかく関西呪術協会っていうのが終わったことは確かね」

「僕達、ひょっとして東と西の和解じゃなくて、最終戦争の引き金を引いちゃったかも……」

「どっちにしても、こうなったらもう誰にも止められないわ、私たちに出来ることは、せめて京都が火の海にならないように神に祈るしかないわね」

「そこの神社で祈っときましょうか」


 ネギはそう言うと、アスナを引き連れて近くにあった賽銭箱の前に立つ。


「そうね……ところでネギ」

「なんです?」

「ちゃんとそこの神社の神に祈りなさいよ、アンタの神はダメ」

「い、いやだなー、当たり前じゃないですか。あはははは」


 どうやら某神に祈る気満々であったようだ。

 ネギは誤魔化すように笑いながら賽銭箱に入れるためのお金を取り出す。


「アスナさん、これっていくらぐらいが相場なんです?」

「うーん人によって色々だけど、普通は10円とか5円とかかな? 願いによっては多く入れる人もいるみたいだけど」

「そうなんですか」


 ネギはアスナの答えを聞くと、無言で財布の中から一枚の紙幣を取り出す。
 その紙幣には明治の偉大な思想家の肖像が描かれていた。


「ちょ! ネギ、本気なの!」

「本気です、タマモさんを押さえようと思ったらせめてこれぐらいは……」


 ネギは呆然とするアスナの目の前で、手にした1万円札を賽銭箱に投函した。



 その時、一陣の風が吹いた。

 その風はネギが投函した一万円を風に舞わし、そしてまるでつき返すかのようにネギの胸ポケットに紙幣を押し込んでいった。


「……えっと、これっていったい……」

「も、もしかしてつき返されたということかしら? それとも足りないとか?」

「じゃ、じゃあいっそ財布ごと!」


 ネギはそう言うと、財布を丸ごと投函しようと手に取った。




<いくら積まれてもさすがに無理ですねー、まあ諦めてください>


 その時、ネギとアスナの脳裏に妙に神っぽい何かの声が響き渡った。


「「へ?」」


 二人は互いに顔を見合わせて間抜けな声を上げる。


「……アスナさん。今なにか聞こえました?」

「あ、あははは。き、気のせいよ。うん、きっと……たぶん」

「そうですよね、気のせいですよね。あはははは」

「「あははははははは」」


 ネギとアスナの乾いた笑い声が京都の空に響き渡るのだった。








 京都嵐山の旅館にて、ネギは酔っ払った生徒を部屋に送り出した後、ようやく風呂に入ることができた。


「ふわー、これが露天風呂ってやつかー。気持ちいいなー」

「おうよ、これで桜咲刹那の件がなければなー」

「でも刹那さんって本当にスパイなのかなー」

「名簿にも京都って書いてあったし、事件があればいつもいたから怪しいことこの上ないぜ、兄貴」

「でも、それを言うと事件中はクラスのほとんどがいたけど」

「あ……」

「ふう、センス・イービルでも使えたらなー」

「なんのことですかい兄貴」

「いや、こっちのこと……ん? 誰か来たのかな」


 ネギとカモが刹那のことについて話していると、誰かが入ってきたようだ。


「ねえ、刹那。今回のこと学園長からなにか聞いてる?」

「ええ、ネギ先生の親書について聞いています。私としてはタマモさんが知らなかったことが意外でしたが」


 温泉に入ってきた人物とは、刹那とタマモのようだ。
 どうやらこの温泉は混浴の様である。


「ええ! なんで刹那さんとタマモさんが!!」

「あ、兄貴、はやく隠れないと」


 ネギとカモはすばやく岩場の影に身を潜めたが、うかつに動くと見つかってしまうため身動きができなくなってしまった。
 そんなネギにタマモと刹那の会話が聞こえてきた。


「うーん横島もなにも言ってなかったからねー、特に依頼もなかったみたいだし」

「そうだったんですか、でもタマモさんが協力してもらえるなら心強いです。お嬢様の件もありますし」

「お嬢様? そういえば駅でも木乃香のことをお嬢様って呼んでたけど……なにかあるの?」

「それは……」

「まって、誰かいる!」


 刹那がタマモに答えようとした時、タマモが何かを感じたのか岩場の影の方に視線を向けた。


「ひい、見つかった!」

「ああああああ兄貴どうしましょう」

「どどどどうしよう、カモ君、このままだと……」


 ネギとカモの脳裏には、タマモによって逆さ磔にされ、火あぶりにされるシーンが明確に浮かんだ。


「タマモさん、どこにいます?」

「巧妙に隠れてるけど、私はごまかされないわよ。これは術者のにおい……そこよ! 岩場の影の奥!! 出てきなさい!!!」


 タマモの声と同時に刹那が夕凪を手にしてネギ達の方へ走り出した。


「ご、ごめんなさ……って、あれ?」


 ネギが向かってきた刹那に謝ろうとしたが、刹那はネギのそばを素通りし、奥の茂みに向かっていった。


「出て来い! 神鳴流奥義 斬岩剣!」


 刹那が放った奥義は茂みを切り裂いた。
 その時確かに茂みに人影のようなものがいたが、間一髪で刹那の剣をかわしたようだ。


「逃がすか! くらえ!!」


 タマモが逃げ出そうとする人影に追撃の狐火を放つ、だがこれも距離があったため、かわされたようだった。


「逃がさん!」

「まって! 深追いは危険よ」


 刹那がさらなる追撃を行おうとしたが、タマモがそれをとめる。
 敵の陽動の可能性もあり、今無茶な行動は危険すぎるためだ。

 タマモが今後の思案をしていると、追撃をあきらめた刹那が帰ってきた。


「今のが西の刺客といったところかしら?」

「おそらく……でも、よく気づきましたね」

「私はその手の感覚が鋭いのよ……例えばほら、そこの岩陰に、さっきから逃げ出そうとしてるエロオコジョと、ネギ先生もいるわよ。まあ、硫黄の匂いがきつくてさっき気づいたんだけどね」

「え? ネギ先生」


 刹那があわててその方向を見ると、そこにはちょうど岩陰から身を乗り出したネギとカモがいた。


「ああああああの刹那さんにタマモさん、別に僕は覗いてたわけじゃ……ここは混浴だって知らなかったんです」

「わかってるわよ、横島じゃあるまいしネギ先生はそんなことする子じゃないって」

「ほ、本当ですか。よかったー誤解されてなくて」


 ネギは覗き扱いされずにすんだことで、安心したように湯船にへたりこんだ。
 だが、それは早計だった。



「でもね……」

「「はい?」」


 ネギとカモはタマモの口調になにか不吉なものを感じる。


「たとえ悪意がなくとも、まさか乙女の柔肌を見て無事でいられるなんて思ってないわよね……」

「あ、あの、タマモさん。私は気にしてませんから……ネギ先生は子供ですし」


 刹那はこの後に展開されることを正確に予測した。
 そのため、なんとかタマモを思いとどまらせようと必死だ。


「だめよ、刹那。この子を横島のようにしないためにも。たとえ不可抗力でも乙女の柔肌を見たら、それは万死に値するということを叩き込まないと……それになにより!」

「なにより?」

「私の裸を見ていいのは一人だけよ!!!」


 刹那はタマモの気迫に説得は無駄だと悟る。
 残す手立てはせめてネギが無事でいられるように神に祈るだけだった。















<それは無理っちゅーもんや>


「へ?」

「さて、ネギ先生、それにカモ……想像してごらんなさい、この世の地獄というものを」

「「ひいいい逆さ磔に火あぶりはいやー!!」」

「いや、ちょっとまってくださいタマモさん。いまなにか変な声が……」

「そんなものは天国よ!」






「「うぎゃあああああああああああ」」


 ひそやかな京都の夜、そこにネギとオコジョの悲鳴がこだまするのであった。
 はたして修学旅行期間中、ネギが五体満足で麻帆良に帰る事が出来るのか、それは誰にもわからない。





第11話   end



 その人影は部屋に戻ると、疲れた足取りでシャワー室へむかった。


「さっきまでのドタバタのせいでろくに風呂にはいれなかったな……もうシャワーでいいか」


 そう言うとシャワーのコックをひねる。
 シャワーの流れる音と、あたりに湯気が立ち込める。同時に、シャワーの当たる心地よい感触が疲れを癒していく。


「ふう、たまんないな」


 シャワーの水滴が若く瑞々しい小麦色の肌の上を滑り落ち、排水口に流れていく。
 湯気の影から覗くその姿は引き締まり、まったく無駄のない究極の美を表していた。

 やがてひとしきりシャワーを浴びて満足したのか、シャワーを止め、脇においてあったタオルで体を拭き始めた。
 瑞々しく水分を含んだ髪を、引き締まった手足を。そして胸のふくらみがちょっぴりたりないスマートな体を。

 体を拭き終わるとタオルを体に巻き、窓際にたって外の風景を見る。そして冷蔵庫から失敬した牛乳を口に含み飲み込む、少し口の端からこぼれる姿はひどく淫靡であった。



















「ぷはー! やっぱ風呂上りの牛乳は最高やなー!」


 横島は、普段タマモがいるためできない裸同然の格好で家の中をうろついていた。

 横島はつかの間の一人暮らしを満喫しているようだ。



 じりりりりりりり


 突如横島の家の電話が鳴り響く、横島はあわてず牛乳を飲み干した後、声をかけた。







「おーい死神ー! 電話もってきてくれー!!」



 横島の声を聞いて死神が電話を持ってくる。どうやら昼間の死闘の際になんらかの友情が芽生えたようだ。

 横島の悲鳴が聞こえぬ珍しい麻帆良の夜がおとずれようとしてた。







用語解説

「だ、誰かカドルトを早く唱えるですー!」

 ここで言うカドルトとは、現在まで連綿と続くRPGの歴史の原点を築いた名作『ウィザードリィ』シーリーズの#1〜#5まで出てくる呪文のこと。
 その呪文の効果は、死者の蘇生で、僧侶系呪文の最高位と呼んでもいいだろう。
 ただし、この呪文には成功率が設定されており、死亡した段階でこの呪文を使い、失敗すると灰化する。
 さらにこの灰化した状態からの復活も可能だが、ここで失敗すると、もはや蘇生不可能である消失という状態になるため、使うのにかなりの勇気が必要である。(早い話がキャラデータが消えます)

 ちなみに作者は#5においてLV98の忍者をこれで喪失しており、立ち直るのにかなりの時間を費やしていた。




「それよりもカント寺院のほうが成功率が……」

 カント寺院とは『ウィザードリィ』シリーズで出てくるDQにおける教会のような施設である。
 ただし、DQシリーズと違うのは、これも復活するのに成功率が設定されており、前述の『カドルト』より成功率は高く設定されているが、その分金がかかる。

 ちなみに作者はここでもLV100オーバーの侍と、戦士を消失させており、この寺院の司祭に本気で殺意を抱いた記憶がある。




「ふう、センス・イービルでも使えたらなー」

 『センス・イービル』とはソードワールドの世界において、光の5大神の1柱『ファリス』に仕える司祭が使用する魔法である。
 この魔法は名前の通り、対象の悪意に反応する魔法であり、敵と味方を見分けるのに大変重宝する魔法である。
 この時の決め台詞としてはやはり『汝は邪悪なり』が定番であろう。

 もっとも、これの乱用はセッションを容易に崩壊しうるため、使用上の注意をよく読んで使用する必要がある。

 ちなみに作者は某リプレイと同じように、これによりセッションが崩壊した経験がある。

 
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