「なあ、茶々丸。昨日の私はいったいなんだったんだろうな……」
「マスター……」
ここは早朝のエヴァの家、テーブルには茶々丸謹製の朝食がこれでもかとテーブルにならべられている。
しかし、エヴァはその朝食に手をつけることもなく、ただぼうっとして天井を見上げている。
「昼間はあの男にさんざん引っ掻き回されて、夜は夜であの男を力を見極めてやろうと楽しみにしていたんだぞ、それなのに結果は……」
「マスターは見事に肩透かしをされました、期待が大きかっただけに残念です」
「まったくだ、そもそもあいつは本当に強いのか? なんか私も自信がなくなってきたぞ。というか本当にアイツは昨日の昼間、私を恐怖させたヤツと同一人物なのか?」
「しかし、横島さんの攻撃を回避する動きは達人の域でしたが? 特にあの両足を地につけた歩行法は、弾丸すら信じられない機動でかわしていました。あの動きで懐に飛び込まれれば脅威です」
「まあ、たしかにあの回避能力は認める。実際にこの前の私の魔法も全て回避してたしな……だが、アレはなんというかこう、人間の回避能力というか、関節の可動域を越えていなかったか?」
エヴァは昨夜の横島の戦いを思い出す。
昨夜横島が妖魔から逃げ出した時、その背後からは当然のごとく雨あられと言った感じで攻撃を加えられていたのだが、横島はそれをことごとく回避していた。
しかも茶々丸とエヴァを抱えながら、時には香港映画のワイヤーアクションのごとく重力を無視して飛び上がったり、 さらには上半身を90度以上スウェーバックさせながら走り続けるなど、非常識ここに極まれりという状況であった。
ちなみにこの時、エヴァは横島に米俵のごとく抱えられながら、彼を人間としてカテゴライズしていいものかと真剣に悩んだのはここだけの秘密である。
「わからん、ますますもってわからん。回避能力は一流どころか、人間の領域を超え、しかも本人は自分のことを霊能者だと言っている」
「彼が本当に霊能者だった場合、私のデータベースにあるTVとかに出ている霊能者とはかなりの差異が生じています」
「差異とは?」
「私の記録では、霊能者とは幽霊と呼ばれるものを見ることが出来、それを払う者のことを言います。もっとも、現在世間一般で言われる霊能者の大部分は詐欺まがいですので、戦闘能力は極めて低く一般人と大差ありません。ですから基本的に霊能者という存在は、私達のような魔法関連とは接触はないはずなのですが……」
茶々丸はここで言葉を切り、エヴァの瞳を見つめる。
そしてエヴァはその視線をうけ、茶々丸の言わんとすることを理解した。
「だが、ヤツは自分を霊能者と言いながらも裏の世界にいる」
「はい、実際彼の身体能力はかなりのものです、しかもデータベース上にあるどこの流派の動きも見られません。彼の動きはおそらく戦場で培ったものと推測されます、それも魔物との戦いの中で……」
「それは私にもわかる、だからこそ昨日はそれを見極めるチャンスだったのだが……実際にアイツがやったのは散々引っかき回して逃げ回り、挙句の果てにはトラップゾーンに引きずり込むだけだったな」
エヴァは知らない。
実は昨夜の横島が実力の真骨頂を見せていた。
横島はかつて美神徐霊事務所でのポジションは遊撃&囮である。
そのため、敵を自分の望みの場所へ誘導することは、横島のもっとも得意とすることだったのである。
ただし、それは美神から半ば強制され、自らの命をチップに手に入れた特技であったが、その事実はこの際エヴァ達には関係ない。
横島がひきつけ、美神がトドメを差す。
昨夜は美神のポジションがトラップに変わっただけである。
「結局期待するだけ期待して肩透かしを食った私は……」
エヴァは自嘲気味にうつむく。
そんなエヴァを元気付けようと茶々丸がエヴァに手をやろうとした時、先ほどから文字通り人形のように一言もしゃべらなかったチャチャゼロがポツリと漏らした。
「アホッテコトダナ」
ピキ!
エヴァの額に青筋が一つ生まれた。
「姉さん、それはあまりにもマスターに酷では? いくら本当のこととは言え」
グサ!
つづいて茶々丸の天然の刃がエヴァに突き刺さる。
「シカシ妹ヨ、我ガゴ主人トハ言エ、アレハ情ケナイゾ」
「確かにマスターは古くは
サウザンドマスターにフられ、
散々ストーキングした挙句に変な呪いをかけられました。そして現在は本意ではないとは言え
学園長の飼い犬に成り下がり、極めつけは
ネギ先生との魔力戦で敗北、加えてタマモさんとその兄に
吸血鬼になってより初の恐怖を感じるなど、情けないという言葉が生ぬるくなるくらいヘッポコ三昧ですが、それでも言いすぎです」
グサ グサ グサ グサ グサ!!
欠片の悪意も無い茶々丸の言葉の刃が次々にエヴァに突き刺さる。
「ムウ、ソレモソウカ。確カニ言イ過ギタ」
「まったくです、今後注意してください……というわけでマスター、姉さんはこの通り反省していますし、どうかお咎めは……どうなさいました、マスター?」
茶々丸は満足げに頷き、おそらくチャチャゼロの暴言に怒り狂っているであろう主に、姉の助命を願い出るため振り返る。
だが、その視線の先でエヴァはテーブルに突っ伏してピクピクとうごめいており、茶々丸は不思議そうに首を傾げるだけだった。
この時、茶々丸は自らの言葉がエヴァに大ダメージを与えていることに気付いていない。
なぜなら、彼女にはそういった悪意というものが欠片も無いからである。
一方、当のエヴァは、しばらくの間机の上に突っ伏していたが、やがて心配そうな茶々丸が手を伸ばすと、その手を打ち払って体を起こした。
この時、茶々丸は驚愕する。
なぜならこの時のエヴァは、まるで迷子になった子どものように両目に涙を溜めていたからであった。
「マスター?」
「ぐ……ぐ……」
「ぐ?」
エヴァは不思議そうに自分を見つめる従者達を睨みつけ、そして目に涙を溜めたまま叫んだ。
「グレてやるううううううー!」
エヴァは叫ぶと同時に椅子から飛び降り、外へ向かう扉を開け放って駆け出していった。
残された従者達はそんなエヴァを呆然と見詰めながらつぶやく。
「チョット意外ダッタナ……」
「ああ、マスター。グレるだなんて……もしかしてこれが反抗期というヤツでしょうか?」
「ダトシタラエラク遅イ反抗期ダナ」
「マスター……」
茶々丸は心配そうにエヴァが飛び出していった扉を見つめている。
やはり、彼女には悪意が無いのであろうか、その様は本当に傷ついた主の心配をしているようである。
「デ、時ニ妹ヨ……」
「なんでしょう姉さん」
「記録ハ?」
「動画、静止画共に最高画質で保存しています……やはりマスターは可愛い」
あえてもう一度言おう、彼女に悪意は無い。
あるのはただ『汝がなしたいようになすがよい』というネギの言葉だけであった。
第13話 「史上最大の作戦」
「ええー! 朝倉に魔法がばれたー!」
修学旅行二日目の夜、ホテルにはアスナの声が響き渡った。
前日タマモが敵を徹底的にいたぶった事により、精神レベルでの復活は早くても二日後とにらみ、アスナ達は二日目の修学旅行を堪能していたのだが、とんだ問題勃発である。
まあ、この場合ネギを責めるのは些か酷であろう、ただでさえでも親書を届けたり、さらに猿女の襲撃、とどめに生涯初めての告白を受けたのだから、その心理的負担はいかほどであろうか。
同時期にこんなに問題が重なれば、誰だって失敗の一つや二つやってしまうものだろう、これでネギを責めるようならその人物は鬼である。
「無様ね……」
どうやら鬼がいたようである。
ちなみにその鬼は金色の髪を九本にまとめた髪型をしていた。
「あうー!」
タマモの容赦ない言葉にネギは半泣き状態となっている。
「どうしましょう? このまま朝倉さんをほうっておいたら間違いなく全校にバレてしまいます」
刹那も特にいい手立てが無いのか、途方にくれているようだ。
「記憶操作の魔法を使うしかないんですけど、僕あれって苦手なんです」
「以前記憶じゃなくてパンツ消しちゃったもんね」
「ど、どういう状況だったんですか……」
「お願い、聞かないで……」
ネギの過去の失敗を思い出し、アスナは頭痛を抑えるように手を額に当てた。
「まったく、ここに横島ががいないのが本気で痛いわねー」
そんな中、タマモが悔しそうにつぶやいた。
「横島さんなら記憶操作できるんですか?」
「なんかものすごく意外な感じがするわねー」
タマモの発言に、刹那とアスナがさも意外そうにタマモに質問する。
すると、タマモは少しムとしたように眉間にしわを寄せ、右手の人差し指を立てて顔の前に出し、左手は腰に当てて諭すように反論した。
「横島を甘く見てもらっちゃ困るわ、あれでけっこう使えるヤツなんだから。それにいざという時なんか本当に頼りになるのよ」
「どっちにしても、今いなくちゃ意味ないですー。あうーどーしよー」
「「「切羽詰ってるわねー(ますねー)」」」
ネギの限界ギリギリな状況にタマモ、アスナ、刹那の感想が一致した。
「しょうがない、最後の手段よ」
「え、なにかいい手があるんですか?」
あまりにもアレなネギを見るに見かねてタマモが提案する。
「やっぱり前後の記憶を忘れてもらうしかないわね」
「でも、僕はそれ苦手なんですけど……」
「あ、いいわよ。私がやるから」
「タマモさんがですか?」
ネギ達はタマモの発言に楽しくない未来を予想する。
そしてそれは、実体験に基づくかなり確度の高い未来予想図でもあった。
「タマモちゃん、参考までに聞くけど具体的な手段は?」
アスナ後ろ頭に浮かんだでっかい汗を押し隠し、恐る恐るタマモにたずねる。
「美神直伝の対横島用フルコースを3%程度で抑えれば記憶を失うはずよ、たぶん…・・・その後の人格は保障できないけど。というわけで行って来るわね」
タマモはまるでなんでもないかのように笑顔をうかべ、これまたいつの間に手にしたのか『記憶抹殺82%』と書かれたハンマーを取り出す。
「「「行っちゃだめー!!!!」」」
ネギ達はハンマーを手にし、朝倉のもとに向かおうとするタマモを必死で止めた。
「だいたいフルコースってなによー! それも3%で記憶を失うって!」
「100%で耐えれる横島さんってなんなんですかー!」
「『記憶抹殺82%』って残りの18%はいったい何ー!」
アスナ達は魂を込めた叫び声を発しながらタマモを引き止める。
それはもう必死だ、なぜなら今まさに朝倉の命がシャレにならない状況なのだから。
だが、そんな騒動を繰り広げるアスナたちの前に、当の本人が近づいてきた。
「やっほーアスナ、なにやってんの?」
彼女は自分が今どういう立場にあるのか理解していないのだろう。
そのため、自ら死地にむかって歩を進めていく。
「あ、朝倉いいところに。ちょっとアナタに用があったのよ」
ネギは後に語った。
この時のタマモの笑みは、それこそ獲物を前にした肉食獣のようだったと……
「朝倉、逃げてー!!!」
「朝倉さん、
ネギ先生を餌にして私とアスナさんで時間を稼ぎます、だから今の内に逃げてください! 出来るならどこか遠くに! 私としては日本から離れる事をお勧めします!」
「ちょ! 刹那さん僕を餌にってどうするつもりですかー!」
アスナと刹那は、タマモを必死に抑えながら朝倉に向かって叫ぶ。
しかし、当の朝倉はこれほど切羽詰っていても尚状況がわかっていないのか、のほほんとした表情で懐からなにか写真のようなものを取り出した。
「あ、ネギ先生。私ネギ先生に協力する事にしたわ。返すね、魔法の証拠写真」
「兄貴ー!!なんとか朝倉の姉さんを説得しましたぜ」
「「へ……」」
どうやらカモが朝倉を説得し、ネギの味方に引き込んだようだ。
そしてそれはカモが朝倉の命を救った瞬間でもあった。
「あ、危なかった、もう少しで……」
「朝倉さん、今後もう少し行動を自重してください、さっき本気で命の危機でしたよ!」
「やったー、これで問題が一つ片付きましたー」
上からアスナ、刹那、ネギの発言である。
「いったい、どういうこと? タマちゃん」
「タマちゃんって……何でも無いわよ、ただ誰かさんが記憶を失わずにすんだってってだけよ」
朝倉が不思議そうにタマモを見ると、当のタマモはハンマーを肩に担ぎ、呆れたように朝倉に返すのだった。
ちなみにその二人の背後では、まるで力尽きたかのように床に蹲る少年少女たちがいた。
「記憶だけならこんなに必死にならないわよー!」
「なんか微妙に僕の命も危なかったような気もしますけど…・・・刹那さん、なんか最近タマモさんに染まってきてませんか? 仲もいいみたいだし」
「き、気のせいだと思いますよ……」
桜咲刹那、ある意味この世界で最も横島達と接触している彼女は、その思考からすでに取り込まれつつあるのかもしれない。
朝倉はそんな彼女たちを見渡し、しばらくの間首をかしげていたが、やがて気を取り直したようにタマモに話しかける。
「なんかよくわかんないけど、まあいいか。そういえばタマちゃんも魔法使いだったんだね。ということはお兄さんもなのかな?」
どうやら彼女の興味はタマモに移ったようだ。
「まあ、私もアイツも関係者なのは間違いないわよ。魔法使いというわけじゃないけどね」
「魔法使いじゃないのかー、ちょっと残念。あ、それとタマちゃんちょっといい?」
「何?」
朝倉はタマモがまだ持っているハンマーを見ると、何かを思いついたかのようにタマモに質問した。
「最近学園内でよく聞く都市伝説なんだけどね、遊星からの物体Yと共に現れるハンマーを手にした金色夜叉って……なにか知ってる?」
「ナ、ナンノコトカシラ」
朝倉のやたらピンポイントな質問に、タマモはそれに動揺して思わずカタコトで返す。
だが、そのタマモの態度で朝倉はタマモが関係していることを確信する。
普段の彼女ならここでさらに追撃の手を緩めず、更なる質問攻勢を浴びせるのだが、相手は転校して一ヶ月も立たないうちに麻帆良学園全土に『麻帆女の鬼姫』名を轟かせた傑物、悪戯に追い詰めるのは逆襲をくらいかねない。
故に彼女はここで取って置きのネタを持って彼女を懐柔することにした。
「まあ、そっちの金色夜叉についてはおいおいインタビューするとして……」
「お願い、出来れば忘れて」
「まあ、それは別にいいけど……で、最近こんな写真を手に入れたんだけど、タマちゃんいらない?」
朝倉はこれまた懐から二枚の写真を取り出し、それをタマモの目の前に突きつけた。
「こ、こここここれは!」
タマモはその写真を手に取り、顔を朱に染めながら食い入るように見つめる。
その写真の一枚目には、今まで自分でも見たことが無いような幸せそうな笑みを浮かべ、横島の耳掻きをしているタマモと、これまた至福の表情を浮かべた横島が写っていた。
ちなみにその写真のわずか3秒後に横島は地獄の拷問もかくやという感じで悶絶することになるのだが、この写真にはその気配は全く無い。
そして二枚目の写真は、自宅でパーティーをやった時に写したものであろうか、横島の膝ににもたれかかるように幸せそうに眠るタマモと、それを優しそうな瞳で見つめ、髪をなでる横島が写っていた。
「どう、いい写真でしょう。題して『恋人たちの時間』ってヤツかな?」
タマモはしばらくの間その写真を見入っていたが、朝倉に話しかけられてようやく顔を上げる。
そしてこの時朝倉を見るタマモの目は、まるで獲物を狙う猛禽類のような瞳をしていた。
「……朝倉」
「あれ、気に入らなかったかな?」
朝倉はタマモの眼光の鋭さに思わず後ずさる。
タマモは朝倉が下がった分だけ前に出、ロビーの片隅に追い詰めた彼女の手をゆっくりと掴んだ。
「携帯用、L、2L、6切り、4切り……とにかく全部もらうわ!」
「ぜ、全部?! まあいいけど、そのかわり…・…で……をやるから……」
「OK、ネギ先生相手ならどーんとやっちゃって」
朝倉はこの時密かにガッツポーズをし、計画上最も予測不可能な因子を味方につけたことを素直に喜ぶのであった。
そしてこの瞬間、朝倉とカモの野望を阻むものはいなくなった。
PM10:00
「唇争奪、ネギ先生とラブラブキッス大作戦ですってー!!!」
現在、朝倉は3−Aメンバーの前で修学旅行記念特別企画の説明を行っていた。
そしてそれは鬼の新田の正座という罰に真っ向から喧嘩を売るようなものであった。
「そ、ネギ先生にキスをした班が勝者、攻撃は枕のみ。死して屍拾うもの無し! どう、やる?」
「朝倉さん、あなたと言う人は……」
「おや、いいんちょ反対だった?」
「すばらしいですわ! これこそ修学旅行にふさわしいイベントです!!」
早くもあやかのテンションはMAX状態のようだ。
そして今、3−A全てを巻き込んだラブラブキッス大作戦と、その裏で朝倉とカモが画策する『仮契約カード大量GET作戦』が始まるのだった。
3班の部屋
「今回のイベントに私は必ず勝利しなくてはいけません……となると重要なのはパートナーとなるもうひとりの参加者」
あやかは今回のイベントに必勝を期すため、作戦を考えていた。
「参加者の中で脅威となるのは間違いなく、クーさんと長瀬さんのチームです。それに対抗できる相手といえば……」
あやかは班のメンバーである、那波、長谷川、村上、ザジを順に見渡していく。
那波ちづる
却下
あまりにもおっとりしすぎている。よしんばうまくいったとしても、ナチュラルに漁夫の利を持っていきかねない。
長谷川千雨
却下
本人にやる気無し。
村上夏美
却下
体力的に長瀬たちに敵しえない。さらにライバルに発展する可能性もある。
ザジ・レイニーデイ
却下
長谷川と同じくやる気無し。
結論、敗戦確定!
「ああ、私の班には長瀬さんたちを出し抜けるような人はいませんでしたわね……このままでは愛すべきネギ先生の唇が」
あやかは崩れ落ちるように床にへたり込むと、涙を流さんばかりに悲しみにくれる。
彼女の脳内では、今まさに長瀬とクーフェがネギにキスをしようと迫る映像が大画面で映し出されていた。
そんな中、見回りでもしていたのだろうか、留守にしていたタマモが帰ってきた。
「ふう、ただいまー」
あやかは即座に復活しタマモを凝視する。
横島タマモ
体力:OK
頭脳:謀略型。軍師として最適
属性:ブラコン(確定!)
結論:まさに約束された勝利!
「タマモさん……」
「ん、いいんちょうどうしたの? ってなによ、目が普通じゃないわよ」
あやかは即座にタマモに詰め寄り、タマモの説得を開始する。
そしてその迫力はタマモをして背筋を凍りつかせるものがあったという。
「ぜひネギ先生の唇を守るために私に協力してください!!」
「ネギ先生の唇って……ああ、朝倉が言ってたヤツね」
「そうです。そして私のパートナーはあなたしかいないのです。ネギ先生の唇を守るにはアナタの力が必要なんです! お望みならあなたの好きなもの何でも差し上げますから!」
「なんでもいいの?」
タマモはあやかの発言にピクリと反応した。
「もちろんです、シャネルだろうがエルメスだろうが手に入れて差し上げます!!」
「きつねうどん……」
「へ?」
「麻帆良に帰ったらきつねうどんといなり寿司おごってね。私帰ったら二週間禁止令喰らってるのよ……」
「……かまいませんけど。そんなのでいいんですか?」
「いいのよ、好物だし。それに家で食べられない以上、あとは学食しかないでしょ。まさに渡りに船ってヤツだわ!」
この瞬間、3−A雪広あやかと横島タマモの最強コンビが結成された。
PM11:00
「さあ、いよいよネギ先生唇争奪 ラブラブキッス大作戦スタートです!」
どういった仕掛けなのか、各部屋に備えたテレビの画面にはイベントの参加者の映像と、朝倉の実況が映し出されていた。
「それでは、まず選手の紹介を行います。1斑は鳴滝風香&史迦の双子です。双子ならではのコンビネーションに期待しましょう」
テレビに映る風香はやる気満々のようだが、史迦はバレた時の正座に脅えているのか、半べそをかいている。
早くもコンビネーションという物に疑問を感じる映像であった。
「2班は古菲選手と長瀬楓選手、ともにバカレンジャーの一角をなす体力バカ、その運動神経に物を言わせた動きに注目しましょう! ちなみに彼女たちは意外なことに2番人気です」
テレビには、やる気があるのかいまいちわからない長瀬と、照れてクネクネと体を動かしているクーが映し出されていた。
体力等を考えた場合、彼女たちが優勝候補筆頭なのだが、どういうわけか2番人気に甘んじているようだ。
「3班は雪広あやか、そして意外なことに横島タマモの両名です。自他共に認めるネギ先生への偏愛のいいんちょと、『麻帆女の鬼姫』が手を組んだ! そして現在ダントツの一番人気です」
テレビに映るあやかは、ネギへのキスシーンを思い浮かべているのか、目にハートマークを浮かべ、タマモは今回の成功報酬に早くも思いをはせている。
そして二人の鬼気迫る迫力は、モニター越しにでも感じるぐらいであった。
今、ここにネギへの愛に飢える鬼と、お揚げに飢える鬼の2鬼神が誕生したのである。
「4班は明石裕奈選手と佐々木まき絵選手、両名とも運動部のバランスのいいチームです」
まき絵はあやかにも負けない気迫で勝負に挑んでいるようだ。
裕奈はまき絵に比べたらすこしテンションは低いが、これは比べるほうが間違いだろう。
「そして最後の5班は綾瀬夕映選手と宮崎のどか選手です! 図書館組からの参戦ですが、はたして他の班についていけるのか!!」
のどかは脅えたように夕映についていっている、まるで雛鳥のようだ。
「あれ? なんだろう、この悪寒は」
皆がテレビ中継に釘付けになっているころ、ネギは自分の部屋で得体の知れない悪寒に襲われていた。
そしてその悪寒の先に感じるものは、春になって以来、タマモによって鍛えられた生存本能が警鐘を鳴らす程のものだった。
「なんか部屋にいたらいけないような気がする……場合によっては命にかかわるような感じも」
ネギはそういうと、懐から刹那にもらった身代わりの紙型を取り出し、自分の名前を書いていった。
失敗作が大量にあったが、それは気にしてはいけない。
「わーすごーい、陰陽術ってすごいなー」
ネギは目の前で自分そっくりの変わり身に驚嘆したが、すぐに気を取り直し、その人形にこの場で寝ているように指示すると、まれで逃げ出すように部屋を後にするのだった。
そしてネギが部屋を抜け出してより2分後、部屋には5人のネギが集結していた。
どうやらネギが放り出した失敗作の紙型もネギに変身したようである。
そしてこれが後に繰り広げられる混乱の最大要因であった。
ネギが命の危険を感じてホテルから逃げ出そうとしているころ、そのネギを狙う二人の金髪のハンターが枕を手にして廊下を歩いていた。
「いいんちょ、もっと姿勢を低く! それに足音を立てないで!」
「タマモさん……あなたはどこでそんな隠密行動を学んだのですか」
「乙女には秘密がいくつもあるものなのよ……ん、隠れて! まき絵たちよ!」
タマモの言葉に、某蛇の名を持つ男のようにダンボールに隠れるあやか、つづいてタマモも物陰に隠れる。
二人が身を隠して暫くすると、廊下の曲がり角からまき絵たちが姿を現し、やがて次の曲がり角を曲がっていく。
あやかはまき絵達をやり過ごしたのを確認すると、ゴソゴソとダンボール箱から這い出し、傍らに立つタマモに尊敬の眼差しを送る。
「すごい、よく分かりましたわね」
「得意なのよ、こういうの」
(ああ、ネギ先生。よくぞタマモさんと私を同じ班へ編成してくれました。これは私にこの勝負に勝てということなのですね、ならば私はネギ先生の期待に答えるためにも必ず勝ちます!)
あやかはこの時、タマモと同じ班ということに心の底からネギに感謝していた。
「みぎゃ!」
「ぶへ」
「いくアルよー!!!」
そのころ、曲がり角の向こうではクー&長瀬vsまき絵&明石の無制限一本勝負が始まっていた。
その戦い声をBGMに、二人はガッシリと握手し、目標へ向けて突き進む。
「さて、まき絵達が囮になっているうちに、ネギ先生の部屋に行くわよ」
「ハイ!!」
タマモと、あやか、このコンビはなにげに最強かもしれない。
タマモ達がその場を離れた後、新田の怒鳴り声と明石&佐々木の悲鳴が廊下にこだました。
「ついに犠牲者が出ました。なんと4班は全滅です!」
朝倉の実況に、4班の勝利に賭けていた面々は悔しげな声をもらす。
「さて、残るは1,2,3,5班、はたしてどの班が勝つでしょうか。現在ネギ先生の部屋に最も近づいている班はいいんちょ達の3班です! まるで先が見えるかのようにライバルや新田先生をかわしていっています」
「うふふふふ、ネギ先生。貴方の雪広あやかが今参ります」
朝倉の実況を他所にあやか達はついにネギの部屋の前まで来ていた。
だが、あやかがネギの部屋に突貫しようとする直前、タマモが何かに気付いたのか、眉間にしわを寄せて考えるしぐさをする。
「さてと、これで後は委員長にキスをさせれば……あれ?」
「どうなさいました?」
「……やられたわ、この部屋にはネギ先生はいない」
タマモはネギに出し抜かれたのがちょっと悔しいのか、顔をしかめて爪を噛む。
「それじゃあどこに」
「わからないわ、とにかく探すしかないわね(どういうこと、変な魔力がホテルをつつんで臭いをたどれない。近くに来れば判別できるけどそれ以上は無理ね、害意は無いみたいだけどなんなのかしら)」
どうやらタマモはカモから『仮契約カード大量GET作戦』について説明されていないのか、ホテルを包む妙な魔力に不穏なものを感じていた。
だが、タマモはすぐに己の思考をあやかに向け、彼女とネギをキスさせることに集中していく。
そして、それが揚げに包まれた薔薇色の食生活がかかっているとなれば、そんな魔力のことなど瑣末なことである。
タマモは再びあやかの手を取り、ネギの部屋から離れ、捜索を開始していくのだった。
そしてあやか達が抜け出してから数分後、ネギの部屋からのどかの悲鳴が部屋からこだましていた。
おそらく大量にいるネギの式神に驚いたのであろう。
「なんか変な気配がするわね……ロビーの方からかな」
「ロビーに何かあるんですの?」
「わからない、行ってみるしかないかもね」
「それでは行きましょう。ネギ先生まっていてくださいねー」
そのころ、ロビーでは4人のネギが集合し、1、2班の選手がネギを追い詰めようとしていた。
まず、クーと長瀬がネギの一人をその体術を生かして取り押さえ、ネギにキスをした。
すると、そのネギは突然爆発し、後には紙人形だけが残っていた。どうやらニセモノだったようだ。
「さー残りはあと3人、ニセモノにキスをすると爆発するよー!!」
朝倉の実況でいやがおうにも盛り上がる3−A、現在神秘の一角に触れているのに気付いてもいないのがなんともアレであるが、そこは突っ込んではいけない。
長瀬達に続いて鳴滝姉妹もキスをしたが、やはりこれもニセモノだった。
そして残りのネギはロビーから逃げ出していく。
残されたのは、ネギ(偽)の放ったシャイニングウィザードにより撃沈された新田のみである。
一方、ロビーの騒動がギリギリ聞こえる場所であやか達はついに念願のネギを見付け出していた。
「なんですの、この騒ぎは? あ、ネギ先生!」
「あ、それはニセモノよ!!!」
「ぐえ!」
あやかは、廊下の奥へ消えようとしているネギを捕まえようとするが、その寸前にタマモによって襟首を捕まえられ、一瞬息を詰まらせる。
タマモはあれが偽物だと瞬時に見抜き、手にしたハンマーを投げつけてそのネギを元の紙型に戻す。
「な、何をするんですか! 一瞬お花畑が見えましたよ!!」
「今のはニセモノよ……そしてコイツもね!!」
「チュー!!!」
タマモは背後の物陰から突如飛び掛ってしたネギを、いつの間にか再び手にしていたハンマーで吹き飛ばす。
その手加減と言う文字が一切感じられない攻撃により、ネギ(偽)は壁にたたきつけられ、そのまま爆発した。
もっともコレが本物であっても手加減というものは無いのかもしれないが、それを指摘する、いや、指摘できる人物はここにはいなかった。
「これでよしっと、本物のネギ先生は……こっちよ!」
「タマモさん、ありがとうございます! このお礼はきっと!」
「期待してるわよ、うふふふアタシのお揚げー!」
「ネギ先生、アナタの唇は絶対にこの私がお守りいたします!」
愛とお揚げに魅入られた二人の鬼は目標を完全に捕捉し、いまその思いを遂げんために廊下を爆走していくのだった。
そのころ、ロビーでは本物のネギが帰ってきており、ホテル全体がなにやら騒がしいことに気付く。
そしてちょうど同じころ、脱落したと思われたのどかと夕映が騒乱の隙をついてロビーにたどり着き、ネギと接触するのに成功していた。
「あれ? なにかあったのかな……」
「ね、ネギ先生!」
何が起こっているのか把握していないネギにのどかが話しかける。
のどかの後ろには綾瀬夕映がそんなのどかとネギを見守っていた。
「のどかさん……あの、昼間のことですけど」
「い、いえ、あのことはいいんです、聞いてもらえただけでもー」
のどかはあまりの緊張にパニックに近い状態なのか、両手をバタバタさせてネギに答える。
だが、ネギはそんなのどかにおかまいなく話を続けた。
「すいません、宮崎さん。僕、まだ誰かを好きになるとか・・・そういった事がよく分からないんです」
ネギは申し訳なさそうに話し続ける。
10歳の少年が顔を赤く染め、うつむき加減でテレながらしゃべる光景は、その筋の人にとってはたまらない光景であったろう。
「あれは……ネギ先生とのどかさん!」
そしてこの場にその筋の方が到着してしまった。そう、ネギへの愛に飢える鬼こと雪広あやかである。
「何をしていらっしゃるのでしょうか?」
「なんか告白の返事をやってる感じね、どうする? 今なら妨害できるわよ」
タマモはそういうと『いちとん』と書かれた小型のハンマーを取り出し、腕まくりをする。
あやかは一瞬タマモの誘惑に心惹かれたような表情を見せたが、すぐにネギの元に躍り出ようとするタマモを羽交い絞めにしてとりおさえた。
「ちょ、タマモさん今はダメです!」
「けど、このままだとのどかにネギ先生持ってかれちゃうわよ」
あやかは一瞬苦渋の表情を浮かべたが、すぐにタマモの瞳を見つめて答えた。
「……のどかさんが勇気を出して告白した、そしてネギ先生はそれに返事をしようとしています。これを妨害するなんて私には出来ませんわ」
「いいの? ネギ先生がのどかを選んじゃっても」
「ネギ先生がそう選んだのなら精一杯祝福してあげますわ。でも……まだ諦める訳じゃありません。最後にはきっと振り向かせて見せますわ!!」
あやかは自らの決意を示すように顔を天井に向け、ハッキリとタマモに宣言する。
「いいんちょ、いえアヤカ。あんた最高よ! がんばんなさい」
「ええ、私は負けませんよタマモさん」
ロビーの脇で二人の少女が友情を深めた瞬間だった。
一方、ネギ達はというと。
「あの、もちろん宮崎さんのことは好きです、でも僕……クラスの皆のこと好きだし。アスナさんやこのかさん、いいんちょさんやバカレンジャーの皆さん、そしてタマモさんも……ちょっとタマモさんは命の危険がもれなくついてきますけど。ともかく、そういう好きで……あ、でも先生と生徒だし」
彼が10歳でなければ、間違いなく女の敵として認定されそうなことをほざいていた。
「いえ、あの……そんな……ネギ先生」
「だから僕、宮崎さんにちゃんとしたお返事は出来ないんですけど。と、友達から……お友達から始めませんか?」
「はい」
のどかは嬉しそうにネギに返事をした。その表情はまさに喜色満面といった感じである。
「まあ、10歳ならこんなもんでしょうかね」
綾瀬はそうつぶやき、突然のどかの足を引っかけた。
「きゃあ!」
のどかは足をもつれさせ、そのままネギの方に倒れ掛かる。そしてネギはのどかを支えきれずにそのまま後ろに倒れてしまった。
それは、ちょうどのどかがネギを押し倒すような格好になった。
しばらくして、二人が気付くとなんと二人はキスをしていた。
「……えーっとアヤカさん……」
そのころ、物陰に隠れて事態の推移を見ていたタマモは、あいかわらず自分を羽交い絞めにしているあやかに恐る恐る話しかける。
何故タマモが脅えているのか、それは先ほどネギとのどかが事故でキスをしてすぐ、タマモの背後ですさまじいプレッシャーが発せられたからであった。
「なんでしょうかタマモさん」
そのプレッシャーの発生源であるあやかは、いつもと変わらぬ声でタマモに話しかける。
「あの……今のキスはあくまでも事故であって、決してネギ先生達の本意じゃ……ってアヤカ、締まってる。首絞まってるから!」
あやかはタマモの『キス』という言葉に反応したのか、そのプレッシャーを更に増大させ、いつの間にか羽交い絞めからスリーパーホールドに移行してタマモを締め上げる。
おそらく無意識での行動なのであろうが、タマモをして対処できない攻撃を仕掛けるとは侮れない人物である。
「キス……ええ、事故ですとも。今のは事故、今のは事故、今のは事故、今の事故……のどかさん、うらやましいですわあああー!」
「だから首が……しま……クキュ」
血涙を流して絶叫するあやかの足元に、タマモが崩れ落ちるように横たわる。
あらゆるカメラの死角で行われた愛の鬼とお揚げの鬼の戦いは、ここに一方的な展開で愛が勝利したのであった。
『麻帆良の鬼姫』横島タマモがこの麻帆良学園に来て初めて味わった敗北であった。
そしてタマモが崩れ落ちるのと同じ時刻、このイベントの主催者は『因果応報』と言う言葉をその身で知る事になっていった。
「そうか……貴様が主犯か、朝倉」
それは麻帆良学園広域指導教員の新田だった。
彼は奇跡的にネギ(偽)の放ったシャイニングウィザードから復活し、その長年の教員生活で培った勘と経験により、この騒ぎの元凶を正確に突き止めたのである。
「ぎえ、新田……先生」
「全員正座ー!!」
その後、ネギも含めて全員がロビーで正座させられていた。
「うえーん! なんで僕がー」
「ネギ先生の隣で一晩中正座。すばらしいですわー!!」
「アヤカ……私になにか言うことはないかしら?」
ネギの横で至福に浸っていたあやかの脇で、憮然とした表情のタマモがキロっとあやかを睨む。
「ああああああ、タマモさん申し訳ありませーん。あの時は興奮してしまってつい……」
タマモは深々と自分に向かって完璧な土下座を疲労するあやかに、何故か似ても似つかないはずの横島が重なって見え、クスリと笑う。
「もう気にしなくていいわよ。でも今度から気をつけてよね」
「はい!」
タマモはあやかを見つめながら、その裏表の無い人柄に好感を覚え、二人はこれをきっかけに友情を育むことになるのだった。
そして3−A全員の涙と絶叫と足の痺れを引き換えに、修学旅行二日目の夜はこうして平和に終了したのであった。
第13話 end
麻帆良学園
「ふう、やっぱ男は顔なんかー! けどいつか! 諦めなければきっと! 世界の人口の半分は女なんや、その中にきっといるはずだ! 俺のナンパに答えてくれる人が!」
横島は今日も日課であるナンパをしていたようだ、結果はについては横島の言葉にすべてがあらわされている。
「ふう、叫んでてもむなしいから帰ろう……タマモがいないと食生活がちとわびしいなー」
どうやらすっかり餌付けされている横島だった。
そんな横島の肩をポンポンとたたく存在がいた、そう、現在は彼の友となった死神である。
「ん、どうしたんだ?」
いぶかしげに死神に答える横島に、死神はさっきからメモしていた手帳を横島に見せた。
「ん、17.895? この数字がどうしたんだ?」
横島は手帳に書かれていた数字を読むが、その意味が分からず死神に聞き返す。
死神はその質問を受けて、一つ前のページを開いた。
「20、17、16、17、18、20……なんだこれ?」
そこには16〜30までの数字がずらりと書き込まれていた。
横島はそれに一通り目を通し、しばらく考えると、何かに気がついたかのように恐る恐る死神に聞いた。
「なあ、これってまさか今日俺がナンパした女の年齢か?」
死神は横島の質問に静かにうなずく。
「じゃ、じゃあ……最初の数字はまさか」
横島は自分の予測した答えに恐怖し、まるで否定してくれと祈るように死神を見る。
だが無常にも死神はいつの間にか手にしたプラカードにはっきりとした強調文字で書き加え、横島の前に突き出した。
『平均年齢』
横島はその字を読んで硬直する。そしてそれは横島にとって絶望を意味する文字だった。
「うそだぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!!!!!!!」
この日ついにナンパ対象平均年齢が18歳未満に突入した。
禁断の世界まであと2.895歳、横島ロリコンへの道までのこされた猶予はあとわずかだった。
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