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 月が中天に上がるころ、横島に修学旅行での出来事を話していたタマモは何か違和感のようなものを感じた。


「それでアヤカったらネギ先生にキスするために……何、この気配は」

「どうした、タマモ?」


 突然タマモが話を中断し、何かを探るように視線をあたりにめぐらせる。


「これは……大変よ、本山でなにか起こってる! 次々と人の気配が消えてるわ」

「なんだって! しまった油断した!!」

「急ぎましょう、木乃香達が危ない」

「ああ、ちくしょう間に合ってくれ!!」



 本山での異変を感じ取ったタマモと横島は木乃香達を救出するため、全速力で走り出した。

 そしてそれが二人の最も長い夜の始まりであった。


第16話 「The longest night Act2」





 横島たちが緊急状態を察知し、本山に到着して見たものは廊下でたたずむ詠春の石像であった。


「な、これは何?」

「石化……ビッグイーターでもでたのか、でもメドーサがいるはずないし」


 横島は石化している詠春を見てかつての強敵を思い出したが、即座にそれを打ち消す。

「考えるのは後よ、とにかくネギ先生と合流するわ」

「場所は分かるか?」

「こっちよ! 刹那も一緒ね」


 タマモはネギ達の魔力の残滓を嗅ぎ取り、横島と共にネギと合流すべく再び走り出すのだった。




「ここよ! アスナもいるみたい」


 タマモが誘導した場所は、先ほどまでいた風呂場であった。

 横島はすぐに扉を開け、中に突入する。
 そこで見たものは、白髪の少年がネギと刹那の背後に現れようとする瞬間だった。


「タマモ、アレを!」

「え、いいの?」


 横島はまだ背後の危機に気付いていない刹那達を助けるために、禁断の技を使うことを決意した。
 白髪の少年を倒すだけならサイキックソーサーを使うという手段もあるのだが、少年と刹那たちの距離があまりにも近すぎるため、爆発に巻き込んでしまう可能性が高すぎる。
 となれば残された手段は只一つ、己の肉体と、タマモの力を合わせた禁断の技の封印を解くしかなかった。
 

「いいからやれ! 他の手段じゃ間に合わん!」


 横島は悲壮な決意を顔に浮かべながらタマモを促すと、タマモは即座にハンマーを手にしてそれを野球のバッターのような構えを取る。


「本当にいいのね?」

「ああ、行くぞタマモ」


 横島は最後の確認をしてくるタマモに頷くと、タマモに向かって走り出し、そしてタマモの直前でおもむろに跳躍しドロップキックを放つ。
 そしてタマモは横島に向かってタイミングを合わせ、大リーグの4番バッターにも匹敵する鋭く、力強いスイングでハンマーを横島に叩き込む。


 そして横島は風になった。


 横島は今、弾丸すらはるかに凌駕するすさまじい速さで目標に向かっていく。
 その両腕に霊力を纏わせ、体は空気との摩擦が原因であろうか、炎が体全体を覆っている。

 それはかつて、雪之丞とピート、タイガーと共にとあるTVゲームを元に開発しようとした新技だった。
 雪之丞は霊力を手のひらに集中し、それを一気に放出する技を思いつき、ピートは滝を相手に修行した結果、敵の懐に潜り込み強烈無比の打撃を顎に叩き込む技を完成させた。
 そして横島は今放つこの技を物にしようとしたが、初動の出力不足から目標のスピードを得ることが出来ず断念していた、しかし、ここにタマモという協力者を得ることによってついに念願の技を完成させていた。
 ちなみにタイガーは某アメリカ空軍の少佐の対空技を会得しようとしたが、全員一致で却下された結果、泣く泣く相撲の練習に励んだと言う。

 横島は視界に写る目標、白髪の少年を見据えながら過去を思い出し、そして万感の思いを込めてその技の名前を叫ぶのだった。 





「サイコクラッシャーアターック!」







 少年は刹那に向かって背後から一撃を叩き込もうとした瞬間、突如響き渡った声にその手を止める。
 そしてその声の方を見ると、全身に炎を纏った男が今まさに自分に踊りかからんとするところだった。



「な!」


 少年は驚愕の表情を浮かべ、常時展開している魔力障壁を強化する。
 そしてその瞬間、横島と少年は接触した。


 ガリガリと障壁が削れる音が響く。
 横島の放つ霊力と少年の魔力がせめぎあい、火花を散らしている。

 そしてその一瞬の後、何かが壊れるような音と共に少年の障壁が消滅したが、横島の力ではそれが精一杯であったのか、その突進力は失われ、少年のすぐそばに着地する。
 だが、横島の攻撃はまだ終わらない。

 横島は少年のそばに着地すると、ガード後で硬直している少年の襟首を引っつかみ、そのまま壁に向かって投げ飛ばした。
 その威力はすさまじく、少年は壁にぶち当たっても止まることなく壁を貫通していく。


「見たか、これこそ禁断のハメ技『サイコ投げ』だー!」


 横島は己の目論見が完璧に成功したことに気を良くしたのか、天に拳を突き上げながら叫ぶのだった。 

 一方、ネギと刹那、そして素っ裸のまま蹲るアスナは目の前で起こった突然の事態に呆然としている。
 だが、この中でいち早く復活した刹那が恐る恐る横島に話しかけた。


「よ、横島さん?」

「刹那ちゃん達は無事だったか、いったい何があったんだ?」


 横島は刹那に状況を確認しようと近づこうとしたが、それに気付いた刹那達はビクッと体を震わせ、少しずつ後ずさりする。
 ちなみに横島の視界に写らぬ箇所では、タマモがアスナに着替えを渡していた。


「あ、あの……横島さんは大丈夫なんですか?」

「大丈夫だけど、なんで?」


 横島は自分を脅えたような瞳で見つめる二人に首をかしげる。そんな横島に答えを示したのは、アスナに着替えを渡し終えたタマモだった。


「横島……あんたまだ燃えてるわよ」

「へ?」



 ここで横島の放った技についてもう一度説明しよう。
 その技名は『サイコクラッシャーアタック』それはタマモのハンマーによる打撃をカタパルトに、横島の霊力を両腕に纏わせて低空を飛行して目標を粉砕する技だ。
 そしてその飛行スピードすさまじく、ともすれば空気との摩擦で炎が生じるほどである。

 では、先ほどの横島はどういう状態だったのだろうか。
 そう、炎を纏って飛行していた。その結果、横島の現在の状態はというと……





 火達磨であった。


「うわちゃああー!」

 

 まさに燃える男、横島忠夫が誕生した瞬間であったが、当の横島は悲鳴を上げると湯船に向かってダイブするのだった。


「まったく……で、何があったの?」


 タマモは湯船の中に沈んでる横島にため息をつくと、改めて刹那に事態の説明を求めた。


「あ、はい。アスナさんの話ですとお嬢様があの少年にさらわれたそうです」

「長を石化させたのも?」

「はい……」


 タマモはそれを聞くと顔をしかめて少年があけた壁の穴のほうを向いて魔力の残滓を嗅ぎ取る。するとその魔力は途中で途切れていた。
 どうやら少年はその後のドタバタに乗じ、すでにこの場を逃げ出しているようだ。
 

「どうやら手がかりになるアイツも逃げたみたいだし、この後どうする? 明日には増援が来るって長が言ってたけど」


 タマモが全員を見渡すと、まず刹那が一歩前に出て夕凪を手にしてタマモを見据える。


「もちろんすぐに後を追います! お嬢様をさらわれた以上、指をくわえて見ているわけにはいきません!」


 そして刹那の次に前に出たのはネギだった。


「木乃香さんは僕の大切な生徒で、そして大切な友達です。一刻も早く助けないと!」


 最後に残ったアスナは、少しの間本当の戦いの予感に躊躇していたが、やがて何かを決意したのか皆と同じように一歩前に出た。


「わ、私も行く! 木乃香の危機に黙っていられないわ」


 タマモはみなの決意が揺るがないことを確信すると嬉しそうに頷き、そして湯船に浮かんでいる横島を抱き起こすと嬉しそうに宣言した。


「よし、じゃあこれから反撃の時間よ! みんないいわね?」


「「「はい!」」」


 タマモは刹那達の力強い返事を受けると、横島を引きずったまま少年があけた壁の穴から外へ出るのだった。
 そしてその見据える先は少年が逃げた場所、川原のほとりである。
 タマモは妖狐としての能力を生かし、早くも少年の居場所を補足していたのだった。












「まてー!!」

「そこまでだ!!お嬢様を返せ!!!」


 横島たちは本山から離れた渓流でついに敵を捕捉した。
 そこには、木乃香をさらった白髪の少年と千草が、あまりに速い追っ手に驚愕の表情を浮かべていた。


「またあんたらか、ほんまにしつこいどすなー」

「私にさんざん脅えてたクセに、このかを手に入れたら急に強気になったわね。ちょうどいいわ、なんならここで川の向こうへ送ったげる。渡し賃は私のおごりよ!!」

「ふ、ふん、このかお嬢様が手に入った以上、切り札はこっちにあるんや。せやな、ついでにあんたらにお嬢様の力の一端を見せたるわ」


 千草はそう言うと木乃香に札を貼り付け、密教の真言のようなものを唱えだす。
 すると、千草の周囲に凡字が浮かび上がり、その中から数多の魔力が噴出してきた。


「げ、これは……」


 横島のつぶやきと共に周囲には無数の鬼達が姿を現していた。その数は優に100を超えている。


「やろー、このか姉さんの魔力で手当たり次第に鬼を召還しやがったな」

「あんたらにはその鬼どもと遊んでてもらおうか、特にそこの金髪の小娘は念入りにな。遠慮せんでええで、渡し賃は私のおごりや」


 そういうと千草は少年と共に森の奥へと離脱していった。
 周囲に残されたのは無数の鬼に包囲されたネギたちだけであった。


「刹那さん、こ、こんなのさすがに私……」


 アスナは絶望的な戦力差に恐怖したのか、体を震わせている。


「兄貴、時間が欲しい、障壁を」


 ネギはカモの言葉に従い、呪文を唱えだした。


「逆巻け春の嵐、我等に風の加護を 『風花旋風風障壁』」


 ネギの魔法が完成すると同時に、ネギ達を巨大な竜巻が包み込み、鬼達から姿を隠す。


「こ、これって?」

「風の障壁です!ただし2、3分しか持ちません!!」

「よし、手短に作戦を立てようぜ、どうする? こいつはかなりまずい状況だ」


 カモはこの絶望的な状況を打開するために何とか作戦を考えようとするが、どうにもいい案が出てこない。
 そんな中、やがて刹那が自分の考えた作戦を話し始めた。


「二手に分かれるしかありません、私がここに残ります、皆さんは木乃香お嬢様を」

「そんなムチャな!」


 刹那の示した作戦にアスナが抗議する。だが、刹那はそんなアスナに心配するなと言わんばかりに笑顔で答えた。


「任せてください、ああいったバケモノを退治するのが元々の私の仕事ですから」

「でも、そんな……それなら私も残るわ!」

「俺とタマモだって元々バケモノ退治やってたからな。俺たちも残ったがいいだろう」


 一人この場に残ると言った刹那に、アスナ、横島、タマモが自分達も残ると言い出した。

 その結果、空を飛べるネギが木乃香を奪還して本山へ逃げるという作戦に落ち着いていく。


「ネギ先生、一人だけど大丈夫?」

「まかせてくださいタマモさん! それに僕なら空を飛んでいけます」

「あ、兄貴。作戦も決まったことだしアレもやっとこうぜ!」

「アレって?」

「キッスだよキス、仮契約!!」

「「えええええ!」」


 カモはどうやら手札を増やすためにこの場で刹那とネギの仮契約を行うつもりらしい。
 当然ネギ達は顔を真っ赤にして驚くのだが、手札を増やすという大義名分のために強くいえないでいた。

 一方、横島はカモの言ってる意味が分からず、タマモに質問していた。


「なあ、タマモ……仮契約とかキスとかってなんだ?」

「魔法使いの従者との契約らしいわよ、キスをすることで契約が成立するみたいね」

「するってーと、ネギが刹那ちゃんとキスをするってことか?」

「そういうこと、今の所ネギの従者はアスナとのどかだけどね。あ、そういえば以前カモが私をネギの従者にしようと暗躍してたっけ」

「なんだとー!!!」


 横島は突如怒りを爆発させ、ネギを睨みつける。
 タマモはそれを見て、自分のことで嫉妬してくれていると感じ、頬を赤く染めていた。


「まあ、結局私はなんともなかったしそこまで怒らなくてもいいじゃない、キッチリお仕置きはしておいたし……」

「いいや許せん! ネギの野郎、仮契約とかいってキスのし放題じゃねーか! しかも公認で! うらやましいぞそのシステムー!」

「怒ってたのはそっちかー!」


 タマモはなんともアレなことを叫ぶ横島に、フルパワーでハンマーを叩き込む。
 それは嫉妬とかそういったものではない、ただ純粋に乙女のプライドに根ざした怒りだった。


「ノォォォォォォ!!」

「キャア!!」


 チュッ


 横島の悲鳴と刹那の悲鳴が結界の中に響き渡り、そして横島は己の唇になにかとても柔らかく暖かい感触を感じた。
 それは例えるなら、時空消滅内服薬入りのショートケーキについていた生クリームのような感触であった。


 そして沈黙があたりを支配する。

 タマモが横島に叩き込んだ攻撃は、横島を奇しくも今まさにキスをしようとするネギと刹那を弾き飛ばす結果となった。

 そして今、横島は刹那に覆いかぶさるように地面に倒れている。
 そしてその二人の顔は、まるでキスをしているかのように接触していた。いや、実際にキスをしていたのである。



「こ、これは……カモ君どうなったの?」

「あー兄貴。どーも横島の兄さんと刹那の姉さんが仮契約しちまったみたいだぜ、ほら仮契約カードが出来てるし……」

「ちょっと、どうすんのよ二人とも! 刹那ちゃんたち固まってるじゃないの! しかもタマモちゃんからなんか変なオーラが……」

「ヨ〜コ〜シ〜マ〜!!」


 横島は状況を理解すると即座に刹那から体を離した。


「まて、タマモ! いまのは完全に不可抗力だ! つーかむしろお前に責任が……」

「ぐ……」


 タマモは横島と刹那のキスの原因は、明らかに自分にあるので何も言えなかった。しかし、乙女としての感情がどうしても収まらなかった。


「カモ!」


 タマモは神速の速さでカモを捕まえ、顔の前に持って来る。その表情はまさに魔性の女である。


「へい! なんでこざいましょう姐さん! ていうか力緩めてください……しまる……」

「ことが全部終わったら私と横島の仮契約をしなさい」

「で、ですが姉さん……ぐええええギブギブ!!」


 タマモは何かを言おうとするカモを雑巾を絞るように捻った。
 それと同時にカモがナマモノがひき潰されるような声を上げる。


「返事ははいかイエスで答えなさい、それ以外は認めないわよ」

「イ、イエスですマム」

「結構、約束をやぶったら分かっているわね?」

「も、もちろんでさあ。必ず約束を守りますです、はい」


 カモは恐怖で顔をゆがめながら高速で何度も頷くのだった。



 一方、横島と刹那はというと。


「ごめんなさい! ほんとーにごめんなさい!」

「いえ、あの……その……そんなに気にしなくてもいいですよ。私は気にしてませんし」


 横島は刹那に対して、これ以上ないというくらいの完璧な土下座をして謝り、刹那はそんな横島の行動にと惑っていた。


「それじゃあ俺の気が、それに仮契約でパワーアップするはずだったんだろ。けど俺じゃあ魔法使えないし」

「いや本当に気にしなくても……」

「あ、そうだ刹那ちゃん。お詫びというわけじゃないけど、これなら仮契約の強化の代わりになるかな」


 横島はそう言うと刹那の手にビー玉のようなものを渡した。


「これは?」

「これは文珠といってね、中の漢字をキーワードにして発動するんだ。これには”護”の文字が入れてあるから、いざとなったらこれが刹那ちゃんを助けるはずだ。」

「いいんですか? なんか貴重そうですけど」

「ああ、大丈夫。これ自分で作れるから。あ、そうだネギ達にも渡しとくな」


 今度はネギとアスナにも”護”の文珠を渡していく。


「わー綺麗ですねー」

「ねえ、横島……」

「ほれ、タマモお前にもな。お前なら慣れてるから無地でいいか?」


 横島はそういうとタマモには何も文字を込めてない文珠を渡した。


「あ、ありがとう」


 タマモは横島から受け取った文珠を大事そうに両手に包み、ポケットにしまいこんだ。
 

「あ、風が止む!」

「来るわよ! 横島さんたちも早く準備して!!」


 障壁の中の騒動を尻目に、障壁はしだいに力を失っていきつつあった。
 やがて、ネギとアスナは障壁の状態に気付き、横島たちに警告を与える。

 そして次第に障壁がなくなり、周囲に自分達を取り囲む鬼達の姿が見えるようになると、ネギはあらかじめ唱えていた魔法を解き放つ。
 その魔法「雷の暴風」は周囲にいた鬼達を大量に巻き込み、ネギはその混乱に乗じて木乃香の救出へと向かっていくのだった。


「さーていくとしますか、タマモ。背中は任したぞ」

「任されました。安心して前に進んでいいわよ」

「改めて見るとすごい数ね……」


 アスナは戦いの素人である自分がどれほど役に立つか不安そうであった。
 だが、そんなアスナを刹那が元気付けようと話しかける。


「大丈夫ですアスナさん、せいぜい街でチンピラ100人に囲まれた程度だと考えてください」

「そうだぞ、アスナちゃん。もっとも俺が実際に街でチンピラ100人に囲まれたら迷わず逃げるけどな!」

「逃げるな! ていうか、そんなことで威張るなー!」


 アスナは横島とタマモのやりとりに思わず笑みを浮かべ、そしていつの間にか自分の心を捕らえていた恐怖から解放されているのに気付く。 


「……横島さん、ありがとう。それじゃあ気を取り直して、鬼退治といきましょうかー!」

「かかってこいやー!」


 アスナの掛け声とともに、横島たちは一斉に鬼へむかって駆け出していくのだった。






「このお!!」


 アスナは掛け声と共に振るったハリセンを鬼の一体に叩き込んだ。すると鬼は見る見るうちに消滅していく。ハリセンの能力により元の世界に送り返されたのだ。

 これで10体目の鬼を送り返したアスナだが、すでに息が切れている状態であったが、それでもアスナは動きを止めることなく戦い続ける。
 だが、そのアスナの一瞬の隙をついて鬼の一体が攻撃をしかけてきた。


「神鳴流奥義 百烈桜花斬!!」


 刹那がすばやくアスナをフォローし、周囲の鬼をまとめて切り伏せていった。


「ありがとう刹那さん、これならいけそうだよ!!」

「ええ、アスナさんは右をお願いします!」


 二人は再び戦闘に突入していった。




 一方横島たちはというと……


「くらえディグダグの術! そしてドンキーコングアターック! トドメに平安京エイリアンの術ー!!」


 横島は戦場を縦横無尽に走り回っていた。横島は渓谷という周囲の地形を生かし、ある時はがけを意図的に崩し鬼に直撃させ、またある時はがけの中腹で霊力を流し込んだ岩塊を投げつけていた。
 その戦い方はまさに往年のゲームを思い起こさせる戦いかたである。


「この野郎ふざけおってー! まともに戦いやがれー!!」

「やなこった! 誰がお前たちみたいなのにまともに戦うかよ! くやしかったらここまできやがれ」


 同時に舌戦も佳境のようである。


「横島、時間稼ぎありがとう。いい場所を見つけたわよ」


 そんな横島の背後にひょっこりとタマモが姿を現した。
 どうやら横島に敵を集中させ、何かをやっていたようだ。


「よっしゃ、それじゃあ本気で逃げるぞ!!」

「待ちやがれー!」


 80体以上の鬼を引きつれて横島達は目的の場所へむかって走り出した。その逃走術はまさに熟練の極みであり、追いすがる鬼達をけっして突き放すこと無く、また追いつかれることも無い絶妙の間合いで逃げ出していくのだった。





「横島さんたちは……大丈夫そうですね」


 横島が鬼を引き連れて戦場から離れていくのを見ながら刹那はアスナに言った。


「なんかエヴァちゃんの時といい、今回といい緊張感がそがれるわねー」

「なんというか、まともに戦ってるのがバカらしくなってきますね」

「まったくよ……ってそういえば横島さんって強いのかしら? あんなに追いかけられて大丈夫なの?」

「そういえばまともに戦った所は見たことありませんね……」


 アスナと刹那はまだ横島が戦っている場面を見たことが無いため、その実力を測りかねているのか、森の奥へ消えていった横島達を心配そうに見つめる。


「まあ、タマモちゃんもいるし大丈夫か」


 アスナはしばし横島の事を心配していたが、横島のすぐ後ろにいたタマモのことを思い出し、とりあえずは大丈夫だと判断する。
 それに何より自分達も横島の事を心配する余裕などありはしない。


「そうですね、タマモさんなら大丈夫でしょう。それに横島さんたちが半分近くひきつけたおかげで楽になりました」

「そういえばそうね、さて今のうちに私達も頑張るわよ!!」

「はい!!」


 二人は再び戦闘を再開する。目の前にいる鬼はすでに当初の半分以下となっていた。





 横島とタマモは永遠とも思える逃走の果てに、崖を背にした袋小路に追い込まれていた。
 横島の背後はきリたった崖であり、落ちたらまず助からないであろう。
 

「ようやく追い詰めたで、さて、さんざんコケにしてくれたお返しをせなな」


 鬼は口に笑みを浮かべながら横島たちににじりよる。
 本来ならまさに絶対絶命の状況なのだが、横島もタマモもその表情には余裕があり、少しも追い詰められたようには見えない。


「はん、俺一人にいいようにあしらわれてたヤツが何を言ってんだか」

「このガキャー!!!」


 鬼達はさんざん走り回らされ、ただでさえでもイライラしていたところにこの挑発で怒り心頭に来たのか、いっせいに横島たちに踊りかかった。


「はい、ごくろうさん」


 しかし、横島はあわてずそう言うとパシッ! と両手を打ち鳴らした。
 すると、鬼達の足元から地面が消えていく。


「な!」


 横島とタマモが立つ場所は大きな滝から張り出した岩であった、そのため横島に飛びかかろうとした鬼達は自らの足で川岸のがけから滝へ向かって落ちていくことになった。
 残ったのは後方にいたほんの3、4体の鬼だけである。


「どうだったかしら、私の幻術は」

「うむ、いい仕事だったぞ」


 横島は自分を褒めてと言わんばかりに見上げるタマモの頭に手をやると、その頭をクシャクシャと撫で、気持ち良さそうにしているタマモに目じりを下げていたが、すぐに残党がいる事に気付き、その表情を厳しくする。


「さて、残るはこれだけね……ちゃっちゃと片付けるわよ」

「だな、はやいとこ刹那ちゃんたちと合流せんとな、というわけで……殲滅じゃー!」


 横島とタマモ、その獅子奮迅の活躍により、残りの鬼が全滅するまで一分とかからなかったという。

 ちなみにそのころ、鬼達が落下した滝の下では、ねじり鉢巻を頭に装備した死神が大漁旗を掲げながら投網を投げていた。
 どうやら鬼達の魂が入れ食い状態らしい。





「でやあああ!!」

「奥義雷鳴剣!!」


 アスナと刹那は徐々に体力を奪われるていく中、善戦していた。だが、二人とも疲労が激しく、すでに当初の勢いは無くなっていた。


「大丈夫ですかアスナさん!」

「ま、まだいけるわ。ネギが木乃香を取り返して戻ってくるまでがんばんなきゃ」


 アスナは苦しそうにしながらも、ハリセンを振り上げて刹那に答えた。だが、それをあざ笑うように一体の烏族がアスナに切りかかった。
 その攻撃は鋭く、今までの鬼達とは別格の強さである。
 アスナはやがてその攻撃を裁ききれなくなり、まともに攻撃を喰らい、ふきとばされてしまった。


「アスナさん!!」

「大丈夫、かすり傷よ。ネギの魔法が守ってくれるから」


 ふらつきながらも立ち上がろうとするアスナだが、目の前に立ちはだかる相手はあまりにも強大であった。

「アスナさん今行きます、そいつの相手は私が!」


 刹那はアスナではあの烏族の相手は無理と判断し、救援に向かおうとしたが、その刹那に巨大な鬼が踊りかかった。
 とっさに夕凪で受け流し、その攻撃をしのいだが、その強力な攻撃により腕は痺れてしまった。


「神鳴流のお嬢ちゃんの相手はワシらや」


 鬼はそういうと再び苛烈な攻撃を叩き込んでいった。


 刹那は数度にわたり鬼の攻撃を防いでいた。彼女は疲労を押し隠し、攻撃の機会を慎重にうかがっている。
 だが、その時森の奥から巨大な光の柱が目に入った。それは千草の儀式が始まりつつあるという証拠であった。


「どうやら千草はんの計画が上手くいってるみたいですなー、あのかわいい魔法使い君は間に合わへんかったんやろか」

「月詠!!」


 動揺する刹那に、どこから現れたのか月詠が言葉をかける。
 同時にアスナは烏族に両腕をつかまれ、攻撃手段をなくしている。状況はまさに最悪であった。


 その時、一発の銃声があたりに響いた。
 それはアスナを取り押さえる烏族の頭部を突き破り、烏族を消滅させていく。


「ぬ! これは術を施した弾丸……何奴!!」


 解放されたアスナと刹那が弾丸の発射方向を見ると、そこには龍宮真名とクーフェイがいた。
 どうやら龍宮の放った弾丸がアスナを解放したらしい。

 だが、それは刹那にとって致命的な隙だった。刹那を取り囲んでいた鬼達は、龍宮の姿に意識をとらわれた一瞬の隙を突き、刹那に踊りかかる。
 それに気付いた時、すでに回避も防御も不可能なタイミングであった。
 刹那は自らに迫る刃を、まるでスローモーションのように感じていた。


「え……」


 だが、いつまで待っても刃は自分に届くことはなかった。
 突如自分の前にいた2体の鬼の胸から光る剣のようなものが生え、鬼は動きを止めたからである。

 光の剣に貫かれた鬼達は声もなく消滅し、その向こうには光の剣を両手に具現化させた横島がたたずんでいた。


「横島さん?」

「悪りい、ちょっと手こずって遅れちまった」

「あ、ありがとうございました。それで横島さんたちのほうの鬼達はどうしたんですか?」

「全部片付けたよ」

「な! あの数をですか!?」

「まーね。さて、なんか状況が変わったみたいだし、どうするかな……」


 横島は森の向こうから天に向かって伸びる光の柱を見上げる。
 その横島の顔に浮かぶ表情には普段のおちゃらけたものなど無く、あの魔界正規軍大尉が認めた戦士の顔であった。

 この時、刹那は普段と全く違う横島に思わず見とれていたが、すぐに気を取り直して周囲を見渡す。
 すると、そこにアスナを引き連れたタマモがやってきた。


「どうする? あの光の柱のこともあるし、ひょっとしたらネギ先生失敗したかも」

「状況がわからんがあの場所に行くしかないな、となると……おーい確か龍宮さんとクーフェイちゃんとか言ったよな、こいつらの足止め頼めるか?」


 横島は今現在刹那たちに変わって鬼や月詠と交戦中の龍宮たちに声をかけた。
 どうやら彼女達に足止めをしてもらうようである。


「それはかまわんが、依頼料をはずんでもらうぞ」

「強いヤツと戦えるなら大歓迎アルよー」

「ほんじゃ後は頼んだ、ほどほどにな……さて、ネギのところへ行くとするか!」



 横島はそういうとタマモを引き連れて光の柱へ向かって走り出した。刹那とアスナは戸惑いつつも横島に着いていくべく走り出す。


「あ、これ置き土産な」


 横島はそう言うと鬼達が群がる中に文珠を放り投げた。その文珠には”爆”の文字が込められている。



 ZDOOOM!


 すさまじい爆発音を背に横島達は森を駆け抜けていく。


「横島さん、いまの爆発はいったい? それにさっきの光の剣みたいなものはなんだったんです?」

「さっきのは文珠の能力の一つだよ、それ以外の説明は後でな」

「ちょと横島、アレは!!!」


 その時、タマモが何かに気付いたのか空を指差した。
 そこには山のように巨大な二面四手の巨大な鬼神が現界するところであった。


「な、なによアレ……」

「馬鹿な、スクナの封印が解けたと言うのか!!」

「まずいわ……あの鬼神の霊力はシャレにならない巨大さよ」

「ネギのヤツ、やっぱり木乃香ちゃんの奪還に失敗したということか」


 鬼神の姿を見た横島たちの顔は絶望に染まる。だが、そんな横島たちに刹那が声をかける。


「まだです、アレはまだ完全に現界してません!! 今ならまだこのかお嬢様を取り戻せばなんとか出来ます」


 刹那はそういうと再び走り出した。鬼神召還の祭壇はすでに彼女達の目の前である。


 横島たちの夜はまだ終わらない。




第16話 end







<解説>

「手のひらに集中し、それを一気に放出する技」

 格闘ゲームにおける礎を築いた金字塔、ストリートファイターシリーズにでてくる必殺技、その名も高き『波動拳』。
 その威力は地味ですが、その使い勝手のよさは主人公が使う技にふさわしいといえましょう。


「敵の懐に潜り込み強烈無比の打撃を顎に叩き込む技」

 これもある意味説明不要の大技、絶対無敵『昇竜拳』です。
 初期においては上昇中完全無敵などまさに最強の技でしたが、シリーズを重ねるにつれ弱体化およびバリエーションの追加など、その派生はさまざまなものになりました。
 この技単体でもかなり強力なのですが、後に小キックニ連→大パンチ→キャンセル昇竜拳など、そのコンボはまさしく凶悪でした。
 ちなみにGS本編でピートは前述のとおり滝を相手に『バンパイヤ昇竜拳』なるものを練習していたりします。



「某アメリカ空軍の少佐の対空技」

 同じくストリートファイターシリーズのガイル少佐の必殺技、サマーソルトキックです。
 その威力は強力な上、コマンドも簡単であり、なおかつ画面の端でコマンド入力状態で待機されると正直何も出来なくなります。
 そのあまりのキャラの強さ、理不尽とも言える戦法に対して『待ちガイル』という言葉も生まれたものです。



「泣く泣く相撲の練習に励んだと言う」

 同じくストリートファイターシリーズより、E.ホンダのことですね。
 タイガーはホンダにするべきか、それともブランカにするべきか悩みましたが、結局ホンダにしました。


「サイコクラッシャーアターック」

 ストリートファイターUシリーズにおけるボス、ベガの必殺技。
 これもある意味強力無比な技でしたねー。


「サイコ投げ」

 ベガの使うハメ技です、これはサイコクラッシャーアタックをガードすると、ベガはそのキャラのすぐそばに着地するため、その後すぐに投げコマンドを入れると面白いように投げが決まります。
 かつて私は弟にこの技で散々勝利し、本気で泣かせた記憶があります。


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